10 2025

ゆっくり走るって 気持ちがいい!

|スロージョギングのすすめ|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

瀬古利彦さんの「ランニング」GOOD LIFE
ゆっくり走るって 気持ちがいい!
|スロージョギングのすすめ|

posted by 日経REVIVE

2025年9月28日

スロージョギングで
毎日を楽しく走ろう!

市民ランナーからトップアスリートまで幅広く親しまれる「スロージョギング」。
無理なく続けられる健康法として注目を集めています。
マラソン界のレジェンド・瀬古利彦さんに、スロージョギングの魅力や実践のポイント、そして走ることで得られる喜びについて伺いました。

NAVIGATOR

瀬古利彦

せこ・としひこ1956年、三重県生まれのマラソン指導者・解説者。高校時代に本格的に陸上を始める。早稲田大学に進学し故・中村清監督の下、マラソンランナーとしての才能を開花させる。国内外のマラソン大会で戦績15戦10 勝という輝かしい実績を残す。現役引退後は指導者、解説者として日本マラソン界を牽引。現在はDe NA フェローとして活躍中。

撮影/七咲友梨 取材・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

いくつになっても
走れば走るほど強くなれる

小学生の頃から「走ることは自分のやるべきこと」という意識があり走っていたという瀬古さん。早稲田大学入学後にマラソンランナーとしての才能を開花させ、およそ15年もの間エリートランナーとして日本のみならず、世界中のランナーを凌駕(りょうが)してきました。
69歳を迎えた瀬古さんはどう走ることと向き合っているのでしょうか。

「ランスマ倶楽部というテレビ番組に呼んでいただいているのでコロナがはやる前までは走っていました。最初は5.6㎞でだんだん距離を伸ばしていって最終的には日に15㎞走っていました。そんなラン生活を3カ月ほど続けていましたね。
その後コロナがはやり自分も罹患(りかん)しまして。以降どうも体調が優れないので、今は以前のようには走れていません。
ただ、やっぱり私にとって走ることは人生の真ん中にあるものだからなのか、時折体が走りたいって語りかけてくることがあるんですよ。そういう体の声を聞いたときに走っています。だから今は月に一度くらいでしょうか」

近年、ちまたではゆっくりしたペースで走るスロージョギングが人気ですが、ランナーとしてどんな印象をお持ちですか?

「スロージョギング、めちゃめちゃいいと思いますよ。特に新シニア世代以降の方々は取り入れてほしいですね。というのも、私たち世代にありがちなのが、若い頃のイメージのままでいることなんです。これはとても危険。自分は昔のように走れると思っていても、時の流れには逆らえません。息が上がって苦しくなったりペースをつかめなかったり。また、そんな自分にショックを受けて走るのをやめてしまうという負のループに陥りやすい。だからスロージョギングなんです。なんなら最初はウオーキングから始めるくらいでいい。家の周りや公園などお散歩から始めて慣れてきたらゆっくりと走り始めましょう。たくさん走ろうと思わなくていいんです。息が上がらない程度のスピードでまずは公園1周ぐらいから。つらくない、嫌にならないペースと距離をご自身の体の声を聞きながら探っていってみてください。大切なのは続けることです」

走るって楽しいですよ!
毎日の暮らしにハリが出るんだよ

距離やスピードよりも
続けることに意識を向けることが大切


「ゆっくりでも距離が短くても続けることが大切だと思うので、今はもう絶対に無理はしないです。疲れ過ぎない、筋肉痛にならない程度の負荷で走るのが心身ともにいいと思っています」

  • 「けがをしたり、痛みが出たりすると走りたくなくなっちゃうでしょう?だから始める前にしっかりストレッチをすること。そして頑張り過ぎないこと!」と瀬古さん。

歩いて走ってまた走る
人生に輝きが加わるとき

来年70歳を迎える瀬古さん。以前のようにストイックには走っていないといいますが、体づくりや健康維持のためにしていることがあるといいます。

「ウオーキングをしています。音楽を聴きながら1時間ぐらい歩いているかな。距離にすると5㎞ぐらい。週に4日ほど歩いています。たまに走りたい!と思って走るときもいきなりペースは上げません。けがのリスクも高まりますからね。スロージョギングから始めていますよ。
公園の外周を走っていたりするとがんがん抜かれるんですね。それこそ前まではチクショーなんて思ったりもしたんですけど、もうね僕、競走はやりきったんでね。プレッシャーもたくさん背負って走ってきたので。今、走るときは純粋に自分の体の声に応え、満たしてあげる、そんなランニングを楽しんでいます。
ランニングって年齢を問わず、いくつから始めても成長を実感できるのがいいところだと思っていて。全く走れなかった人でもコツコツ続けていればあるとき息が上がらなくなったとか、走れる距離が伸びたとか、自分で自分の進化に気が付ける。これって最高に楽しいし豊かだと思いませんか?
走れるようになったら今度はレースに参加するなど目標を持つ人も。素晴らしいよね。
人生にハリが出るんですよ、走ることって」

ランナーとして、またマラソン普及者としてこれからどんなふうに人生を走っていきますか?

「1人でも多くマラソンファンやランナーを増やしていくのが今の私の使命だと思っています。だから私の経験を生かしてできることを精一杯やっていきます!」


現役時代の瀬古さん。「レース本番の方が楽なんですよ。それぐらい練習はきつかったな。平均して毎日30㎞走っていましたから」。師である中村監督との日々を振り返ります。

自分の成長を実感できるのが
走ることの魅力

What's GOOD LIFE for you?
脱・プレッシャー

  • 「現役、監督時代とずっとプレッシャーと生きてきました。今やっとそのプレッシャーから解き放たれて穏やかな気持ちです。そして純粋に”走ること”と向き合えている気がしてなんだかうれしいのです」

この記事は、2025年9月28日発行の日経REVIVE10月号に掲載された内容です。

取材裏話

10月号「ランニング」瀬古利彦さん

撮影は残暑厳しい9月初旬の夕方、明治公園にて行いました。REVIVE2ページ目の青空は9月初旬の都心の空なのです。瀬古さんが現役で活躍していた時代は、まだペースメーカー不在だったので、仮にその当時ペースメーカーがいれば大迫傑選手にも勝てる、と豪語していました。これも厳しい中村監督の練習に耐えた自信ある発言です。ただその当時ビールだけは飲んでOKとのことでケースの半分は1回で飲んでいたそうです。今はゴルフ中心、奥様の希望は何でも聞く瀬古さん、楽しいトークでした。