11 2025

東京の真ん中で 世界の名画と出合う

|芸術の秋を堪能しよう|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

花梨さんの「アート」GOOD LIFE
東京の真ん中で 世界の名画と出合う
|芸術の秋を堪能しよう|

posted by 日経REVIVE

2025年10月26日

時代も世代も超えて共感できる
クロード・モネの美しき世界

2026年2月に始まる美術展、モネ没後100年「クロード・モネ ─風景への問いかけ」。開催に先駆け、モネの世界観に触れるべく、アーティゾン美術館を訪れました。
作品を鑑賞しながら、モデル・アーティストの花梨さんが感じるモネの魅力、受けた影響などを伺いました。

NAVIGATOR

花梨

かりん1997年、東京生まれのモデル・コラージュアーティスト。2010年からモデル活動を始め、雑誌や広告、テレビCMなど幅広く活躍。多摩美術大学に在学中からコラージュアーティストとしても活動を始め、個展を開催するなど精力的に作品を発表している。現在はモデル、アーティストの二刀流で活躍中。

撮影/オノデラカズオ 取材・文/澤村 恵(編) アートディレクション/本多康規(Cumu)

写真内展示作品
《睡蓮の池》1907年、油彩・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館蔵

感情が揺さぶられ、
自分の知らない感覚に出合える

印象派の巨匠と呼ばれ、現代人にも多大なる影響を残した画家、クロード・モネ。その生涯と熱量に触れるべく訪れたのが、2026年2月にモネ展を開催するアーティゾン美術館です。

「都心に位置していてアクセスも抜群。コレクションを見に年に2回ほど伺う大好きな美術館の一つです。モネをはじめ、世界的に名画といわれる作品をたくさん見ることができていつも新しい発見があります。モネの絵にもたくさん学ばせてもらっています」

花梨さんとモネとの出合いは幼少期の頃だとか。

「祖父が印象派のファンで、モネの作品を最初に見せてくれたのは祖父でした。その後、美大を目指すようになり、高校生になると座学でも光の勉強のためにモネやルノワールについて学ぶようになりました。ヨーロッパの美術館へも家族と行く機会があって、モネと触れ合うタイミングもあり、感動したのを覚えています」

花梨さんがモネの作品に衝撃を受け、心を奪われたというのが、香川県の直島にある地中美術館での体験でした。

「睡蓮の絵に対峙した時、包み込まれるような感覚でものすごく感動したんです。睡蓮の絵と空間が一体化したようなとても不思議な感覚で。それと同時に、モネが見せたかった世界に行けたような気持ちにもなりました。気が付いたら2時間ぐらいその場にいてモネの世界に入り込んでいました。光の正しさっていうんですかね。それがやっぱりすごいなと。近くで見ると色と色の重なりなのですが、離れて見るとちゃんと絵になっていて。普段私たちが見ている世界をズームアップしていくと、ああいう色の重なりになると思うんですけど、モネの絵は、その全てが卓越していますよね。静かだけど強さも感じられて、鑑賞後はものすごく元気になりました」

花梨さんはコラージュアーティストでもありますが、モネから影響を受けたことはあるのでしょうか。

「近くで見た色と離れて見た色がモネは完全に違うんですけど、そこにこそロマンがあると私は思っていて。コラージュ作品を作る際もそこを一番大事にしているので、モネからは色の使い方や合わせ方、光の表現などたくさんの影響を受けています」


「モネの睡蓮と対峙した時に、圧倒的な光の表現力、色の使い方の違いに衝撃を受けました。見る者を一気に引き付ける美しさや強さは唯一無二だと思います」

モネの話題で盛り上がる花梨さんと学芸員の賀川さん。「新印象派の科学的なアプローチに対して、モネら印象派の面々は感覚的で直感的に色を使っていて、本当、“上手”なんですよね。モネは後世の画家たちにものすごく影響を与えています」と賀川さん。

  • 《睡蓮の池》 1907年、油彩・カンヴァス、石橋財団アーティゾン美術館蔵


「知らないことに出合い、自分の中で何かしらに気付いたときに私は感情が揺さぶられるのですが、アートを鑑賞することは私にとって気付きを得るスイッチの一つです」

世界中の様々な場所で
作品を作り続けたい

2026年2月から始まるモネ没後100年「クロード・モネ │風景への問いかけ」は初期の作品からモネ自身が影響を受けたモノやコトなどクロード・モネが出来上がっていく過程を総ざらいできる、いわばモネの人生の記録です。

「モネって日本の浮世絵にも影響を受けているんですよね。白の使い方や波の描き方などにそれらが見られますが、そういう画家としての変遷を一挙総覧できるのはとても興味深く楽しみです!
美術館に足を運び、アートを鑑賞するのにハードルを感じる方もいると思うんですが、モネの作品には共感できるモチーフが描かれているので親和性が高いと思うんです。自然を見て感動しない人ってあまりいないですよね。美しい光を見たら心が揺さぶられる。こんなふうに全人類に共通する美しいというテーマをモネは突き詰めているなって。だからきっと世代も時代も超えてすっとモネの世界を受け入れることができるんじゃないでしょうか」

現在28歳の花梨さん。これからの目標や理想の生き方を聞かせてください。

「モデルもアーティストも表現することをこれからも突き詰めていけたらと思っています。アーティストとしては、もっともっと作品を作って海外で展示したいというのが目下の目標です。
そしてゆくゆくは、モネのように旅をしてたくさんの刺激を受け、知らないことに出合いながら作品を作れたら最高ですね」

幅広い作品を展示。訪れるたびに新たな芸術体験を楽しめる。

アーティゾン美術館

住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
定休日:月曜(祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替え期間 モネ展の休館日はウェブサイトを参照
営業時間:10~18時(祝日を除く金曜 は10~20時)※日時指定予約制

What's GOOD LIFE for you?
知らないことに出合うこと

  • 「感情を揺さぶられることで記憶を作り、自分という人間が形成されていく。それこそが豊かな人生だと思います。感情を揺さぶられる一番の瞬間は“知らないことに出合った時”、そう強く感じています」

RECOMMENDED EXHIBITION

  • モネ没後100年
    クロード・モネ─風景への問いかけ
    アーティゾン美術館

日本初公開を含む世界最高峰のモネ作品41点が一挙来日
オルセー美術館が、モネ没後100年という節目の年の幕開けと位置付けた展覧会です。ル・アーヴル、アルジャントゥイユ、ヴェトゥイユ、ジヴェルニーなど、モネの創作を語る上で重要な場所と時代から、画業の発展を丁寧にたどります。年代順に追い、風景画をどう革新させたかを分かりやすく展示。モネと関わりのある画家の作品や影響を受けた美術品など、様々な視覚表現を交錯させた奥行きのある展示構成が見どころで、モネの作品41点を含む、オルセー美術館所蔵の約90点に、国内の美術館や個人所蔵作品を加えた合計約140点を展示予定。ぜひご期待ください!

左:【日本初公開】クロード・モネ《トルーヴィル、ロシュ・ノワールのホテル》1870年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 Photo © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) /Gabriel de Carvalho / distributed by AMF
右:クロード・モネ《戸外の人物習作-日傘を持つ右向きの女》1886年、油彩・カンヴァス、オルセー美術館蔵 Photo © GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) /Stéphane Maréchalle/ distributed by AMF

スペシャルサイトをチェック!

この記事は、2025年10月26日発行の日経REVIVE11月号に掲載された内容です。

取材裏話

11月号「アート」花梨さん

ナビゲーターの花梨さんは自身でもコラージュを制作しているので、クリエーター視点のコメントが新鮮、と学芸員さんに好評でした。アーティゾン美術館、以前はブリジストン美術館の名称で、名前の通り創業者のコレクションを常設展でも楽しめます。ミュージアムカフェのメニューもここでしか味わえないようなスイーツが。ロケ日は残念ながら休館日だったので営業はしていなかったのですが、カフェ、ディナーともに穴場的なスポットです。なお美術館はゆったりと鑑賞してもらえるよう日時予約指定制なので事前にwebで登録を。