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作り方は自由で いいんです

|鍋の恋しい季節になりました|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

臥牙丸勝さんの「ちゃんこ」GOOD LIFE
作り方は自由で いいんです
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2025年12月14日

野菜もたっぷりでお肉も入っていて
ちゃんこ鍋は完全食です。

現役時代は230キロの巨体からの押し相撲で、人気を博した臥牙丸さん。
17歳の来日時には135キロだった体重が、最盛期には230キロを超えたと言います。
力士・臥牙丸を支えた「ちゃんこ鍋」について、ちゃんこ鍋を味わいながらお話を伺いました。

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臥牙丸勝

ががまる・まさる1987年、ジョージア生まれ。本名はジュゲリ・ティムラズ 。元力士。2005年世界ジュニア相撲選手権無差別級3位になり木瀬部屋に入門。同年初土俵を踏む。膝のケガが原因で2020年11月17日引退。最高位は小結。「ガガ」は子供時代からの愛称。YouTubeチャンネル【ガガちゃんねる】が人気。

撮影/長野陽一 取材・文/山本由樹(編) アートディレクション/本多康規(Cumu)

ヘルシーであったまる、
ちゃんこ鍋で力士は強くなります

「おいしそうですね。ちゃんこ鍋はヘルシーなんですよ、野菜が多いんで。お相撲さんはおなかいっぱい食べても、すぐおなかが減るんです(笑)」

出来たてのちゃんこ鍋を前に、ご満悦の臥牙丸(ががまる)さん。2020年の引退から5年。毎日ちゃんこ鍋を食べることはなくなりましたが、寒い季節になるとちゃんこ鍋が恋しくなるとか。

「体があったまりますから、冬にはいいんです。お相撲さんは暑い季節も汗かきながらちゃんこ鍋を食べますが」

臥牙丸さんはジョージア出身。最高位は小結の元大相撲力士。世界ジュニア相撲選手権のために17歳で来日して、そのまま木瀬部屋に入門。日本での生活は20年を超えた。

「日本に来て1週間で帰る予定だったんですけど、気付いたら相撲部屋に入ってました(笑)。ある相撲関係の方から『何か言われたら、なんでもはいはいと言えば大丈夫だから』と言われて、その当時は言葉も分からなかったから、はいはいと言っていたら、プロになることになっていました」

外国人の少年にとって、日本の相撲部屋はどう映っていたのだろう?

「相撲部屋には独自のルールがあるから、最初は泣きながら辛抱していました。僕は相撲部屋以外の日本の社会を知らなかったから、日本人はみんなこうして暮らしているのかと思って、厳しい人生送っているなと」

来日時135キロだった体重は、どんどん増えていった。

「お米がおいしくって、ハマり過ぎてしまいました。何度もお代わりに立ち上がらなくてもいいように、自分用の大きなどんぶりを用意しました」

ちゃんこは親方や関取から食べ始めて、その後に幕下以下の力士が食べますが、若手の力士が食べるころには鍋に汁しか残っていないことも。

「そういう時はご飯におかかとマヨネーズをかけてしょうゆを垂らして食べました。相撲の世界では貧乏飯と言うんですが、これがおいしかったんです」

関取になってから体重はますます増え、最高230キロを超えたという。

この日のちゃんこ鍋はしょうゆ味。野菜のほかに豚バラ、鶏つみれ団子、鶏もも肉。「さっぱり味でおいしいですね」

  • ちゃんこ鍋に決まったレシピはありません。自由に好きな具材で作ってください。水炊きは一番簡単なちゃんこ鍋。木瀬部屋では60%くらいは水炊き。ポン酢でおいしく食べます。

今も現役で活躍する玉鷲(右)、隣が臥牙丸、1人置いて同じジョージア出身で大関になった栃ノ心。外国出身力士たちと地方巡業で。

ちゃんこ鍋は自由な料理
相撲部屋には名物鍋が

「ちゃんこ」とはお相撲さんの作る食事のこと。鍋以外でも食事はすべてちゃんこと呼びます。ちゃんこ鍋に決まったレシピはなく、共通するのはたっぷりの野菜と肉や魚を入れて栄養バランスが取れているところ。ちゃんこ鍋が「完全食」とも呼ばれる理由です。

「僕の好きだった木瀬部屋のちゃんこ鍋は、トマトちゃんこ。トマトベースのちゃんこ鍋で、勝ち越したら作ってもらえたので、励みにもなりました」

木瀬部屋のトマトちゃんこは、ベースにトマト缶を使い、オリーブオイルやニンニクも入ったちょっとピリ辛味。まるでイタリアンな鍋です。

「ちゃんこ鍋は鍋料理ということ以外は自由なので、何を入れてもいいんです。それぞれの相撲部屋には名物ちゃんこ鍋があるんですが、現役時代にはよその部屋のちゃんこを食べることはなかったので、引退してから食べる機会があると、どの部屋のちゃんこ鍋もおいしいなあと思いますね」

引退後は相撲や日本の文化を伝えるための活動をしている臥牙丸さん。母国でも、ジョージア出身力士の活躍もあり相撲がブームになっているという。

「2006、7年ごろは着物で帰国すると『ハロウィーンですか?』と聞かれるくらい相撲は知られていなかったんですが、今はアマチュア相撲も人気になっていて、日本の大相撲に入りたいという子供も多いです。ものすごくうれしいです」

臥牙丸さんにとって故郷の味は?
と質問すると、

「ジョージア料理よりも、日本の優しい料理、ちゃんこ鍋とか日本のおいしい米とかです。ご飯と納豆があれば大満足です。これだけで生きていけるんじゃないかなと思うくらいです」

大好きだったちゃんこ鍋は
木瀬部屋のトマトちゃんこ


たっぷりの野菜と肉や魚の入ったちゃんこ鍋は、栄養バランスの取れた「完全食」とも言える料理。油を使わないレシピなら、脂質の取り過ぎにもならないので、ダイエット食でもあります。

臥牙丸さんが食べた
ちゃんこの作り方

材料
TANIARASHIのちゃんこ鍋は野菜や肉類を一緒に煮込む寄せ鍋。材料は、白菜、ニラ、ごぼう、エノキタケ、もやし、玉ねぎ、絹豆腐、油揚げ、シラタキ、鶏もも肉、豚バラ、鶏つみれ。シメはうどんか雑炊でだしもすべて味わう。

作り方

  • ①鶏つみれは胸肉のミンチ。煮崩れするので、火を通しておく。
  • ②すべての具材を並べる。白菜の芯まで火が通ったら食べごろ。
  • ③タレは秘伝。家庭で作る時はしょうゆベースのだしを合わせて。

What's GOOD LIFE for you?
相撲の魅力を世界に伝えたい

  • 毎年米テキサス州のダラスに相撲を教えに行っています。行くたびに相撲をしたい子供たちが増えていて、相撲は世界でも人気になってきたのを感じています。ロンドン場所も大成功で、素晴らしいです。

この記事は、2025年12月14日発行の日経REVIVE1月号に掲載された内容です。