2 2026

日常に刺激をくれて 心が豊かになる

|冬もアートを楽しむ|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

市川紗椰さんの「 アート」GOOD LIFE
日常に刺激をくれて 心が豊かになる
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2026年1月25日

正解がないから面白い
アートに触れてもっと自由に

今年、開館100周年を迎える東京都美術館。
この節目に改めて考えたいのはアートが人生にもたらす豊かさについてです。このたびアート好きで造詣が深い市川紗椰さんと高橋明也館長のスペシャルトークが実現。11月に開催される「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」展の見どころなどを語っていただきました。

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市川紗椰

いちかわ・さや1987年生まれ、米国デトロイト育ち。 16歳の時にスカウトされ雑誌の専属モデルとしてデビュー。以来、数多くのファッション誌で活躍。趣味は音楽、読書、アニメ鑑賞、鉄道、アート、相撲、食べ歩きなど多岐にわたる。 現在はラジオ番組のMCやナビゲーターの他、雑誌のコラム連載などで活動中。

衣装提供:ジャケット、パンツ/MSGM(アオイ 03-3239-0341) ブーツ/HENRI EN VARGO(アポロ 03-3806-6571) ピアス/Bijou de M(Bijou de M六本木ヒルズ 03-6271-5353)

その時代の熱量に触れられる。
だからアートが好きなのです。

アートは難しいものだと感じている人は少なくありません。ただ、その思い込みこそが美術館との距離を広げているのかもしれない、とお二人。

市川さん(以下、敬称略)
私自身、歴史やアートが好きで美術史を学んできましたが、全部を理解しようと思うことはありません。わあ、きれい! すてきだな、と理屈ではなく感じることを大切にしています。その後になぜ作者はこういう表現をしたんだろう? と疑問に思ったことを調べていく感じです。これは歴史好きだからだと思います。

高橋館長(以下、敬称略)
それでいいんです。アートは自由なものですから。難しく考える必要はなくて、まずは感覚的に捉えてほしいです。色や形から入ってこれは好き、嫌いとかでいいんです。かしこまらずにリラックスしてアートを感じてほしいですね。

お二人がアートに開眼したのは共に学生の頃だといいます。

高橋
僕は忘れもしない1965年、12歳の時です。
親の仕事で家族で1年かけて欧州を巡り、美術館や教会を訪ね歩いていたんです。気付いたらアートに魅了されていました。日常の中に自然とアートがあった環境は大きかったかな。中でも、当時の「印象派美術館」で見たマネの《オランピア》にはものすごい衝撃を受けました。理屈よりも先に感覚が反応したんです。子ども心に、ヤバいぞこの作品はって感じましたから。

市川
分かります。私もマネのオランピアを見た時は衝撃でした。美化していない生々しさが革新的だなと。深掘りしたくなるきっかけとなる作品の一つです。私がアートに開眼したのは中学生の時でした。小さい頃から美術館に行くのが好きだったんですが、ニューヨークのMoMAで見たマーク・ロスコに度肝を抜かれたんです。生で見る楽しさや体験の力をすごく痛感しました。写真や図録では伝わらない色の奥行きや作品が発している力みたいなものが、確かにそこにありました。

高橋
本当に。生で見るのって想像の何倍も刺激的だし情報量もすごいですから。ついつい堅苦しく捉えがちだけど、アートに正解はないです。

市川
正解がないのが面白いところ。自由に楽しんでと作品から言われているようにも感じます。

人生の余白に広がりをくれる
アートって懐が深い


「日本には良質な企画展/特別展がたくさんあります。イベント感もあり、美術館初心者の方も楽しめると思います。東京都美術館は刺繍展や海外コレクションなど、本当に多種多様で面白いですよ」


ジャン=フランソワ・ミレー《落穂拾い》 1857年 油彩、カンヴァス 83.5×110.0 cm オルセー美術館
© Musée d’Orsay, Dist. GrandPalaisRmn / Patrice Schmidt / distributed by AMF


エミール・ガレ《壺》1890-1900年頃 多層被せガラス、金属箔封入、エングレーヴィング、溶着 21.0×11.5×底径7.5 cm オルセー美術館
© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF


ピエール=オーギュスト・ルノワール 《読書する女性》 1874-76年 油彩、カンヴァス 46.5×38.5 cm オルセー美術館
© GrandPalaisRmn (musée d’Orsay) /Adrien Didierjean / distributed by AMF

美術館のあるべき姿
アートがくれる豊かさとは

今年の11月から東京都美術館で開催される「オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び」展。高橋館長は1984年から2年間オルセー美術館開館準備室に客員研究員として在籍していました。

高橋
オルセー美術館は、もともと駅舎だった建物を美術館に改修しているんです。市川さんはオルセー美術館に行かれたことはありますか?

市川
はい。もともと駅舎だから開かれた感じがするんですね。建物もとてもすてきで日の入り方も情緒的で印象に残っています。あとは年齢を問わずいろんな方が思い思いに過ごしているのがすごいなと。日常にアートがあるってこういう幸せで豊かな光景が広がるんだ、とも感じました。

高橋
美術館やアートの存在の仕方が日本とはまるで違いますよね。僕も当時感じていました。欧米ではアートが政治や宗教、経済、つまり自分たちの社会全般に関わっているのに対し、日本ではそこがつながらないですよね。

市川
だから美術館に行くことが特別なことになってしまうのかも。でも日本の美術館の展覧会って素晴らしいものが多いし、なんだかジレンマも。

高橋
常設でのアートピースの数が少ないのも日本の美術業界の課題でもあります。でも展覧会は本当に面白いものがたくさんありますよね。今回の特別展もオルセー美術館の特徴である絵画、写真、グラフィックなど各分野を網羅しているのをさらにキュレーションして、オルセー美術館の空気も含めて持ってくる予定なので、お楽しみに。テーマが”いまを生きる”というポジティブで明るい視点なんですが、ルノワールの絵画や自然をモチーフにした作品からは元気をもらえるんじゃないでしょうか。

市川
いつ、どこで見るのかによっても感じ方が変わるのもアートの面白いところですよね。どんなふうに展示されるのか今から楽しみです!

「作品の見方が分からないという声を耳にするのですが、例えば絵画だったら筆の動きとかを観察してみるのはどうでしょう?
強さなどからどんな思いで描いていたのかを想像するのも楽しいです」


お二人に東京都美術館の推しポイントを聞きました。「多種多様な特別展、公募展を継続して開催しているところでしょうか」(高橋館長)。「良質な展覧会はもちろんのこと、特別展ごとに発売されるグッズがとてもかわいいんです。独創的だし思い出にとつい買ってしまいます」(市川)

What's GOOD LIFE for you?
熱量を体感できる

  • 「時代背景や歴史を知ることでより一層作品に詰まった思いを感じ取れる。アートに触れることは時代を超えて熱量に触れられることで、それってとてもぜいたくで人生を豊かにしてくれるものだと思います」

2026年も注目の展覧会が目白押し!
お得なチケットもあるので今すぐチェック。

Featured in 2026 art exhibition

ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ

DATE:6月10日(水)~9月21日(月)
PLACE:国立新美術館 企画展示室2E(東京都港区六本木7-22-2)

デザイナーのポール・スミスが
パブロ・ピカソをキュレーション

パリの国立ピカソ美術館が所蔵する巨匠パブロ・ピカソ(1881-1973)の初期から晩年までの作品からインスピレーションを受け、伝統的な仕立てと遊び心あふれる色使いで知られる英国人デザイナー、ポール・スミスが会場をレイアウト。自由な発想で創り上げられた会場構成はカラフルで楽しい雰囲気でいっぱい。アートファンのみならず、ファッション好きも楽しめるはずです。

杉本博司 絶滅写真

DATE:6月16日(火)~9月13日(日)
PLACE:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー(東京都千代田区北の丸公園3-1)

日本を代表する現代美術作家
杉本博司の写真展

建築や舞台芸術、文化施設の創設など、幅広い領域で活動を続けている現代美術作家・杉本博司。本展では、その創作の原点である銀塩写真に焦点を当て、初期作品から現在に至るまでの代表作約60点を紹介します。独自の視点と高度な技術による作品群は、表現としてのみならず、銀塩写真の頂点を極めるものであり、その技法はまさに『絶滅が危惧される』ものといえます。

杉本博司《 相模湾、江之浦》 2025年 ゼラチン・シルバー・プリント119.4×149.2cm
©Hiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi

東京都美術館開館100周年記念
オルセー美術館所蔵 いまを生きる歓び

DATE:11月14日(土)~2027年3月28日(日)
PLACE:東京都美術館 企画展示室(東京都台東区上野公園8-36)

世界を代表する名画や
美術品が一挙来日

本展は、2026 年に開館 100 周年を迎える東京都美術館の節目の年を締めくくる特別展です。「印象派の殿堂」とも称され、2026年に開館 40周年を迎えるオルセー美術館のコレクションから、「いまを生きる歓び」をテーマに絵画や彫刻、工芸や写真など約110点を展示予定。ミレーをはじめ、ルノワール、モネ、ファン・ゴッホらの作品を通して、多様な歓びのありようをご紹介します。

フィンセント・ファン・ゴッホ《 ローヌ川の星月夜》1888年 オルセー美術館
©GrandPalaisRmn (musée d’Orsay)/Hervé Lewandowski/distributed by AMF

この記事は、2026年1月25日発行の日経REVIVE2月号に掲載された内容です。

取材裏話

2月号「アート」市川紗椰さん

「東京都美術館には常設展示がない」と思いきや、入り口付近のレリーフ・彫刻12点がアート作品なのです。市川さんと高橋館長が向かい合っている球体は井上武吉さんによる「my sky hole 85-2 光と影」という作品。市川さんは美術番組出演多数なので造詣が深く、私が今まで聞いたことがないアーティスト、例えばイブ・クライン、マーク・ロスコの名前も対談中に出てきて、触発されました。黄色に色づいた銀杏が美しいアート日和でした。