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コラム
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画家としてのル・コルビュジエ 編
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2023年08月27日
キュビスムを批判し
新たな絵画を提唱した
国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエが、画家でもあったことは意外と語られない。
ル・コルビュジエの人生は、建築と同様、絵画にも情熱をかけた人生だった。ル・コルビュジエは本名をシャルル=エドゥアール・ジャンヌレといい、13歳で美術学校に進学。美術学校で出会った教師の勧めで建築を学び、パリで建築家としての道を歩み始める。
キャリアを重ね30代になったころ、アメデエ・オザンファンという画家と出会う。二人は「ピュリスム(純粋主義)」という言葉を唱え、新たな芸術活動を行っていく。画家エドゥアール・ジャンヌレが最も輝いた時代だ。
ピュリスムはキュビスムの複雑化した画面構成を批判し、もっと幾何学的に単純化したフォルムに美しさを見いだそうとする絵画で、ポストキュビスムの絵画の方向を提唱したものだった。
今回の展覧会にも出品されるル・コルビュジエの《静物》は、その当時の作品で、ボトルやパイプ、本などの形態を、そぎ落としたシンプルで計算された構成で捉えている。
「jeanneret(ジャンヌレ)」とサインが右下にきちょうめんな字で記されているので、展覧会で確認してはどうだろうか。
建築家で名声を得ても
絵筆は握り続けた
ピュリスムはキュビスムの影響を受けた芸術活動だったが、そのシンプルな構成は、ル・コルビュジエの建築と共通している。
建築家としてのル・コルビュジエは、1926年に「近代建築の5原則」を提唱。その5年後に竣工したサヴォア邸は、その原則を具現化した名建築で、水平線と垂直線によって厳密に計算された白い立方体の箱は、どこかピュリスムの絵画を思わせる。
パリに構えたアトリエで毎日のように絵筆を握っていたル・コルビュジエ。休暇になると南仏に建てた小屋で、やはり絵筆を握っていたという。画家としての評価は建築家としての評価には遠く及ばなかったが、建築も絵画もどちらも等しく芸術だった。
参考文献:『ル・コルビュジエ 建築とアート、その創造の軌跡』(発行:リミックスポイント)