コラム

ART

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アートと工芸でつながる北陸

伝統工芸が集まる地域 北陸の楽しみ方

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2023年10月19日

日経 REVIVE Web版の独自テーマ【アート】第4弾!
北陸は、加賀友禅や輪島塗など数多くの伝統工芸が受け継がれる土地。9月15日、この北陸・富山を舞台に「GO FOR KOGEI 2023」が開幕されました。
開幕直前の14日、日経REVIVE Web版でもGO FOR KOGEI 2023 プレスツアーの様子を速報しましたが、今回は、GO FOR KOGEI 2023のプロデューサーでもある認定NPO法人趣都金澤しゅとかなざわ 理事長 浦 淳(うら・じゅん)さんのインタビューを前・後編に分けてお届けします。

前編ではGO FOR KOGEI 2023について、後編では北陸の楽しみ方についてお伝えします。

取材者のご紹介
GO FOR KOGEI 2023 プロデューサー
認定NPO法人趣都金澤 理事長
(株)浦建築研究所 代表取締役 浦 淳(うら・じゅん)様

略歴:1966年金沢市生まれ。大阪で建設会社に勤務後、1993年(株)浦建築研究所入社。2006年同社代表取締役社長に就任すると共に、まちづくりのNPO法人趣都金澤(現 認定NPO法人)を設立。2013年には文化事業会社、(株)ノエチカを設立。建築家、まちづくり・文化事業プランナーとして、北陸の建築・文化の発信を目指している。主な建築作品に、金沢港クルーズターミナル、ダッカ高速輸送鉄道1号線開発プロジェクト、辻家庭園、ベルリンゆらぎの茶室(忘機庵)。活動にGO FOR KOGEIプロデューサー、金沢21世紀工芸祭総合監修など。個人及び団体として、いしかわデザイン賞、金沢市文化活動賞、建築作品として、いしかわ景観賞、グッドデザイン賞他受賞歴多数。
前編

GO FOR KOGEI とこれまでの活動

GO FOR KOGEI は2020年から始まりました。日本の工芸の魅力を発信する北陸工芸の祭典であり、今年で4回目の開催となります。残念ながら、2020年はコロナの影響もあり、講演会の実施のみになったそうですが、2021年以降、富山、石川、福井の北陸3県を舞台にさまざまな取り組みが行われています。

「GO FOR KOGEI 2021」では、「工芸の時代、新しい日常」をテーマに、“現代アート化する工芸”と“デザイン化する工芸”を、高岡、金沢、小松、越前で2つの[特別展]として展開するとともに、北陸の工芸産地をリアルとオンラインで巡るプログラムでした。

特別展1「工芸的な美しさの行方」では、3つの重要文化財である岡太神社おかもとじんじゃ大瀧神社おおたきじんじゃ(福井県越前市)、那谷なたでら(石川県小松市)、勝興しょうこう(富山県高岡市)で、多様な20名のアーティストが参加し、⽂化財空間に呼応した⼯芸の概念を超えるスケールの大きな展⽰が行われました。

特別展2「工芸×デザイン 13人のディレクターが描く工芸のある暮らしの姿」では、各界で活躍する13名のディレクターと、地域の伝統工芸を担う職⼈や個性的な工芸作家、生産者がチームを結成。デザイナー原研哉×谷口製土所(石川県の九谷焼磁土の製土所)による器や、ファッションデザイナー皆川明×ガラス作家ピーター・アイビーのファブリック制作など、マーケティングに依らない、暮らしに根ざした個⼈の視点から 「こんなものがあったらいいな」と思う⽣活道具が提案されました。
https://2021.goforkogei.com/special-exhibition2/



GO FOR KOGEI 2022イメージ

“重要文化財の寺社仏閣を舞台に、日本の工芸シーンを牽引する20名の作家作品を展示をしました。もともと北陸には、焼きものや漆・金工・和紙・木工彫刻から、ガラスやメガネまで工芸の大きな器があります。また、国立工芸館が金沢に来たことで、工芸の振興地は金沢を含めた北陸全体と認められたと思います。だからこそ、北陸全体として工芸に対してどう振る舞っていくかが重要になっていくので、北陸から新しい工芸の流れを発信していきたい”と浦さんは語ります。

GO FOR KOGEI 2023

2022年までは北陸3県を舞台に広範囲で展開してきた「GO FOR KOGEI」ですが、広範囲ゆえの問題が見えてきます。それぞれの開催地が離れているため、来場者からすべてのエリアを「回りきれなかった」という声が出たこともあり、GO FOR KOGEI 2023は、開催地域を富山市1か所に集中させることになりました。

近年の富山市は街全体が進化しており、工芸も盛んで地元の方々がイベント開催にとても熱心なことから、「GO FOR KOGEI 2023」は、富山市の環水公園エリア、中島開門エリア、岩瀬エリアの3つのエリアで、徒歩や公共交通のライトレール、船などを利用して作品を見てまわれる内容となりました。

この「運河を船で渡り各エリアを巡る」という水の都・富山ならではの特徴が、今回のテーマとも深く関連しているそうです。

  • 北陸工芸の祭典 GO FOR KOGEI 2023
    物質的想像力と物語の縁起―マテリアル、データ、ファンタジー

    会期:2023年9月15日(金)–10月29日(日)
    時間:10:00-16:30(入場16:00まで)
    会場:富山県富山市 富岩運河沿い(環水公園エリア、中島閘門エリア、岩瀬エリア)
    休場日:樂翠亭美術館(水曜)、富山県美術館(水曜)、ほか会期中無休
    URL:https://goforkogei.com

「GO FOR KOGEI 2023」をどう見ればよいかを浦さんにお聞きすると、“工芸の枠を広げていくことをテーマに、これも工芸なの?と思われるところまで内容を広げています。さらには素材(マテリアル)や制作のプロセス、アーティストの精神性を重視しました。モダンアートも含めて、これまでの工芸の枠組みを取り外し、範囲を広げることにより、そこから見える工芸とはなにか?を問いかけています。来場者の方にはもの・情報・感覚的なものを横断的に見てもらい、工芸とはなにか?を考えていただけたら”と説明してくれました。

それぞれの思いが強いからこその苦労

これまでの取り組みを進める上でご苦労した点を伺うと、北陸3県とはいえ、やはりそれぞれの地域への強い思いがあるため、皆さんの声をまとめることにはとても苦労されたようです。

重要文化財を舞台にアート作品や工芸作品を展開することに理解を得ることは簡単ではなく、各方面への説得に尽力されたとのこと。しかし、そうして理解を得られた後も、行政や展示場所を提供いただいた方々の思惑と、企画側の考えが異なるという問題などもありました。
様々な難しい局面にもひとつひとつ向き合い、すべての最適解を追求し、最終形に至ったといいます。

コロナの影響も大きく、毎年一喜一憂しながら進められていたそうですが、一方で、あまり遠出ができない状況だったからこそ、近隣のひとが足を運ぶ良いきっかけになったともいいます。近県に住んでいながら、大瀧神社や那谷寺、勝興寺を知らない人も多い中、イベントを通じて近隣地域に目を向けてもらうことにつながったようです。

後編

北陸を楽しむコツ

北陸をメインに活動されている浦さんに、北陸を楽しむコツを教えていただきました。

“「GO FOR KOGEI 2023」では、工芸の作品はもちろん、作品は地域と密接に関わっているので、その土地土地を見てほしいですね。さらに会期中に関連するプログラムも開催されるので、関連プログラム、北陸連携プログラム、富山市内の展覧会などにも足を運んでみていただきたい”と浦さん。


浦 淳さん:「GO FOR KOGEI 2023」プレスツアーにて

関連するプログラムはこちら。

【関連プログラム】
GO FOR KOGEI 2023 国際シンポジウム 「アートと工芸を巡る話」 10月21日13:00-18:00

【北陸連携プログラム】
千年未来工藝祭 8月26日~27日 ※会期終了
市場街2023  9月16日~9月18日 ※会期終了
RENEW/2023  10月6日~8日 ※会期終了
ガラスフェスタ 10月7日~8日※会期終了
KUTANism  10月6日~11月5日
KOGEI Art Fair Kanazawa 2023 12月1日〜3日

【富山市内の展覧会】
富山県美術館「大竹伸朗展」 8月5日~9月18日 ※会期終了
富山県美術館「金曜ロードショーとジブリ展」 10月7日~翌年1月28日 日時指定予約制
富山市ガラス美術館 コレクション展「ガラスをめぐる自然」 6月10日~12月3日
富山市ガラス美術館 企画展「日本近現代ガラスの源流」 7月8日~10月9日※会期終了
Taizo Glass Studio

さらに、“北陸には新幹線も空港も、大型クルーズ船が就航する港もあり、日本全国、そして海外からも非常にアクセスが良いところです。アートや工芸だけではなく、食や文化など見どころはたくさんあるので、富山だけではなく石川や福井にも、ぜひ足を伸ばしていただければ” と付け加えられました。

工芸×建築

建築家の視点から「GO FOR KOGEI 2023」に取り組み、工芸と向き合い、地元北陸への強い思いを持つ浦さんは、現在「工芸建築」という取り組みを進められています。

「工芸建築」とは、工芸と建築の異なる分野をかけあわせて1つの形にする取り組み。

そのひとつの例として、ベルリン王宮内で欧州最大の文化施設「フンボルトフォーラム」内に設置される「ベルリン国立アジア美術館」の茶室があります。


https://www.uraken.co.jp/projects/214/

この茶室はコンセプトの段階から、茶道裏千家今日庵業躰の奈良宗久氏監修の下、陶芸家の中村卓夫氏、漆芸家の西村松逸氏、金工作家の坂井直樹氏、3名の現代工芸家と議論しながら案をまとめ、「工芸×建築」の成果物を創り上げたそうです。

“一度金沢で組み立てて、バラして、ベルリンに輸送。地元の職人が現地に赴き1ヶ月半で再度組み立てて完成させた”という実際のプロセスのお話も伺いました。

“工芸という動産を建築と結びつけることで「工芸の不動産化」が図れるのでは?”と語る浦さん。

続けて、“もともと日本の建築は、棟梁がまとめ役で、それぞれの職人が知恵をしぼって、それぞれの役割を果たすような共同作業だったけど、西洋建築が入ってきたことにより、設計者が細部まで設計することで、作家が創造的な部分で関わる形が少なくなってしまった。そこで今一度、作家の想像力を活かし、みんなで考えて1つの作品を創ろうという思いが「工芸×建築」にはあります。”と説明されました。

その他にも石川県内の病院やホテルなどで多様な「工芸建築」を見ることができるので、「GO FOR KOGEI 2023」に訪れた際に、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

医療法人社団 博友会 金沢西病院リニューアル(株式会社 浦建築研究所 事例紹介)
ウェルネスハウスSARAI

まとめ

“さまざまなアートや工芸のイベントが開催されているが、まだまだ単独での展開にとどまっているところもあります。もともと「GO FOR KOGEI」は北陸全体を繋げていくというコンセプトで始まっているので、それらをネットワーク化して、もっともっと工芸の魅力を伝えていき、北陸全体を盛り上げていきたい”と、浦さんはインタビューの最後を締めくくってくれました。

日経 REVIVE Web版 独自企画は「地方×アート」というキーワードで進めていますが、どの地域でも同じような課題があることに気づかされます。しかし、その課題にしっかりと向き合い、克服してきたからこそ、成功を勝ち得るのだと感じました。

次回もお楽しみに。