コラム
ART
posted by 日経REVIVE
パナソニック汐留美術館にて開幕
ベル・エポック―美しき時代
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2024年10月21日
2024年10月5日より、パナソニック汐留美術館にて開催中です。
19世紀末から1914年頃までのパリが芸術的にもっとも華やいだ時代「ベル・エポック」。
ベル・エポック期から1930年代に至る時代の美術、工芸、舞台、音楽、文学、モード、科学といったさまざまなジャンルで花開いた文化のありようを重層的に紹介する展覧会が開幕しました。
本展の担当学芸員 古賀暁子さんによる本展覧会の解説をご紹介します。
展覧会の見どころ
本展は、2018年に公開された映画「ディリリとパリの時間旅行」から着想を得て企画されました。
映画「ディリリとパリの時間旅行」は、ニューカレドニアからベル・エポック期のパリにタイムスリップした主人公ディリリが、友人オレルとともに、この時代を彩った多くの芸術家たちと出会い誘拐事件の謎を解いていく物語です。
物語の中でディリリが出会った人物に、ロートレック、ロダン、シャガール、女優のサラ・ベルナールや文学者プルースト、道化師のショコラなどが登場します。こうした人物たちが本展にも登場し、当時のパリの活気を伝えています。
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第1章では、パリ中心地の市景観やそこで生活を送っていたブルジョア階級の女性たちの装いなどを紹介します。その一方で、少し中心地から外れた地域で見られた貧しい人たちや負傷兵、孤児や娼婦など、一見華やかに見える時代の暗い部分にも焦点を当てた作品が紹介されています。
《モンマルトルから望むパリの屋根》1895年頃
ブルジョワジーの都市生活
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展示風景
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展示風景
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アナイス・トゥードゥーズ
《ルーヴル百貨店のこども服》『ラ・モード・イリュストレ:ジュルナル・ド・ラ・ファミーユ』より -
手前:ピエール=オーギュスト・ルノワール
《帽子を被った二人の少女》1890年頃
パリ北部の開発が遅れた地域モンマルトルで花開いた新興のキャバレーやダンスホール、カフェ・コンセールなどを紹介。ここではフランスで初めてのポスターデザイナーとされるジュール・シェレによるキャバレー「ムーラン・ルージュ」の開店当初のポスターや数多くの芸術家たちが通ったキャバレー「シャ・ノワール」の人気演目であった影絵芝居に関係する資料、そして影芝居をを再現した映像作品を紹介しています。
また、この章には当時活躍していた文学者たちの貴重な書籍類も並び、そこには、文学者と芸術家たちが交流して生まれた作品もあります。例えば、イギリスの詩人であるエドガー・アラン・ポーが作詞し、フランスの詩人ステファヌ・マラルメが翻訳、エドゥアール・マネが挿絵を提供して完成した有名な作品「大鴉」など。また、ステファヌ・マラルメが作詞したものにマネが挿絵を描いた「半獣神の午後」という作品がありますが、ドビュッシー作曲による音楽と作品の朗読を会場内で聴くことができます。
ムーラン・ルージュとダンスホール
カフェとカフェ・コンセール
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左:マクシム・デトマス
《カフェのテーブルに座る女性》1893年
右:エドモン・ランペルール《カフェの情景》1900年頃 -
アンリ=ガブリエル・イベルス
版画集『ル・カフェ・コンセール』表紙 1893年
《ブリュアンはモンマルトルに戻り『オ・バ・ダフ』を歌う》1893年
シャ・ノワール
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テオフィル=アレクサンドル・スタンラン
《シャ・ノワール》1896年 -
フェルディナン・バック
《シャ・ノワールの影絵》1887‒1892年頃
右:ジョルジュ・ティレ=ボニェ 《ラパン・アジルの店内》1910年頃
芸術家たちの交流(文学、美術、音楽)
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展示風景
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エドガー・アラン・ポー、ステファヌ・マラルメ (フランス語訳)、エドゥアール・マネ(挿絵)『大鴉』リシャール・レスクリード、パリ、1875年、レプリカ、鈴木信太郎文庫より
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アルフォンス・ミュシャ
『主の祈り』より 1899年 -
展示風景
モンマルトルの劇場の上映目録や披露されていたダンス、そして2章で紹介されたキャバレー「ル・シャ・ノワール」で実際に飾られていたジュール・シュレのポスターなども見どころとなります。
舞台上の人間模様
ジュール・シェレ《パントマイム》1891年
ジュール・シェレ《コメディー》1891年
ジュール・シェレ《ダンス》1891年
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アンドレ・ドヴァンベズ《俳優》1900年頃
音楽とダンス
シャルル・モラン 《ロイ・フラー(オレンジ色の衣装)》1895年頃
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アンリ=ガブリエル・イベルス 挿絵付き上演目録 1893‒1894年
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展示風景
最後の部屋では、ベル・エポック期に活躍した女性たちを紹介しています。
女流画家としては先駆的な存在だったスザンヌ・バラドンの作品や、女性が描く裸婦の素描画、当時人気のあった女優サラ・ベルナールを描いたアルフォンス・ミュシャのポスター、サラ・ベルナールが「遠国の姫君」という舞台で実際に身に着けていた冠などが並びます。
このころから、女性たちが活躍するアール・デコの時代に入っていきます。第1章の展示で見られたドレスは、腰をきゅっと絞った身体を締め付けるスタイルでしたが、この時代では、動きやすくてシンプルなドレスやひざ丈のドレスなどが着られるようになりました。女性たちのスタイルの変化も見ていただくことができます。
サラ・ベルナール、シュザンヌ・ヴァラドン
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アルフォンス・ミュシャ《サラ・ベルナール》1896年 堺 アルフォンス・ミュシャ館(堺市)蔵 [展示期間:10/5~11/12]
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左上:シュザンヌ・ヴァラドン 《座る二人の女性》1897年
左下:シュザンヌ・ヴァラドン 《ベッドにもたれる裸のルイーズ》1895年
右:シュザンヌ・ヴァラドン 《フルーツ鉢》1917年
第4章に併設するルオー・ギャラリーでは、ベル・エポック期にジョルジュ・ルオーが描いた作品の中からパナソニック汐留美術館の所蔵作品をまとめて見ることができます。
そして、会場外にあるロビー映像では、本展のポスターにもなっているロートレックが描いた伝説の歌手アリスティ・ド・プリュアンの歌声や同じくロートレックが描いたことで有名な歌手イヴェット・ギルベールが演じる当時の映像、サラ・ベルナールがハムレットを演じている映像といった貴重な映像がご覧いただけます。
ベル・エポック期のパリ、その当時の雰囲気を味わえる展覧会。ぜひご覧ください。
※土曜日・日曜日・祝日は日時指定予約となっています。(平日は予約不要)
ベル・エポック – 美しき時代 –
パリに集った芸術家たち
ワイズマン&マイケル コレクションを中心に
会期:2024年10月5日(土)- 12月15日(日)
会場:パナソニック汐留美術館
〒105-8301 東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
休館日:水曜⽇、(ただし、12月11日(水)は開館)
開館時間:10:00 – 18:00(入館は17:30まで)
主催:パナソニック汐留美術館、毎日新聞社
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ、港区教育委員会
協力:日本航空
企画協力:アートインプレッション
ホームページ:https://panasonic.co.jp/ew/museum//
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)