5 2025

東京の街は坂道天国!

|東京坂道散歩|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

荻原次晴さんの「坂道」GOOD LIFE
東京の街は坂道天国!
|東京坂道散歩|

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2025年4月27日

ドラマチックだから。
歩くなら平坦な道より断然坂道

東京23区内に名前のつく坂道はおよそ800以上あるといわれています。
そう、東京は全国的に見ても坂道天国なのです。
坂と聞くとつらい、足腰にくるとマイナスのイメージもありますが、見方を変えると「まるで人生のよう」という荻原次晴さんに坂道の思い出と魅力を伺いました。

NAVIGATOR

荻原次晴

おぎわら・つぎはる1969年、群馬県生まれのスポーツキャスター。 ノルディック複合選手として1998年長野五輪に出場し入賞を果たす。引退後はスポーツキャスターとして多数のメディアに出演し、ウインタースポーツをはじめ、広くスポーツの普及に尽力。「次晴登山部」を発足させ日本百名山登頂に挑戦するほか、ノルディックウオーキングも提唱する。

撮影/オノデラカズオ 編集・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

坂はいい。上りも下りもあるから
楽しいんです

ノルディック複合選手として第一線で活躍し引退後も登山、マラソン、ノルディックウオーキングなど継続的に街や自然に触れながら運動を続けている荻原さん。坂道とは縁がある人生だといいます。

「僕は群馬県草津の出身なんですけど、本当に坂しかないような街で。平坦な道がないから自転車に乗っている人はまず見ない。そんな街で生まれ育ちました。その後、憧れだった東京に出てきたわけなんですが、驚いたのが東京も結構坂道が多いということ。現役時代は競技中はほぼ山にいたので、東京にいたのはシーズンオフのタイミング。競技はお休みですがトレーニングは必要なので、よく坂道を使って体づくりをしていました。傾斜がきつめの坂道、長く続く坂道、くねくね曲がった坂道などいろいろありますよね」

今回撮影場所にと提案してくれた新坂は荻原さんの思い出の坂なのだとか。

「実は今日ここに来るのは25年ぶり。いや〜、ものすごく懐かしいですね。現役時代にこの近所に住んでいて毎日のように通っていた道。人通りも少なく、車もほとんど通らない、急な坂道なんです。これがトレーニングにちょうどよくて。よく、40秒インターバルのダッシュトレーニングをしていました。程よく負荷がかかっていい坂道なんですが、飲んだ帰りに上るのは結構しんどくて。千鳥足で上ったこともあります(笑)。僕にとっていろんな思い出が詰まった坂道です」

荻原さんにとって坂道の魅力はどんなところにありますか?

「フィジカルもメンタルも共に程よい負荷をかけられるところじゃないでしょうか。フィジカル面では、上りでは裏もも、下りでは前ももの筋肉を使うのでバランスよく足腰を鍛えることができます。走らなくとも、ウオーキングでも同様の効果を期待できます。メンタル面については上りと下り両方あることが人生に重なるなと今の年齢になってより強く感じています。特に僕は上り坂が好きなんです。この先どうなっているの?というワクワク感がたまらないし、上り切った時は達成感も味わえる。また僕の生き方としてつらいとか大変なことを避ける自分ではいたくないという思いがあるので、そんな気持ちも坂道に縁があり、引かれるゆえんかもしれません」


「坂道を上っている時によく思うんです、人生と重なるなと。上り坂が長く続くとちょっときついけど、上り切った時のすがすがしさ、少し成長できた自分、視座が変わるなど、人生みたいだなって」


都立日比谷高校の北側に位置する新坂。かつてお堀だったであろうことが想像できる石垣が今も残る。「江戸時代からの歴史も感じられて、風情もあって好きなんです」と荻原さん。

豊かな人生を送るためにも
健康こそ最高のステータス

現在55歳の荻原さん。現役引退後もランニングや山登り、サーフィンなど運動を続けています。

「僕がずっと運動をしているのは、第一に健康のためです。また、スポーツキャスターとして発言するのに、自分がきちんとしていないと説得力に欠けるよなと思っていて。それに自分自身が運動をしていないと、スポーツマインドを忘れてしまうというのも理由です。あとは、視聴者の皆さんは現役時代の僕をイメージしてくださっているので、そこから極力離れない自分でありたいという思いもあります。本当は走るのが苦手なんですけどね。嫌いなことを避ける自分は嫌なので、週2、3回のランニングやサーフィン、山登りを続けて体形も体調もキープできるようにしています。というのも、僕には子どもが4人いて全員をきちんと育てあげるにはまだまだ元気に働かないといけない。だから坂道を走っていて思うんです。今こそ人生の上り坂にいるなと。大変なことや不安な思いもあるけれど、将来への期待感もあります。子育てを終えて、長い長い坂を上り終えた時によしっ!と思えるのかな」

最後に、荻原さんがこれからやりたいことを聞きました。

「健康こそ最高のステータス。近年シニア層の健康意識がより高まっているので、僕の知識と経験を生かしてシニアの方たちが元気に過ごせる取り組みをしていきたいと思っています」

55歳、今こそ人生の上り坂
まだまだ元気に駆け上がりたい

新坂Shin-zaka
千代田区 しんざか別名「遅刻坂」とも呼ばれる
急勾配の坂道

永田町2丁目にある都立日比谷高校とメキシコ大使館の間を外堀通りへ下る急勾配の坂道。登校する生徒が息を切らしながら急ぐ姿から遅刻坂という別名で呼ばれるように。


「都内の中でも急勾配の坂なのでトレーニングにもいい坂なんです。ちょっと久々にダッシュしてみましょうか!」そう言って息一つ切らさずダッシュしてくれた荻原さん。


「坂道って終わりが見えないところにワクワクするんですよね。くねくね曲がっている坂道などはこの先どうなっているんだろう?と冒険心をくすぐられる感じが好きです」

荻原さんおすすめ!
東京坂道SPOT

津の守坂Tsunokami-zaka
新宿区 つのかみざか兄の家と行き来するのによく歩いた思い出の坂道

四谷三丁目に住んでいたこともあって、その時は兄の健司も近くに住んでいてしょっちゅう落ち合っていたんですね。その時必ず通っていたのが津の守坂。ゆったりした雰囲気で好きでしたね。

大木戸坂Okido-zaka
新宿区 おおきどざかゆるやかな傾斜で道幅が広く走りやすい坂

四谷三丁目近辺は坂道が多いエリアですが、大木戸坂も好きな坂の一つ。150メートルほどのゆるやかな傾斜の坂。道幅が広くて視界が開ける感じが歩いていても走っていても気持ちがいいんです。

三宅坂Miyake-zaka
千代田区 みやけざか現役時代トレーニングでよく走った皇居周辺の坂

現役時代毎日のように皇居周辺を走っていました。特に半蔵門から桜田門までの三宅坂はゆるやかな下り坂で景色もいいんです。そこまでの竹橋から半蔵門まで長い上り坂なのでご褒美的な場所ですね。

What's GOOD LIFE for you?
加齢は運命
老化は自己責任

  • 「加齢は誰にでも平等に訪れるものですが、老化は自分次第。いつまでも若々しく元気でいるためには何よりも健康でいることが大切。健康こそが最高のステータスであり、いい人生を送るためのポイント!」

この記事は、2025年4月27日発行の日経REVIVE5月号に掲載された内容です。

取材裏話

5月号「東京坂道散歩」荻原次晴さん

坂はマラソンでもスキー距離競技でも順位が変動しやすく、ドラマが生まれる場所でもありました。荻原さんの現役時代のクロスカントリー競技の姿を思い出すと、上り坂はスキー板をVの字にして必死の形相で駆け上がる、下りはコースを重力に任せスーと滑っている(もちろんスピード出すため必死でしょうが)イメージが。都心にも赤坂、乃木坂、神楽坂、道玄坂などあります。毎日の通勤や近所のお出かけで身近な坂を見直してみませんか?