健康と若々しさを両立したいあなたへ
|プチ筋トレのすすめ|
カバー特集
posted by 日経REVIVE
谷本道哉さんの「 筋トレ 」GOOD LIFE
健康と若々しさを両立したいあなたへ
|プチ筋トレのすすめ|
posted by 日経REVIVE
2025年6月29日

人生を元気に全うするため
プチ筋トレを毎日の習慣に
いつまでも若々しく、元気に過ごしたい。
多くの新シニア世代の方が思うことでしょう。
健康リスクヘッジも理想の若々しさも“プチ筋トレ”がかなえてくれます。
運動生理学者でプチ筋トレ推奨者でもある谷本道哉さんにプチ筋トレの意義を伺いました。
NAVIGATOR
谷本道哉
たにもと・みちや1972年、静岡県生まれの運動生理学者。 社会人として働きながら勉強し、大学院に合格。東京大学大学院総合文化研究科の石井直方研究室で学び、修士と博士課程を修了。現在は順天堂大学スポーツ健康科学部教授。NHK「みんなで筋肉体操」の筋肉指導他、執筆などで活躍。
撮影/オノデラカズオ 取材・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)
プチ筋トレは
健康も若々しさもつくります
健康意識や美意識の高まりを受け、長らく続く筋トレブーム。コロナ禍を機にさらに盛り上がりを見せ、市民権を得るまでに。ただ、実際のところ正しい知識を持ち、正しい方法でできているのかと疑問を持つ人も少なくないのが実情です。そもそも筋トレは必要なのでしょうか?
「人生100年時代といわれる今、筋トレは必要ですし、習慣にしてほしいと思っています。特にアラウンド還暦以上の方々に! その一番の理由は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)予防のためです。ロコモとは、運動器の障害により、立ったり歩いたりが難しくなっている状態のことを指します。つまり自力で移動ができなくなってしまうのです。それを防ぐためには筋トレが必要。〝歩き続けていればずっと歩けるだろう〞と思いがちですが、そう簡単にはいきません。歩くだけなら多かれ少なかれ皆さんしています。それでも、車椅子の高齢者はたくさんいらっしゃいますよね。やはり筋トレでしっかり鍛える必要があるわけです。
筋肉は遅筋と速筋に分けられます。
持久力のある遅筋は使わないと落ちやすい筋肉ですが加齢による変化は受けにくい。対して速筋は使わなくても落ちにくいのですが、加齢変化に弱く、年とともにどんどん落ちていく。ウオーキングなどの低強度の運動は遅筋の維持には効果がありますが、速筋をほとんど使わないので、速筋には効きません。だから筋トレが必要になるんです」
理想の自分と健康をつくる
プチ筋トレのすすめ
厚生労働省が2023年度版の運動ガイドに初めて筋トレを入れましたが、それは筋力向上の他にも健康上のメリットがあるから。
「その背景には、筋トレをすることで様々な良い影響があることが分かったからです。心血管疾患、がん、糖尿病および死亡率の低下に筋トレは効果があることが大規模な疫学研究から確認されています。筋トレによって肌の真皮の厚みが増した。つまり美肌効果が得られたという報告もあります。若々しさの維持にも一役買うといえそうですね」
筋トレというと重いバーベルと格闘するイメージがありますが……。
「筋トレ=重いバーベルを持ち上げる!だけではありません。やたらと大きな負荷をかける筋トレは、怪我だけでなく様々な疾患リスクを高める可能性もあります。そこでおすすめなのが自重でできる〝プチ筋トレ〞なのです」
筋トレがこれからの健康と美に必要なことは分かりましたが、プチ筋トレの魅力とは一体なんでしょうか?
「筋トレにも色々な方法がありますが、一つ一つ大きな動作で行うこと、上がらなくなるくらいまで反復を繰り返すこと、を重視しましょう。これを守れば自重を用いて短時間で行うプチ筋トレでも筋肉はしっかりつけられます。この十数年で筋トレがだいぶ浸透してきた印象がありますが、まだ筋トレという言葉のハードそうなイメージで取り組めていない方が多いのかなと想像します。筋トレは部位別で行う局所の運動なので汗だくにはなりません。
プチ筋トレなら道具も要らないので、着替えずにその場ですぐにできます。
だから続けやすい。筋肉をつけるには続けることが大切ですからね。ちなみにプチ筋トレでもムキムキにすることは可能ですよ。僕は小学生の頃から筋トレをしていますが、この十年は高重量の筋トレはしていません。時間も1日20分程度です。あとはやっぱり食事も大切です。新シニア世代は特に、タンパク質だけでなく糖質もある程度しっかり摂って、筋肉が育つ体のベースづくりにも意識を向けてみてください」
やらない理由が見つからないほどにメリットしかないプチ筋トレ。健康寿命を1日でも延ばすためにも今日から鍛えてみませんか?
元気な足腰づくりはもちろん
プチ筋トレはムキムキにもなれますよ
「自分の体重負荷でも、大きな動作で丁寧に行えば筋肉を鍛えるのに十分な負荷になります。怪我のリスク回避ができるのがいい点。もう上がらない、というくらいまで頑張ってみてください」
かっこいい体は
健康な体
「人間の体は食べたものでできていますから、プチ筋トレと併せて、何を食べるかもとても大切です。タンパク質は必須ですが、主要なエネルギー源の糖質も大事。お米は麦を混ぜるとよいですよ」
- いつでもどこでも
すぐできるプチ筋トレ3
可動域を広げ
動ける脚をつくる脚上げ
座って行う腹筋運動。太もも前面の大腿直筋と、下腹深部の腸腰筋も鍛えられる。椅子に座り座面の後ろを掴み脚を伸ばす。
脚を伸ばしたまま脚をできる限り高く上げて下ろす。回数は上がらなくなるくらいまで行う。
EASY
VERSION膝を深く曲げるほど負荷が下がる。ただし、できるだけしっかり高く上げきること。
いつまでも歩ける
脚をつくるスクワット
歩き続けるために土台となる下半身全体を効率よく鍛えられるのがスクワット。肩幅より少し広めに脚を広げて立つ。
背筋を伸ばし、お尻を後ろに突き出しながらできるだけ深くしゃがむ。
NG!上体をまっすぐ立ててしゃがむのはNG。前傾してお尻を引けば膝が下がる。
背筋ピン!
若々しさをつくる腕立て伏せ
肩幅強の手幅で机に手をつき、体をまっすぐに構える。
足を大きく引くほど、負荷が強くなる。
机に胸がつくまで深く下ろして上げる。脇は閉じずに少し開いて行うと上半身全体に効く。
EASY
VERSION片足を前に出すと負荷が軽くなる。この場合も胸がつくまで下ろすこと。
POINT谷本流プチ筋トレで
気をつけたい2つのポイント
息を止めない
息を止めると血圧が上がり、血管への負担が過剰になります。呼吸を止めず、吐きながら上げましょう。
限界までやる
筋肉の発達におけるベストな回数は”できなくなるまで”
10~20回を目安に上がらなくなるまでやりましょう!
What's GOOD LIFE for you?
ストレスフリー
- 「昔俳優の中井貴一さんがストレスってなんですか?っておっしゃっていて。まさにこれぞグッドライフだと思います。自分も周りもストレスって何?そう言える社会が理想。“一億総貴一化”とかいいなあ」
この記事は、2025年6月29日発行の日経REVIVE7月号に掲載された内容です。
取材裏話
7月号「筋トレ」谷本道哉さん
筋肉の中にも老化と共に衰えやすい筋肉とそうでない筋肉がある、時代によってトレーニングも進化している、血液の役割は?、疫学研究の話、プロテインはどのタイミングで取る?などなど、筋肉だけでなく健康にまつわる様々なお話をお聞きし、とても充実した取材になりました。
筋トレというとハードルが高く感じます。
今回「プチ筋トレ」について教えていただきましたが、プチと言っても初心者向けということではなく、どんな人でも日常に取り入れた方がいい、また着替えなくていいから続けやすい、取り入れやすいトレーニングという意味があるそうです。
やりすぎは体に負担がかかるかも…場所がないから今は無理かも…着替えるのが面倒だな…などと、やらない言い訳を考えるのはやめて、これから歳を重ねても歩き続けられる体でいられるよう、日常的に取り入れて行きたいなと思いました。
今回ご紹介いただいているプチ筋トレ、一緒に始めてみませんか?皆さんもぜひ!
記事内で紹介している場所