11 2024

楽しみ方は自在! 日本酒、新時代

|日本の伝統文化、日本酒|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

宇賀なつみさんの「日本酒」GOOD LIFE
楽しみ方は自在! 日本酒、新時代
|日本の伝統文化、日本酒|

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2024年10月27日

脈々と続く文化を味わう
日本酒の魅力、今ふたたび

気温も下がり、夜は冷え込む晩秋の候となりました。
新酒も出始めるこの時期は日本酒を楽しむ好機です。
歴史の古い日本酒ですが、日本酒そのものも、飲み方も日々進化しています。
そんな新時代の日本酒の楽しみ方や魅力を深掘りすべく、宇賀なつみさんと日本酒バーへ出かけました。

NAVIGATOR

宇賀なつみ

うが・なつみ1986年、東京都生まれのフリーアナウンサー。大学を卒業後、2009年にテレビ朝日にアナウンサーとして入社。報道番組を中心にキャスターを務める。入社から10年の節目となる2019年に退社。現在はフリーランスで情報番組のキャスターをはじめ、ラジオ、執筆活動など幅広く活躍。大の酒豪と旅好きで知られる。2023年には初のエッセー「じゆうがたび」(幻冬舎)を出版した。

撮影/nae.jay 編集・文/澤村 恵 ヘアメイク/秋山 瞳 スタイリング/近藤和貴子
アートディレクション/本多康規(Cumu)

多様性の時代
お酒も人生も
もっと自由に楽しみたい

お酒全般をたしなむ宇賀さんですが、年々日本酒の奥深い味わいに魅了されているとか。日本酒のおいしさに開眼したのは社会人2年目の頃でした。

「それまでも日本酒は飲んでいたのですが、本質的な魅力に気付かないまま、ただ飲んでいたところもあって。とあるタイミングで福井県の黒龍 大吟醸を飲んだ時に衝撃を受けたんです。日本酒ってこんなにおいしいの!?と。
味わい深さ、香り、華やかさ、何もかものレベルが違ったんです。黒龍との出合いをきっかけに、日本酒って大切に味わいながら飲むものなのだと気付き、そこから蔵元や、産地、銘柄などを気にするようになり、どんどん日本酒の魅力にはまっていきました」

日本酒をたしなむシーンも年々変わってきているとか。

「やはり日本古来のお酒であり米とこうじで造られていることもあって、和食との相性はいいですよね。なので和食を頂く時や、お正月やお花見など、日本的な遊びのシーンで頂くことが多いですね。あとは、私にとってライフワークである旅と日本酒はセットなんです。仕事でもプライベートでも地方に行く機会はとても多いのですが、酒蔵を巡ることもありますし、その土地のお酒(地酒)は必ず頂くようにしています。お米や水が違うとお酒の味わいも変わってくるので、その土地の個性や歴史までをも感じることができて、日本酒の奥深さに触れられるんです」

宇賀さんにとってずばり、日本酒の魅力って何でしょうか?

「日本に昔からあるもので、各土地で脈々と受け継がれてきた文化と味がある。先祖代々飲んできたお酒が日本酒だよなと。だから私たち日本人のDNAにも組み込まれていると思うんです。すっと心と体になじむ感じは日本酒ならではの深みだと思います」


YATAでは、それぞれを一番おいしく味わえるグラスで提供しています。ワイン同様、色味を見て、香りを堪能してからじっくり味わうのが粋だそう。「日本酒を熟知したプロにおすすめしてもらうのもいいですよね。今って本当に多種多様だから好みの日本酒にきっと出合えると思います」と宇賀さん。


「日本酒って米と水とこうじでできていてとてもシンプルですよね。私たちが普段主食としているものからできている。これって体にもいいと思うんです。飲みすぎなければ、ですけれど(笑)」

日本酒も人生の選択も新時代へ
責任ある自由を楽しみたい

今回伺った純米酒専門「YATA」の店主西明さんも、宇賀さんも口をそろえて言っていたのが〝日本酒のレベルの高さと多様性〞について。

「ここ数年、日本酒も本当に多種多様になってきているのを感じますし、レベルもどんどん上がっています。度数の低いもの、華やか系、ガツンと系などジャンルの幅も広がっていて、自由度が増していて楽しいなと思います。
日本酒って山側の蔵元だと料理に合わせて強め、海側だと魚介の味を損なわないようにさっぱりクリア系ともいわれていますが、先日千葉県の勝浦に行った時に頂いた腰古井という地酒は、しっかり強めの味わいで、お魚にもよく合いました。これぞ地酒の魅力というか、個性だなと思って。固定観念に縛られすぎずにもっと自由でいいんだよな、なんて思った地酒との出合いでした。お酒そのものもそうですが、私たちの楽しみ方も自由でいいんだと学んだ出来事も経験しました。金沢の歴史ある酒蔵の社長さんが日本酒をソーダ割りで飲んでらして。それまで日本酒は絶対ストレートで、と思い込んでいたんですが、私も飲んでみたらこれがまたとてもおいしくて。さっぱりしてるんだけど味わいもあって、どんな料理にも合うんですよ。その社長さんも自分の好きな飲み方を楽しんでほしいっておっしゃっていて。新しい日本酒の扉を開けた気がしたんです」

もっと自由に日本酒を楽しみたいという姿勢は、宇賀さんの生き方そのものにも通じるものがあるようです。

「これからの人生やキャリアプランは未定です。10年後に自分が何をしているのかは分かりませんし、決めるつもりもありません。予定は未定の方が楽しいじゃないですか。自己責任のもと、自由でありたいんです。フリーランスになって5年がたちますが、今が一番楽しいです。これからも自分の人生を自由にデザインし、生きていきたいです。大好きな日本酒と旅と共に」

先祖代々飲んできたお酒。
日本酒のおいしさはDNAに刻まれている


「旅と日本酒は私の中ではセットなんです。酒蔵を巡ることもあります。地酒ってその土地の個性が出ていて本当に面白いんですよね。受け継がれる文化の中に自由を感じられて」


「日本酒の味わいが生きるおつまみが好きです。こちらのコンビーフは絶品でした! お肉も塊より、細かい方が口の中で日本酒と混ざり合いうまみが調和してベストマッチ。肉の脂がいい具合に広がるようにかんで出してくださいました。しみじみおいしいと日本酒がどんどん進みます」と宇賀さん。

宇賀さんが頂いたのは……

お酒銘柄
右から順にお酒銘柄 酒名/都道府県

作 IMPRESSION M/三重県
今錦 中川村のたま子/長野県
伝心「雪」/福井県
根来桜/和歌山県


秋深まるこの時期におすすめの4本をご提案いただきました。「作は伊勢志摩サミットなどでも提供された銘柄で微かな発泡と華やかな香りが特徴です。今錦はしっかり日本酒の味わいを感じられつつもまだ若々しさが残るバランスが◎。伝心は口当たりが非常に滑らかながらすっきりした後味。かんにするとよりうまみがまろやかに広がる根来桜。食事との相性も良い4銘柄です」(西明さん)

What's GOOD LIFE for you?
自由に生きること

  • 「人は生まれながらにして自由なはずなのに、それを実感できることってなかなかないなと感じていて。でも自由になることこそ大人になることだし、いい人生だと思うんです」

この記事は、2024年10月27日発行の日経REVIVE11月号に掲載された内容です。

取材裏話

11月号「日本酒」宇賀なつみさん

冷酒がおいしい季節から熱燗がそろそろ恋しくなる季節になってきました。宇賀さんは旅と日本酒はセット、とおっしゃっていてましたが、さらにご当地で焼いたおちょこ、ぐい吞みで味わう、を加えても風情がありそうです。訪問したYATAさんは新宿にあり、3ページ目で宇賀さんがたたずんでいる窓からは都心へと車が往来する新宿通りが見渡せます。また客さまも実はお一人様女性も多いとか。日本酒の国内消費量は1973年以降減っていますが、量より質で楽しみたいですね。