12 2024

いつの時代も 大人が憧れる街

|銀座|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

なぎら健壱さんの「銀座、古地図散歩」GOOD LIFE
いつの時代も 大人が憧れる街
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2024年11月24日

昔の街並みに思いをはせる
古地図で巡る銀座散歩のすすめ

銀座出身で下町、お散歩愛好家で知られるなぎら健壱さんに銀座の街の新たな楽しみ方を伺いました。
一日2万歩近く歩く日もあるというなぎらさんのお楽しみは古地図で確認すること。この時空を超えた答え合わせが一層面白いのが銀座の街だとか。
ロマンの詰まった銀座の街歩きへいざ!

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なぎら健壱

なぎら・けんいち1952年、東京・銀座生まれのシンガーソングライター、タレント。72 年アルバム「万年床」をリリースしデビュー。ライブ活動のほか、タレントとして数々のテレビ番組に出演。俳優業や執筆業も手がけ幅広く活躍。カメラ、散歩、飲み歩き、自転車、絵画、落語など、多趣味でも知られる。近著に『アロハで酒場へ なぎら式70歳から始める「年不相応」生活のススメ』(双葉社)がある。

撮影/オノデラカズオ 取材・文/澤村恵 アートディレクション/本多康規(
Cumu)

街の奥行きを感じられる古地図って面白い

好きが高じて多くの街歩き本を出版しているなぎら健壱さん。下町が大好きだというなぎらさんですが、中でも銀座の街は別格だといいます。

「僕がなぜ長いこと街歩きしているかってね、ただただその街が好きなんです。中でも銀座は他の街とは比べられないほど別格な存在です。きっかけは子どもの頃に見た景色。僕は銀座で生まれて小学校3年生まで東銀座で暮らしていました。銀座といっても4丁目付近のきらびやかな繁華街とは違う場所。ある日、親に連れられて4丁目に出かけたことがあって。夜だったんだけど、4丁目の交差点に立って新橋方面の街並みを見た時にイルミネーションがもう、えも言われぬ美しさでね。今でもその時の光景が頭の中に残っているんだけど、この時に漠然とした憧れが生まれたんです。大人になったら来てやるぞ! みたいなね。それは、いい店で飲むぞ、遊ぶぞ、とかそういうことじゃなくて。大人になったらこのキラキラとした光の中に入ってみたいっていう感じだったのかな。幼い僕にとって銀座は大人の象徴でした」

その後、銀座散歩を楽しむようになったなぎらさんですが、ちょっとしたルールがあるそうです。

「ルールなんて大層なものじゃないんだけどね。繁華街ってどこもそうなのだけど、昼と夜で全く違う顔をしているでしょう? 昼間って裏が見えちゃう気がしてね。裏を見ちゃうとがっかりしちゃうじゃないですか。僕にとって銀座の街は、汚したくない大切な憧れの場所。だから銀座の街、昼間はあんまり歩かないかな。夕方から夜にかけて、街に明かりがともるぐらいの時間帯が好きです。あとはね、銀座は昔から変わらない路地が今も残っていますよね。この路地裏がまた楽しいんですよ。僕、子どもの頃から迷子になるのが好きでね(笑)。自分がどこにいるのか分からないみたいな。そういうどこか夢見心地のような感覚が銀座の夜の路地裏にはあって楽しいんです。
幼い頃から憧れていた銀座のきらびやかな光の中に自分を置いている感覚なのかもしれないな。うまく言葉にできないんだけど、伝わりますか?」

銀座の路地裏は迷子に
なれる感じが楽しいんだよ

銀座5~8丁目が
やっぱり面白い!


「僕は、銀座には銀座の歩き方、見方というのがあると思っていて。それらを体現して紡いできたから唯一無二の品格が銀座にはあると思っています。だから俗っぽくしないでほしいな」

昔があるから今がある
街の生きざまを知れる古地図

街歩きが好きななぎらさんは、自然と古地図を手に取るように。

「重ね地図っていうのかな? 今と昔の地図を重ねてこんなに違う! とか、逆に区画変わらないんだ! とか、そういうのを見て面白いと思ったのが最初です。古地図っていっても江戸時代のものは古過ぎて、なんじゃこりゃってなるけど、明治以降、戦前ぐらいまでの古地図が好きですね。でも、古地図を見ながら歩くことはないんですよ。
じゃあいつ見るのって話なんだけど、散歩から帰ってきてから答え合わせ的な感じで見るのが好きですね。例えば、その昔、ライオンとタイガーの対決と世間をにぎわせた銀座カフェ戦争がありましたが、ライオンがあった場所は今こうなっているのか、なんて思ったりして。こんな感じで昔は〇〇だったのが、今は△△になっているんだ、ほうほうなるほどね、と見るのが楽しいんです。古地図は、面白いからぜひ手に取ってみてほしいね。見慣れた街、歩き尽くした街に一つ奥行きが増すっていうのかな。銀座はもちろん、どの街も昔があるから今があるわけで、古地図を通してその街の発展を知れるのがいいよね」

散歩を楽しむ達人のなぎらさんに、今おすすめの街を3つ聞いてみました。

「まずは上野。恩賜公園や博物館などアカデミックな街でありながら、その横にアメ横という雑然としたエリアがあってそのギャップが面白い。あとは向島。僕が大好きな下町の風情が残っていて、この街こそ迷子になりたい街(笑)。そして銀座は外せません。
古地図を見るのも楽しいし、いつ来てもなるほどね! が多い街だし、ぜいたくな街だと思う。やっぱり好きです」


「どの街にも昔があるから今があるわけだけど、古地図はその生きてきた証しというか、発展の軌跡というか。その時代の街の息吹を感じられるから面白いんだろうな」

明治以降の古地図、面白いよ。
なるほど~が詰まってる

What's GOOD LIFE for you?
自分ってかわいいな

  • 「自分を嫌いになったら、人生面白くないでしょう?生き方を含めて、何をやっていても“自分ってやっぱりかわいいじゃない”って思うことが大切なんじゃないかと思うんです」

この記事は、2024年11月24日発行の日経REVIVE12月号に掲載された内容です。

取材裏話

12月号「銀座」なぎら健壱さん

”憧れの街は、外から眺めるのがちょうどいい。”
確かに近くにいれば良い面も嫌な面も見えてしまうものですが、だから嫌いになるかといわれると少し違う。より身近に、現実に近くなるということかなと思いました。憧れは手が届かないから憧れ。適度な距離感で付き合うのが推し活を長続きさせるコツなのかもしれません。
いやいや、これ、街の話でした。
街全体を見るのか、その街を行きかう人を見るのか、道や川など街をつくるパーツを見るのか、ひとことで街歩きといっても視点はさまざま。街の見方についてのお話をお聞きしていると、近くて遠い、自分なりの憧れの街を見つけてみたくなります。
みなさんもどうでしょうか?
あえて地図を広げず、本能のまま、ふらふらと自由きままに歩いてみる。もしかすると、また違った風景が見えてくるかもしれませんね。そんな散歩も楽しそうです。