8 2025

新しい場所で自分らしく生きる

|セカンドライフ・山そば移住|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

林マヤさんの「移住」GOOD LIFE
新しい場所で自分らしく生きる
|セカンドライフ・山そば移住|

posted by 日経REVIVE

2025年7月27日

移住は再スタートの出発点
人生にもっとワクワクを!

第二の人生をどう生きるか──
そんな問いを自分に投げかけることはありませんか?
都会の便利さや自身の肩書から少し離れてもっと静かに、自分らしく暮らしたい。
移住という選択は今を生きる新シニア世代をより自由に、より豊かにするものかもしれません。

NAVIGATOR

林マヤ

はやし・まや1958年長野県生まれのモデル、タレント。1980年代にモデルとしてデビュー。パリコレほか、多くのファッションショーで活躍。1990年以降は歌手やタレントとして活動の幅を広げる。 2008年から夫婦で茨城県に移住。都会と田舎を行き来する芸〝農〞人として活動中!

撮影/オノデラカズオ 編集・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

移住したら
まだ見ぬ自分に出会えました

トップモデルとして世界を舞台に活躍し、その後タレント、歌手として華やかな世界に身を置いていた林マヤさん。2008年、50歳の時に夫婦で茨城県に移住を決意しました。

「移住前は大都会の真ん中に住んでいて、それこそ毎晩パーティー三昧で、大層不摂生な生活をしていたんです。当然体を壊しまして、アルコール依存症にもなり、食べられなくなり拒食症も患いました。体が悲鳴を上げるのと正比例するように精神的にもどんどん追い詰められていきました。ダーリンともけんかが絶えなかったし、常に何かに追いかけられているような、いっぱいいっぱいな状態。そんな時ダーリンが、オーガニックで見た目もかわいい野菜なら食べられるかもしれないと、茨城県のつくば市まで通って野菜を作ってくれるようになったんです。ほら、かわいいだろう?って。
実際食べてみたらとてもおいしくて。
週末に収穫して持って帰ってきてくれる中でそのお野菜たちを食べていたらだんだん心も体も元気になったんです。ただダーリンは仕事をしながらの通い農夫だったのでもう大変で。でも私はもっと食べたいし、育ててみたいという思いも芽生えて。心身共に元気になってもう一度スタートラインに立てたのを実感できたので、50歳を機に、思い切って移住することにしたのです。新しい人生が始まる感じ」

たくさんの選択肢がある中で、茨城県を選んだ理由は何ですか?

「自分たちでオーガニック野菜を育てながら、半自給自足的に暮らすのが目的でした。ダーリンがつくば市に通い農夫をしていて土の感じとか分かっていたし、つくばエクスプレスに乗っちゃえば30分程度で東京に行けるという絶妙な〝とかいなか〞感がいいなと。守谷には降りたことがなかったんですが、とりあえず行ってみるかと電車に乗り、守谷の街を歩いてビビビッときて即決。庭に100平米の畑がある家賃6万5000円の借家に住むことに決めました。あれから17年たち引っ越しも重ねて現在3軒目。守谷って移住者も多くて住みやすい。自然も豊かでいい所だな〜、と日々思っています」


不便さの中に思いもよらぬ
密度の濃い瞬間がたくさん。
お金では買えないギフトです


「主にダーリンがお世話してくれているんだけど常時20 種類ぐらいのレアベジを育てています。どう育つかはお天道様次第。だからこそ自然の偉大さも感じるし、その中で一生懸命育ってくれた野菜たちに愛があふれてしまうのです」

大人こそ移住を!
マヤさん、絶賛アオハル中

50歳で移住を決意したマヤさん。メリットもデメリットもありますよね?

「メリットしかない!移住して良かったなと思うのは、いろんな新しい自分に出会えていること。東京にいた時は、カッコいい林マヤでいなくちゃって自分を繕ったり大きく見せたりしていたんだけど、こっちに来てからは、大なり小なり毎日いろんなことが起こるわけですよ。失敗もするしうまくいかないこともある。でも、今まで知らなかった新しい自分がそこにいてね。畑に行って玄米炊いて地味なご飯を食べる毎日だけど、そんな自分がすごく面白いって感じられるようになりました。高級な店やレストランはないし、バスは1時間に2本だし、不便なことはたくさん。でも、その不便さが楽しくて面白いんです。東京にいた時は何でもすぐ手の届くところにあってあふれ過ぎていたんだなって。今は何があるかな?って探せるんですよ。これがワクワクの種なのかも。だからね、私今、絶賛アオハル中なの!それに、夫婦仲がめちゃくちゃ良くなったので新シニア世代の方たちにこそおすすめしたい。我が家の場合は野菜を育てるという共通の目的があったから、会話も増えるし、互いへの感謝の気持ちもより一層強くなりました。だから、単に移住するのではなく、目的を持つことも大切かもしれません」

現在67歳のマヤさんにこれからの理想の生き方を聞きました。

「心身共に健康で周りの人、自然、野菜に感謝して前に進んでいきたい。そして、かわいいおばあちゃんを目指します!あぁ、楽しみっ」


「都会+田舎で”とかいなか”って言っているんですが、守谷市は双方の”過ぎない”バランス感がとても心地よいんです。移住の前後でギャップを感じないためにも”とかいなか”への移住がおすすめです」


見た目と音色のギャップにハマったという楽器、ハンドパンも移住後にのめり込んだことの一つだとか。「自然と共鳴するようなすてきな音色なの。YouTubeを先生に一音ずつ覚えました。畑で奏でて愛すべき野菜たちに聞かせることも」


「十人十色という言葉がありますが、私一人十色だと思っていて。移住をしてたくさんの自分を知り、自分を一色に決められないなって思ったんです。色を探すのも楽しい。どの色もいとおしいんです」


「自宅の周りにお店はないので基本3食自炊です。自分で育てた野菜を中心に。仕事を終えて自家製野菜で作ったおつまみとシャンパンを飲むのが最高に幸せです」。移住してから野菜愛がさらに加速し、野菜アイテムが増えているとか。

What's GOOD LIFE for you?
凸凹の自分を愛する

  • 「私の人生は、真っすぐの道じゃなくていろいろあって凸凹です。だけど今はその凸凹が人生を彩り豊かにしてくれていると思っています。凸凹の道を進んだ先に天国がある。そう信じてる!」

この記事は、2025年7月27日発行の日経REVIVE8月号に掲載された内容です。

取材裏話

8月号「移住」林マヤさん

今月号ではセカンドライフの一つの選択として移住を、リタイア後は生まれ育った場所に帰る、という方も周りを見渡すと多いです。20代、30代は気づかなかった故郷の良さが見えてくるものです。移住先で日本の歴史・文化を深掘りする、趣味に没頭する、2拠点生活、別荘、海外への移住など住まいの選択肢はさまざま。「新しい人生スタート」までの思い切りは無いけれど「住んでみたい」気持ちに正直にお試し的な移住で楽しむことも一興です。