1 2024

お酒を飲む人も 飲まない人も

|大人のBAR|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

バーテンダー大竹学さんの「大人のBAR」GOOD LIFE
お酒を飲む人も飲まない人も
|大人のBAR|

posted by 日経REVIVE

2023年12月10日

楽しく豊かな時間を過ごしましょう
今こそ、オーセンティックバーへ

時間に余裕が出てきた今こそ、格式あるバーでじっくりとグラスを傾けてみませんか?
令和時代のバーの楽しみ方を聞くべく、歴史と品格を兼ね備えたパレスホテル東京のメインバー「ロイヤル バー」でバーテンダーを務める大竹学さんを訪ねました。

NAVIGATOR

大竹 学

おおたけ・まなぶ1975年、新潟県生まれのバーテンダー。1994年からバーテンダーを志し、ホテル業界を中心にバー業務に携わりその腕を磨く。2011年、1万人以上のバーテンダーが競う世界大会「ディアジオ ワールドクラス 2011 」で優勝。2012年からパレスホテル東京のメインバー「ロイヤル バー」に勤務。現在はマネジャーとしてチームをけん引する。

撮影/河合俊也 編集・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

お酒や空間に没入できる
贅沢時間

バーと一口に言ってもそのジャンルは幅広く様々な選択肢がありますが、新シニア世代になった今は、オーセンティックなバーでスマートにお酒を楽しみたいですよね。とはいえ、若干ハードルが高いのも否めません。そこでバーテンダーの大竹さんに大人のバーの作法を伺いました。

「バーはお酒や空間を楽しんでいただく場ですので、飲み方などに細かな作法はありませんが、ジャケットにパンツ、襟付きのお召し物でお越しいただくのがよいかもしれません。非日常空間をファッションも含めて楽しんでいただけたらと思います」

背筋がすっと伸びるような、心地よい緊張感がオーセンティックバーの魅力でもあります。

「非日常空間でもあるバーでのおすすめの楽しみ方が2つ。一つはお好きなカクテルやお酒をじっくり味わいながらご自分の世界観を楽しみ没入すること。もう一つは早い時間帯にお越しいただき食前酒として1、2杯楽しまれることです。早い時間帯ですと、バーの空気もピリッとしていて気持ちがいいですし、バーテンダーとの会話も楽しめます。比較的お店もゆったりしているので、バー初心者の方も楽しみやすいのではないでしょうか」

お酒やカクテルは何を頼めばいいのでしょうか。おすすめはありますか?

「新シニア世代の方であればお酒は飲み慣れていらっしゃるでしょうから、お好きなものをお飲みになるのがいいかと思いますが、あえて申し上げるとするならば、ロイヤル バーといえばマティーニ、のようにバーにはそれぞれのシグネチャーカクテルと呼ばれるものがあるので、それらを楽しんだり、旬の果物を使ったカクテルを出しているバーも多いので、カクテルで季節を楽しむのもおすすめです。私個人としてのおすすめは、日本のバー文化を作ってこられたレジェンドたちのマティーニ。マティーニってシンプルながらとても強いお酒。だからこそバーテンダーそれぞれの生きざまや味わいがダイレクトに伝わってくるんです。ロイヤル バー初代チーフバーテンダーの今井清、毛利バーの毛利隆雄さん、テンダーの上田和男さん。彼らの年輪を感じさせるマティーニのレシピは一味も二味も違うはずです。新シニア世代の方々こそ、そのマティーニの深みや味わいを楽しめるのではないでしょうか」

緊張なさらずに、この空間で
ご自身の時間を楽しんでいただきたいです


  • 「シンプルが故に、バーテンダーの生きざまが見えるカクテルだと思うんです。お酒を飲み慣れている新シニア世代の方は、マティーニを飲み比べるというのも面白いかもしれません」

ロイヤル バーの自信作
季節限定フルーツのカクテル

  • 右・ストロベリーマルガリータ
    テキーラに冬の時期ならではのフレッシュな苺を合わせたマルガリータは酸味甘味のバランスが絶妙。女性だけでなく男性人気も。2600円(税込み)

    左・柚子ウイスキーサワー
    ワールドウイスキーと柚子を組み合わせた毎冬定番の人気カクテル。グラスに口を近づけるたびに柚子の香りを堪能できる。2600円(税込み)

技術よりも人間力が試される
おいしいのその先へ

バーテンダー歴30年になる大竹さん。

「19歳でこの世界に入り、気付いたら30年の時がたっていました。良いこと、悪いこと、うれしいこと、つらいことなど、たくさんの思い出がありますが、今のバーテンダー大竹学を作ってくれたのはお客様です。まだ駆け出しの頃、お客様にお酒をお出ししたら「君じゃない」と言われたことがありました。「これは飲めない」と言われたこともあってそれはそれは悔しかった。もちろん技術的にも至りませんでしたが、それ以上にお客様との信頼関係ができていなかったんです。一人前になるには10年はかかる世界。当時の僕は毎月お給料が出たら5千円を握りしめて色々なバーでカクテルを飲み、バーテンダーの仕事ぶりを観察して自分の肥やしにしていました」

技術に人間力も試される。バーテンダーの厳しい世界がうかがえます。

「自分が年齢を重ねてより一層感じますが、バーテンダーはお客様とお酒を介して勝負をしているようなところがあります。自分の全てがお酒に投影されてしまう。だから一杯入魂ではないですが、気持ちを整えて精いっぱいお作りしています。そして今、自分がすべきことは後輩の育成だと考えています。おもてなしの心を第一にお客様から愛されるバーテンダーを育てていきたいです」


「オープンしてから17時ぐらいまでの早い時間帯はバーの空気もクリアで凛とした雰囲気の中でお酒をゆっくり楽しむことができます。1、2杯楽しまれてから食事にお出かけになるのもおすすめです」

  • 「お酒をお出しするのは、お客様との一対一の勝負のようなもの。お好みを会話からくみ取りつつ、お客様が求められているものにフィットするような一杯を気持ちを込めてお作りしています」

What's GOOD LIFE for you?
いい仲間といいお酒

  • 「僕はコミュニケーションツールとして、自分の楽しみとして、また仕事としてお酒を選びました。人とのつながりの中においしいお酒がある。いい仲間といいお酒。それこそが僕にとってのグッドライフだと思います」

この記事は、2023年12月10日発行の日経REVIVE1月号に掲載された内容です。