2 2024

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posted by 日経REVIVE

ピーター・バラカンさんの「レコード」GOOD LIFE
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2024年1月28日

レコードを通じて再発見
音楽って素晴らしい!

レコード、CD、デジタルなど、音楽を聴く選択肢が増えた今、あえてレコードで音を楽しみたい。
そんな新シニア世代の高まる“アナログ回帰欲”に応えるべく、ピーター・バラカンさんにレコードの魅力や楽しみ方を伺いました。

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ピーター・バラカン

1951年、英国ロンドン生まれのテレビ・ラジオ音楽番組のパーソナリティー。音楽の素晴らしさや魅力を伝えるべく、各番組や媒体を通し音楽を紹介し続けている。音楽・ラジオを通じて諸外国と日本の架け橋となった功績が認められ、2021年度NHK放送文化賞を受賞。現在もラジオ他音楽イベントを監修し精力的に活動している。

撮影/長野陽一 編集・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

音を楽しみ、
聴き入るのにちょうどいい

1951年に英国ロンドンで生まれたピーターさん。当時はまだレコードプレーヤーが当たり前にどの家庭にもあるわけではなかったといいます。

「僕と音楽の最初の出合いはラジオでした。真空管のラジオがあってそこから流れてくる音楽を聴いていました。
自分の家に初めてレコードプレーヤーが来たのは9歳の時。すでに音楽は大好きでしたから、いろんなレコードが欲しいけれどお小遣いもそんなにもらえないからシングル盤しか買えなくて。初めて自分で買ったレコードは、当時イギリスで一番人気だったシャドウズのEP盤。10歳の僕はうれしくてたくさん聴きました。62年も前ですがはっきりと覚えています」

初めて買ったレコードは62年の時を経た現在も聞くことができるそう。

「レコードは扱い方次第です。僕にとってレコードは出合った時から貴重で宝物。だから丁寧に扱って大切にしてきました」

時代の変遷とともに、レコード、CD、デジタルと音楽を聴くツールは増えましたが、ピーターさんが考えるレコードの魅力とは何でしょう。

「僕自身、実は何で音楽を聴くかはそこまでこだわってはいないんです。普通音楽を聴き比べることってしないと思うんですけど、僕は仕事柄レコード、CD、デジタルそれぞれで同じ音源を聴くことがあるんですね。そうすると軍配が上がるのはやっぱりレコードなんですよね。自分でも理由がよく分からないんだけど、一つは世代的なものなのだと思っています。小さい頃から聴いてきた音として自分の深いところに入り込んでいて、もはやDNAの一部になっているんだとも思うんです。あとは物理的な話になるんだけど、CDやデジタルって嫌いな曲だったら飛ばせるし、逆に好きな曲はリピートできる。でも、レコードはそうはいかないですよね。片面およそ20分。一度針を落としたら気に入らない曲があったとしてもいちいち針を上げてまた落としてと面倒。だからその面が終わるまでは聴こうという気持ちになるんだけど、この20分というのが集中できていいと思うんです。つまりは音楽ときちんと向き合える。それがレコードの魅力なのだと思います」

レコードは昔から聴いてきた〝音〞
もはやDNAの一部です


「僕にとってレコードは宝物。大切に、丁寧に扱います。レコードの縁を持つ、針は定期的に交換する、クリーナーで掃除する、と基本的なケアですが、これらで何十年たっても聞くことができます」

月に1度、「3313アナログ天国」で音楽イベントを開催しているピーターさん。「テーマを決めて選曲し、それぞれの音楽の解説をしながらいいオーディオで聴くという内容です。毎回和気あいあいとしたいい雰囲気の中で、皆さんと音楽をシェアできるのがとてもうれしいし、楽しいんです。ぜひ遊びに来てほしいですね」

生涯現役宣言!
音楽の魅力を伝え続けたい

CDやデジタルにはなく、レコードならではの面白い現象があるとピーターさん。それはオーディオとの相性。

「とあるオーディオマニアの方のお宅へお邪魔した時のこと。その家には音楽室があって、2つのステレオシステムがありました。同じレコードをかけてみるとシステムAではすてきに聞こえるけど、システムBではなぜかさえない。逆もしかり。10枚ぐらい自分のレコードを持っていってかけ比べたのですが、システムによって全然音が違う。そして機器との相性があると分かりました。これってアナログだからこその面白さなんですよね」

自宅にはおよそ4000枚のレコード、数万枚ものCDをお持ちだとか。

「この年になって思うのは、今持っているものの行き先を決めないといけないなと。次の世代の人にとってはゴミという可能性もあるから。ただ、いい音楽がゴミになることだけは避けたい。大事にしてくれる誰かに託したいです」

最後に、ピーターさんにとって音楽を聴く時間ってどんな時間ですか。

「レコードでもCDでも一人で聴くのももちろんいいんだけど、今は誰かと音楽の良さを語り合いながら聴くのが楽しいです。というのも、そもそも僕が今の仕事に就いたのは、音楽の素晴らしさを伝えたいから。今までもこれからもその気持ちは変わらないです。だから僕にまだ役目があるとするならば、生涯現役を宣言し、今までとこれからの素晴らしい音楽の魅力を伝え続けていきたいです」


  • 「レコードは苦手な曲があっても簡単に飛ばせないからこそ集中して聴くことができる。1曲だけ苦手な曲が入ったアルバムがあるんだけど、不思議と何回も聴いていると、そこそこ好きになってくるんですよ(笑)」
    いい音を大音量で楽しめるのはミュージックカフェ&バーならでは


The Shadows
『To The Fore』(上段左)

「クリフ・リチャードという人気歌手のバックバンドをやっていたシャドウズの一枚です。当時のポップミュージックは完全にソロの時代でした。そんな時代に唯一のグループ。彼らはインストの曲をレコードで出していて毎回大ヒットしていたんだけど、これはそれらのヒット曲から4曲を集めた至極のEP盤!」
Donny Hathaway
『Live』(上段中)

「雑誌のレビューで彼を知ったんだけど、もう取りつかれたように聴きまくりました。ソウルミュージックでは新しい感覚を持って現れたアーティストで唯一無二の存在感。本当に天才でした。お客さんと一緒になってつくり上げるキャロル・キングの『きみの友だち』はその場の高揚感も伝わってきて最高だよ」
The Band
『Music from Big Pink』(上段右)

「1968年というと、世の中はサイケデリックロックの最盛期でガンガンギターを弾いているような音楽でしたが、これは真逆の音です。アメリカのルーツミュージックの全部が集まった宝物のような音楽。無名バンドのデビュー作って普通に考えると冒険的な一枚ですが、音楽の聴き方を変えてくれた作品です」
Fairport Convention
『Unhalfbricking』(下段左)

「アメリカのフォークロックをまねるのではなく自分たちの地元を、足元を一度見つめ直そうと、イギリス伝統のフォークロックを追求して完成した一枚。カッコいいんですよ。ちなみにこのバンドのドラマーは、かつて僕が憧れていたブルーズバンドに参加していた学校の先輩なんです」
Georgie Fame
『Fame At Last』(下段中)

「ジョージィ・フェイムってオルガン奏者でもあるジャズ寄りのリズム&ブルーズのアーティスト。『イエ・イエ』というヒット曲があってそれで彼を知りました。このアルバムを聴いてなんてカッコいいんだと衝撃を受けそれから彼の音楽にハマっていきました。僕の音楽の幅を広げてくれた一枚です」
The Paul Butterfield Blues Band
『The Paul Butterfield Blues Band』(下段右)

「ブルーズバンドをしていた憧れの先輩がいつも小脇に抱えていたレコードでした。僕も気になってレコード屋さんで試聴したら、もう一気にとりこに。以降ブルーズの世界にどっぷり漬かりました。ターンテーブルの上にはいつもこのレコードがあったくらい。僕の人生を一番変えた一枚かもしれません」

What's GOOD LIFE for you?
ストレスと共存

  • 「ストレスをなくすことはできないけれど、イライラしたり怒りが込み上げてきたりしたら3分以内に別のことをして気持ちを切り替える。これができるようになってうまくストレスを逃がせるようになりました」

この記事は、2024年1月28日発行の日経REVIVE2月号に掲載された内容です。

取材裏話

2月号「レコード」ピーター・バラカンさん

先日、映画「パーフェクトデイズ」を見たところ、20代の若者が50代後半とおぼしき主人公からカセットテープを借りるシーンがありカセットテープの音楽を売買するお店(ロケ地:下北沢)も出てきており、世代を超えたアナログブームに納得しました。また、ピーターさんから聞いたのですが、さらにレコードに浸りたい方には音浴博物館(長崎県西海市)があります。興味ある方は足を延ばしてみては。