コラム
ART
posted by 日経REVIVE
《展覧会の見どころ紹介》
西洋絵画、どこから見るか?
ルネサンスから印象派まで
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2025年03月15日
2025年3月11日より、国立西洋美術館にて開催中です。
本展はサンディエゴ美術館と国立西洋美術館の所蔵品計88点を組み合わせ、作品をペアや小グループからなる36の小テーマに分けて展示しています。それらの作品の対話を通じ、作品をどのように見ると楽しめるかという観点から、鑑賞のヒントをご提案しています。
サンディエゴ美術館から出品されるジョルジョーネやサンチェス・コターンなど、世界に冠たる傑作を含む49点はいずれも日本初公開。ルネサンスから19世紀末までの600年にわたる西洋美術の魅力を伝える本展覧会のプレス内覧会の模様をレポートします。
ひとりひとりの 「どこみる」を、ぜひ会場でお探しください。
- 作品の内覧に先立ち、本展で音声ガイドナビゲーターを務める俳優のディーン・フジオカさんのトークとフォトセッションが行われました。フジオカさんは絵画の鑑賞に関して、「自分自身の中で、ボケとツッコミを何度も繰り返す感じ」とおっしゃっていたのが印象的でした。写真は後ろの作品:フランシスコ・デ・スルバラン「聖ドミニクス」と同じ “キュン” のポーズをとるフジオカさん。
続けて、TBS アナウンサーの日比麻音子さんが、マリー=ガブリエル・カペの <<自画像>> になりきった衣装とヘアメイクで企画展示室前ロビーに登場。写真左はスタイリングを担当した橋本佳奈さん。
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展覧会の見どころ
どこみる展ならではの、「くらべてみると、おもしろい。」という観点から、各章の注目の作品を見ていきましょう。
西洋近代美術の礎は、14~16世紀にかけて、イタリアとネーデルランド(現在のベルギー、オランダ)で起こった革新運動によって築かれ、ヨーロッパ各地へ伝播しました。ジョットからボス(工房)まで、両地域のルネサンス絵画の展開を探ります。
- カルロ・クリヴェッリ《聖母子》1468年頃、油彩/板、サンディエゴ美術館
- アンドレア・デル・サルト《聖母子》1516年頃、油彩/板、国立西洋美術館
この2つの作者の作家は2人ともイタリアで学んだ画家ですが、活躍した時代が少し違います。人物だけでなく、背景がどのように描かれているかも、見比べてみましょう。
パオロ・ヴェロネーゼ《アポロとダフネ》の前では、美しいモデルさんがダフネになりきり撮影に応じていました。
サンディエゴ美術館の充実したバロック絵画コレクションを基に、国立西洋美術館所蔵の優品を組み合わせながら、17世紀美術の展開をスペイン、イタリア及びフランス、フランドル及びオランダと、地域別に紹介します。
- フランシスコ・デ・スルバラン《聖ドミニクス》1626-27年、油彩/カンヴァス、国立西洋美術館
- フランシスコ・デ・スルバラン《聖ヒエロニムス》1640-45年頃、油彩/カンヴァス、サンディエゴ美術館
フランシスコ・デ・スルバラン(Francisco de Zurbarán: 1598-1664)はスペインの黄金時代を代表する画家の一人。修道院のために描かれた連作の一つである《聖ドミニクス》:左 とその10年以上後に描かれた《聖ヒエロニムス》:右 が並びます。計4枚のスルバラン作品が創り出す空間で、それぞれの時代背景を思い浮かべながら比べてみてはいかがでしょう。
- 展示風景
- 展示風景
この時代の美術をリードしたイタリア絵画とフランス絵画の展開に焦点を当て、両館のコレクションから風景画、肖像画、風俗画それぞれのジャンルにおける地域ごとの特徴を見ていきます。
右 マリー=ギュミーヌ・ブノワ《婦人の肖像》1799年頃、油彩/カンヴァス、サンディエゴ美術館
マリー=ガブリエル・カペ(Marie-Gabrielle Capet, 1761-1818)とマリー=ギュミーヌ・ブノワ(Marie-Guillemine Benoist, 1768-1826) は共に18世紀末から19世紀初頭にフランスで活躍した新古典主義の女性肖像画家と称されます。役人の娘として生を受け、ジャック=ルイ・ダヴィッドの工房で学び、伯爵と結婚し、ナポレオンの家族の肖像画を描いたこともあるブノワ。一方で、使用人の娘として生まれ、「女性のための美術学校」で学び、少しずつそのキャリアを積んでいったカペ。同じ時代を異なる経緯で過ごした2人の女性作家の、その素晴らしい作品を並べてみることができるのも本展覧会の醍醐味です。
- 展示風景
- 展示風景
その他にも18世紀の風景画、肖像画、風俗画が多数展示されており、並べて展示されていることで、それぞれの作品を楽しむだけでなく、それらの相対性をも満喫することができます。
19世紀絵画における人物表現に注目します。この時代、古典絵画の伝統と新しい時代の要請する近代性をそれぞれの手法で融合することを目指した多くの画家が活躍しました。
その多様な表現のあり方を探ります。
ウィリアム・アドルフ・ブーグロー(William Adolphe Bouguereau, 1825-1905)は、19世紀フランスのアカデミズム絵画を代表する画家。当時、フランスの画家の出世コースは、エコール・デ・ボザール(国立美術学校)で学び、サロン(官展)に出品、美術アカデミーの会員となり、最終的にエコール・デ・ボザールの教授になる、というのが典型的なパターン。ブーグローはまさに絵に描いたようなエリートコースを歩んだ画家でした。ブーグローはキリスト教・神話や天使を描く一方で、少女をテーマにした作品も多く残しています。同じ時代の他の芸術様式や後半台頭する印象派等の背景を思いつつ、作品を比べてみてもおもしろいのではないでしょうか。
- 展示風景
- 展示風景
その他にも、ホアキン・ソローリャ(Joaquín Sorolla, 1863-1923)の円熟期(1904-11年)に描かれた3作品や、エドガー・ドガ(Edgar Degas, 1834-1917)とアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec, 1864-1901)の作品もご覧いただけます。
さらに、国立西洋美術館の常設展示室内には、今回の企画展に伴いサンディエゴ美術館から5点の追加出品作品が展示されています。
また、国立西洋美術館の新収蔵絵画も3月11日より展示されていますし、所蔵品によるテーマ性の高い展示「コレクション・イン・フォーカス(Collection in FOCUS)も行われていますので、ぜひ企画展とともにお楽しみください。
なお、現在 REVIVE Web ではこうした美術館の常設展にフォーカスし、その見どころと魅力をお伝えする企画を進めています。
近日、詳細をお伝えしますので、こちらもお見逃しなく!!

西洋絵画、どこから見るか?
ルネサンスから印象派まで
サンディエゴ美術館 vs 国立西洋美術館
会期:2025年3月11日(火)- 6月8日(日)
会場:国立西洋美術館[東京・上野公園]
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
休館日:月曜日、5月7日[水] (ただし、3月24日[月]、5月5日[月・祝]、5月6日[火・休]は開館)
開館時間:9:30 〜 17:30(毎週金・土曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
主催:国立西洋美術館、サンディエゴ美術館、日本経済新聞社、TBS、TBSグロウディア、テレビ東京
ホームページ:https://art.nikkei.com/dokomiru/
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)