コラム
ART
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大阪・関西万博開催記念
大阪市立美術館リニューアル記念特別展
ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
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2025年06月13日

1887年12月-1888年2月 油彩、カンヴァス
65.1×50cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
Van Gogh’s Home: The Van Gogh Museum.
The Painter’s Legacy, the Family Collection, the Ongoing Story
2025年7月5日(土)から大阪市立美術館で開催されます。
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)の作品は、今日までどのように伝えられてきたのでしょうか。本展は、ファン・ゴッホ家が受け継いできたファミリー・コレクションに焦点を当てます。
フィンセントの画業を支え、その大部分の作品を保管していた弟テオは兄の死の半年後に生涯を閉じ、テオの妻ヨーが膨大なコレクションを管理することとなります。ヨーは義兄の作品を世に出すことに人生を捧げ、作品を展覧会に貸し出し、販売し、膨大な手紙を整理して出版するなど、画家として正しく評価されるよう奔走しました。テオとヨーの息子フィンセント・ウィレムは、コレクションを散逸させないためにフィンセント・ファン・ゴッホ財団を設立し、美術館の開館に尽力します。
人びとの心を癒す絵画に憧れ、100年後の人びとにも自らの絵が見られることを期待した画家の夢も、数々の作品とともにこうして今日まで引き継がれてきました。
本展では、ファン・ゴッホ美術館の作品を中心に、ファン・ゴッホの作品30点以上に加え、日本初公開となるファン・ゴッホの貴重な手紙4通なども展示します。現在のファン・ゴッホ美術館の活動も紹介しながら、本展をとおして、家族の受け継いできた画家の作品と夢を、さらに後世へと伝えてゆきます。
- 目次
- 展覧会の見どころ
- 第1章 ファン・ゴッホ家のコレクションからファン・ゴッホ美術館へ
- 第2章 フィンセントとテオ、ファン・ゴッホ兄弟のコレクション
- 第3章 フィンセント・ファン・ゴッホの絵画と素描
- 第4章 ヨー・ファン・ゴッホ=ボンゲルが売却した絵画
- 第5章 コレクションの充実 作品収集
- 読者プレゼントのご案内
- 開催概要
展覧会の見どころ
展示構成
本展でご紹介するファン・ゴッホ家のコレクションの歴史は、フィンセント・ファン・ゴッホの死後、その作品の大半を弟テオが受け継いだところから始まります。本章では、コレクションを継承し、フィンセントの作品を世界へ広めることに貢献した3人の家族をご紹介します。
テオドルス・ファン・ゴッホ(愛称:テオ、1857 – 1891)
ヨハンナ・ファン・ゴッホ=ボンゲル(愛称ヨー、1862 – 1925)
フィンセント・ウィレム・ファン・ゴッホ(愛称エンジニア、1890 – 1978)
兄弟のコレクションは、ふたりが生きた時代の雰囲気を伝えてくれるとともに、フィンセントの芸術を理解する大きな手がかりとなります。フィンセントとテオはともに十代半ばから画廊で働き始めていて、手頃な価格のグラフィック・アートは若いころから身近なものでした。彼らは版画(オリジナル、複製含む)を買い、ときに贈り合います。画家になる決意をしたフィンセントは、特にフランスやイギリスの雑誌に掲載された挿絵から大きな影響を受けました。
パリでは同時代の美術も収集します。フィンセントが自らの作品と交換で手に入れた作品は、このとき彼が画家仲間から得ていた評価を示すものでもあります。浮世絵を熱心に購入したのは主にフィンセントで、芸術的な刺激を受けるだけでなく、すでに値が上がっていた印象派の主要画家の作品を、これらと交換で何とか手に入れようと意図したものでもありました。
肩越しにこちらを見る画家を描いた、フィンセントお気に入りの肖像画。サン=レミの療養院からテオに送った手紙では、「ラッセルが描いた僕の肖像を大切に扱ってほしい。僕にとってとても重要なものだ」と頼んでいる。本作の代わりにラッセルに贈られたのは、パリで描いた3足の靴の静物画だと考えられている。ラッセルはオーストラリア出身の画家で、ファン・ゴッホはパリで彼と出会い親しくなり、南仏に移ったあとも交流が続いていた。

1886年 油彩、カンヴァス 60.1×45.6cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
- エルネスト・クォスト 《タチアオイの咲く庭》
1886-90年 油彩、板 45.5×55cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) - ポール・ゴーガン 《雪のパリ》
1894年 油彩、カンヴァス 72×88cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
ファン・ゴッホは、新しい表現様式を確立する際に日本美術を参照し、またその思想からも大きな影響を受けた。アルルでは浮世絵をアトリエに飾り、テオに次のように書き送った。「考えてみてほしい。あの日本人たちが僕たちに教えてくれることは、まるで新しい宗教のように思えないだろうか。あれほど質素に自然の中で暮らしている。まるで彼ら自身が野に咲く花のようではないか。僕には、日本美術を学びさえすれば、あのようにもっと幸福で陽気な気分になるはずだと思えるし、それによって教育や慣習に縛られている僕たちでも自然に立ち返ることができるのだ」。

1861年(文久元) 大判錦絵三枚続 各38×25cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
フィンセント・ファン・ゴッホが画家になる決意をしたのは比較的遅く、1880年、27歳のときでした。最初の3年間は主にハーグで素描の腕を磨き、その後ニューネンで油彩画に取り組みます。1886年にパリに出ると、自らの表現が時代遅れであることに気づき、新しい筆づかいと色彩表現を取り入れ、独自の様式を生み出していきました。1888年2月に南仏に移り、アルルで1年3ヵ月、サン=レミ=ド=プロヴァンスで1年を過ごし、自らの表現様式を確立しました。1890年5月にパリ近郊のオーヴェール=シュル=オワーズへ移ります。新しい芸術の可能性を試み続けていましたが、自らの胸部をピストルで撃ち、7月29日に37歳で息を引き取ります。わずか10年という短い画業で驚くほどの数の作品を制作しました。
ファン・ゴッホ家が受け継いできた200点を超える絵画、500点以上の素描・版画は、現在ファン・ゴッホ美術館に保管され、世界最大のファン・ゴッホ・コレクションとなっています。
- フィンセント・ファン・ゴッホ《女性の頭部》
1885年4月 油彩、カンヴァス 43.2×30cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) - フィンセント・ファン・ゴッホ 《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》
1886年8-9月 油彩、カンヴァス
46.5×38.4cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
- フィンセント・ファン・ゴッホ《浜辺の漁船、サント=マリー=ド=ラ=メールにて》
1888年6月 油彩、カンヴァス 65×81.5cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) - フィンセント・ファン・ゴッホ 《種まく人》
1888年11月 油彩、カンヴァス 32.5×40.3cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
- フィンセント・ファン・ゴッホ 《羊毛を刈る人(ミレーによる)》
1889年9月 油彩、カンヴァス
43.6×29.5cm ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation) - フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦の穂》
1890年6月 油彩、カンヴァス 64×48cm
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
ヨーはテオと結婚する前には特に美術に縁があったわけではありませんでしたが、パリでテオと暮らしながら、しだいにファン・ゴッホをはじめとする近現代美術に関する知識を身につけました。
テオから膨大な作品を受け継いだのちには、個人収集家や美術館の世界、美術取引の仕組みについても精通してゆきます。ヨーが定期的に作品を売却したのは、親子が生計を立てるためでもありましたが、フィンセント・ファン・ゴッホの評価を確立するという大きな目的のためでもありました。
こうしたヨーの尽力を明らかにするのが、テオとヨーの会計簿です。テオの死後には作品の売却についても記されるようになり、ヨーがどの作品をいつ誰にいくらで売却したのか、生々しい記録が残されました。会計簿の調査・研究は進み、記載されたもののうち、170点以上の絵画と44点の紙作品が特定されています。
1973年、ファン・ゴッホ美術館は主にフィンセント・ファン・ゴッホ財団のコレクションを展示する美術館として開館しました。ファン・ゴッホ作品と家族に受け継がれてきたほかの画家たちの作品を中心としながら、今日までにそのコレクションは少しずつ拡充されてきました。
1980年代後半から1990年代前半にかけては、寄付や寄贈の恩恵を大いに受け、ときにはファン・ゴッホ作品が加わることもありました。この時期に潤沢とはいえない予算を使って購入されたのは、ファン・ゴッホと関連のあるバルビゾン派やハーグ派、象徴主義の作品です。また、1990年代の終わり頃からは版画やポスターなどの紙作品の収集にも力を入れます。このコレクションはいまや世界屈指の質を誇るものとなりました。さらに収益が美術館にも分配される宝くじができると、これまで購入が難しかった作品が購入できるようになり、印象派やポスト印象派の作品をはじめ重要な作品が加わりました。

1882年9月23日頃 ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)
(purchased with support from the Mondriaan Fund, the Ministry of Education, Culture and Science, the VSBfonds and the Cultuurfonds)
巡回展情報
大阪展 2025年7月5日(土)~ 8月31日(日) 大阪市立美術館
東京展 2025年9月12日(金)~ 12月21日(日) 東京都美術館
名古屋展 2026年1月3日(土)~ 3月23日(月) 愛知県美術館

大阪・関西万博開催記念
大阪市立美術館リニューアル記念特別展
ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
会期:2025年7月5日(土)〜 8月31日(日)
会場:大阪市立美術館(〒543-0063 大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82(天王寺公園内))
開館時間:9:30-17:00、毎週土曜日は19:00まで(入館は閉館の30分前まで)
休館日:毎週月曜日、 7月22日(火)※ただし、7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、8月12日(火)は開館
観覧料:一般 2,200円(2,000円)、高大生 1,300円(1,100円)、小中生 500円(300円)
主催:大阪市立美術館、NHK大阪放送局、NHKエンタープライズ近畿、 中日新聞社
協賛: NISSHA
後援: オランダ王国大使館、 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会、 公益財団法人大阪観光局
協力: KLMオランダ航空
ホームページ:ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
問い合わせ先:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター なにわコール)
※土日祝は日時指定予約優先制。平日にご来館の場合、日時指定予約は不要。
※( )内は前売りおよび20名以上の団体料金
※未就学児、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)。ただし、土曜・日曜・祝日に入館する場合は日時指定予約をされた方が待ち時間が少なくご入館いただけます。
※大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です。
※学生の方は、ご入館の際に学生証をご提示ください。
チケット購入の際にプレイガイドによって各種手数料が発生する場合があります。
※本展観覧券(半券可)の提示で、あべのハルカス美術館「深堀隆介展 水面のゆらぎの中へ」〈2025年7月5日(土)~9月7日(日)〉の当日券を100 円引きでご購入いただけます。(1枚につきお一人様1回限り有効、他の割引券との併用不可)