コラム
ART
レポート
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Prism of the Real: Making Art in Japan 1989‒2010
時代のプリズム:
日本で生まれた美術表現 1989-2010
posted by 日経REVIVE
2025年09月04日

Prism of the Real:Making Art in Japan 1989-2010
2025年9月3日(水)から国立新美術館で開催されています。
昭和が終わり、平成の始まった1989年から2010年までに、日本でどのような美術が生まれ、日本からどのような表現が発信されたのか、本展は国内外の50を超えるアーティストの実践を検証します。この20年間は、冷戦体制が終わり、人、ものが行き来するグローバル化の始まりによって、国際的な対話が大いに促進された時期です。国立新美術館はアジア地域におけるパートナー美術館、香港のM+との協働キュレーションにより変化に富んだ時代を見つめなおします。
本展は、80年代初頭以降の国際化の胎動を扱うプロローグに始まり、続くイントロダクションでは、日本社会が大きな転機を迎えるなか1989年を転換点として登場した、新しい批評性を持つ表現を紹介します。そして、以降の時代を3章のテーマに基づくレンズを通して見つめていきます。
展覧会の見どころ
本展は、国立新美術館と香港の M+ が協働で企画し、ナショナリティを超えた多層的なまなざしで、日本で生まれ、日本から発信された美術表現をあらためて捉え直します。
冷戦の集結から 3.11 直前まで社会が大きく揺れ動いた20年。その変化と呼応するように、多様でエネルギーにあふれた表現が登場しました。
レンズ1:「過去という亡霊」 – 戦争の記憶に向き合い読み直す視点
レンズ2:「自己と他者と」 – ジェンダー、ナショナリティ、日本文化の再解釈
レンズ3:「コミュニティの持つ未来」 – 既存のコミュニティとの関わりを模索し、新たな関係性の可能性を探る
ANZAÏ フォトアーカイブなどの資料も展示。作品が生まれた背景や時代の空気を体感できます。
展示構成
– イントロダクション:「新たな批評性」
1989年を転換点として登場した、革新的エネルギーと新たな批評性にあふれた表現を紹介する。アーティストたちにとってのリアルな日常や社会状況を自身の表現に取り込もうと試行し、日常的な素材を用い、ポピュラーカルチャーを引用するなど、アーティストの等身大の生き方を反映する、多様でインパクトのある作品が現れた。


– レンズ1:「過去という亡霊」
第二次世界大戦終結から時間と距離をおいて、戦後生まれのアーティストたちは過去の重みを踏まえながら戦争や核のトラウマ、植民地支配の記憶といった課題に取り組み、歴史の通説を疑ってその読み直しを行った。日本の戦後史と向き合う彼らの表現は、終戦から80年を経た現在もなお続く社会、文化、人々への影響を示唆する。


– レンズ2:「自己と他者と」
新旧の要素が融合する、独特で時に矛盾をはらむ日本文化は、国内だけでなく海外で活動するアーティストたちをも触発する格好の題材となった。ジェンダーやナショナリティといった習慣や規範に挑戦するテーマを持つ作品から、再解釈された日本文化を映し出す作品まで、自他の眼差しの交換のなかで、様々な角度からアイデンティティを問う試みを取り上げる。
– レンズ3:「コミュニティが持つ未来」
地域社会や既存のコミュニティとの関わりを模索し、人々と社会とのつながりや関係性を新たに構築していくプロジェクトの可能性に目を向ける。グローバル化のなかで、他者との共生を模索するアーティストたちの取り組みは、様々なかたちで従来のヒエラルキーを解体し、境界を乗り越える起動力を生み出してきた。この時代を特徴づける思考を持った作品を注視する。

時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989‒2010Prism of the Real: Making Art in Japan 1989‒2010
1990年 発泡ウレタン、粘土、木(ヤナギ)、塗料他 290×360×270cm 金沢21世紀美術館蔵
撮影:斎城卓 画像提供:金沢21世紀美術館 © TSUBAKI Noboru
会期:2025年9月3日(水)― 12月8日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(〒106-8558東京都港区六本木7-22-2)
開館時間:10:00 ~ 18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30 分前まで
休館日:毎週火曜日*ただし9月23日(火・祝)は開館、9月24日(水)は休館
観覧料:一般2,000円、大学生1,000円、高校生500円
※中学生以下は入場料無料
※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名を含む)は入場無料
主催:国立新美術館、M+、独立行政法人日本芸術文化振興会、文化庁
共催:日本経済新聞社
企画:キュレーションチーム
キュラトリアル・ディレクター:ドリアン・チョン(M+アーティスティック・ディレクター、チーフ・キュレーター)
キュレーター:イザベラ・タム(M+ビジュアル・アート部門キュレーター)、尹志慧(国立新美術館主任研究員)
コーディネーティング・キュレーター:神谷幸江(国立新美術館学芸課長)
展覧会アドバイザー: 逢坂恵理子(国立新美術館長)、林寿美(インディペンデント・キュレーター)
ホームページ:https://www.nact.jp/exhibition_special/2025/JCAW/
お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)