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Marie Antoinette Style

【企画展】マリー・アントワネット・スタイル

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2026年04月05日

コートドレスのマリー・アントワネット フランソワ゠ユベール・ドルーエ(画)
1773年 油彩、カンヴァス 63.5 x 52.0cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London
マリー・アントワネット・スタイル
2026年8月1日(土)から横浜美術館にて開催されます。

歴史上もっともファッショナブルな王妃、マリー・アントワネット。時代の「ファッション・アイコン」となった王妃の装いやインテリアは、18世紀から現代までファッションやデザイン、映画などに広く影響を与えてきました。
本展は、アントワネット時代のドレスや宝飾、家具などを手がかりに、あらゆる点で新しい様式(スタイル)をうちたてていった王妃の革新性と、その人物像に迫ります。さらに王妃が形づくった「スタイル」の源泉が、いかに時代を超えて人びとを魅了し、現代のクリエーターたちにも示唆を与え続けているかについて紹介します。
本展はロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で企画され、3月22日 まで同館で開催されていました。横浜美術館は世界巡回最初の地、かつ国内では唯一の会場となります。

展覧会のみどころ

1. 時代を越えて人びとを魅了し続ける王妃の「スタイル」を紹介
ドレス、ジュエリー、家具調度品、絵画や版画、写真など、約200点で構成。18世紀後半の歴史的なファッションから2025年のオートクチュールまで、250年にわたる展開をたどります。
2. ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)が企画した世界巡回展、日本で唯一の開催
贅沢なだけじゃない! ロンドンにある世界有数の博物館V&Aが、史上もっともファッショナブルなフランスの王妃マリー・アントワネットを再評価。国際的にも注目を集めている画期的な展覧会です。
3. 歴史的、文学的にも貴重な品が集結。日本初公開作品も!
「首飾り事件」のネックレスの一部と伝わるダイヤモンドなど、マリー・アントワネット旧蔵品やゆかりの品(10点あまり)をはじめ、小説、演劇、映画などに描かれてきた18世紀当時の品々も多数展示。王妃の処刑に用いられたとされるギロチンのほか、ヨーロッパの歴史を転換させたフランス革命の空気も、小コーナーで紹介します。
4. 国内の関連作品を加えた日本オリジナルの展示
アジア巡回のためにロンドンでの展示から出品内容を再編成。さらに、国内で所蔵されている優品約20点も展示します。

展示構成

1)マリー・アントワネット:スタイルの源泉 1770-1793

オーストリア皇女マリー・アントワネット(1755-1793)は、1770年春、14歳の時に王太子妃としてフランスに嫁ぎました。以来、宮廷に新たな視点をもちこみながら、ルイ16世下フランスにおける高級産業、とりわけ ファッションと織物産業の発展に、多大な影響を与えました。
当時のフランスは、植民地と奴隷制を基盤とした国際的なプレゼンスに加え、文化においても中心的な役割を担っていました。そうしたなか、アントワネットは、堅苦しい宮廷の慣習に挑み、あらゆる面で自らの意向を形にしていきました。衣裳のみならずインテリアから音楽、ライフスタイルまで、よりシンプルで洗練された王妃の趣向は、またたく間に国内外で流行します。一方で、そのスタイルは斬新ゆえに取り沙汰され、民衆には想像もつかないほどの贅沢の象徴と受けとめられるようになっていきました。
革命の気運が高まるなか、アントワネットは次第に反体制派の標的となり、ギロチンへと導かれていくのです。

ローブ・ア・ラ・フランセーズ(フランス風ドレス) フランス製 1760年代(1770年代に加工)
絹、光沢をつけた麻 ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London

ローブ・ア・ラ・フランセーズ(フランス風ドレス)(背面) フランス製 1760年代(1770年代に加工)
絹、光沢をつけた麻 ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London

ローブ・ア・ラ・フランセーズは、18世紀のもっともフォーマルなドレスの形式。
白いストライプの走る絹地に、つるバラと花束の連続模様が施されています。少しかすれたような、やさしい風合いの花柄は、織る前に経糸を束ねて絞り染めして(つまり模様を計算して糸を先染めして!)織り出されたもの。この高度な技術を要するシネ・シルク—日本の絣に相当します—も、マリー・アントワネットのお好みでした。

フラワー・ガーデン
マティアス・ダーリー(作) 1777年刊行 エングレーヴィング 35.2 × 24.7 cm
ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London

結髪師レオナール・オーティエとモード商のローズ・ベルタンが生み出した、高く盛られた髪型や華美な頭飾りは、この時代の宮廷に特徴的な装いと言えるでしょう。奇抜な髪型が流行すると、風刺画家たちはその姿を大げさに描き出しました。この作品のテーマは「花園」です。熊手を持った庭師のいる庭園や、垂れ下がる花々で飾りたてられた「髪」は、女性の顔の数倍のスケールで描かれています。

マリー・アントワネットの評判を失墜させた「首飾り事件」。元凶の首飾りは、騒動のさなか盗まれ、分解され、売却のためイギリスに渡りました。その一部と伝わるダイヤモンドが出展されます。インドのゴルコンダ産と思われる石は、最高級の透明度と輝きで、中央の一粒だけでも約15カラットあります。ヴィクトリア女王からジョージ6世の時代まで約100年にわたり、歴代のサザーランド公爵夫人が継承し、形を変えながら戴冠式の際に身につけました。

通称「サザーランド・ダイヤモンド」
1780年代にネックレスに加工 金、銀、プラチナ、ダイヤモンド 長さ 35.8 cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London
2)マリー・アントワネット:追憶と偶像化 1800-1940

マリー・アントワネットは、死後も人びとの記憶のなかに生き続けました。ナポレオン3世の后ウジェニー(1826–1920)を筆頭に、19世紀には王党派の支持者たちが彼女のスタイルを懐古しました。スペインからフランスに嫁いだ皇后は、同じく外国から嫁いだアントワネットに心を寄せ、自らのイメージづくりにおいても王妃を参照しました。
一方、ブルジョワたちは、家柄の正当性を主張すべく、アントワネット風の装いやインテリアをとり入れました。こうした気運は、王妃に関わる品々が各国で収集される一因ともなりました。アントワネットの装いは仮装舞踏会の人気のテーマとなり、ときに物語の主人公にも重ねられ、そのイメージは数々の出版物を通じて世界に広まりました。20世紀初頭までに、アントワネットとその美意識は、ひとつの偶像として確立していきました。

皇后ウジェニー ピエール゠ポール・アモン(画)
1850年代 油彩、カンヴァス 132.0 × 100.0 cm 東京富士美術館蔵
©東京富士美術館 イメージアーカイブ/ DNPartcom

ナポレオン3世の皇后ウジェニーはスペイン出身で、同じく外国人でフランス王妃となったマリー・アントワネットに心酔していました。仮装舞踏会を主催してアントワネットに扮するだけでなく、王妃の旧蔵品などを集めた展覧会を主催するなど、19世紀にアントワネットへの関心を高める立役者となりました。
自らも王妃と同じく宝石を愛し、スカートの後ろ側を膨らませるクリノリン・スタイルを流行らせた、ファッションリーダーと呼べる存在でした。

1920年代から30年代に活躍したジャンヌ・ランバンは、懐古趣味ただよう繊細でロマンチックな「ローブ・ド・スティル」(歴史的な様式に連なるドレスの意)を打ち出しました。
上部はすっきりシンプルに、スカートはパニエでふんわりと仕上げたイヴニングドレスは、マリー・アントワネットの軽やかなシュミーズドレスと、18世紀の豪奢な宮廷服の混成体のよう。絹製の花かざりのアクセントが、透明感のあるシルクの純白をさらに際立たせます。

イヴニングドレス「ローブ・ド・スティル」 ジャンヌ・ランバン(作)
1922-23年頃 絹オーガンザ、絹の花かざり、パニエ ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London

目隠し鬼(流行年鑑『襞かざりと縁かざり』より) ジョルジュ・バルビエ(画)
1924年(1925年刊行/メニアル、パリ)
ポショワール(ステンシル)による手彩色の挿絵本 冊子:26.5 x 18.0 x 3.0cm ヴィクトリア&アルバート博物館蔵
© Victoria and Albert Museum, London/George Barbier

アール・デコ期を代表する挿絵画家ジョルジュ・バルビエは、時代考証をふまえつつ、1920年代の洗練された感性を通して、18世紀の服飾やインテリアを細部まで表現しました。彼の挿絵にはそれとわかるようにマリー・アントワネットやヴェルサイユにおける王妃ゆかりの地が取り入れられました。この「目隠し鬼」を描いた作品では、高く髪を結い上げ羽やリボン、花の飾りをつけて、横に大きく広がる宮廷ドレスを着た人びとが描かれています。

3)永遠(とわ)に新しく — マリー・アントワネット・スタイル

華やかさと悲劇に象徴されるマリー・アントワネットのイメージは、いまなお人びとを魅了し続けています。この章では、王妃がつくりあげた「スタイル」にさまざまなかたちでインスピレーションを得た現代のクリエーターたちが手がけたファッション、デザイン、映画、音楽などを紹介します。
パステルカラーやリボン、王妃の好んだドレスのシルエットを採り入れたファッションは、洗練とともに、退廃や破壊、さらには「女性らしさ」への問いかけや多様性など、現代社会の課題にまで視点を広げています。また、映画やテレビでアントワネットの生涯が30本を超えて作品化されていることや、舞台やミュージック・ビデオへの引用は、彼女が時代を超えたミューズであり続けていることの証といえるでしょう。

ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)の展示風景
© Victoria and Albert Museum, London

モスキーノは2020–21年秋冬コレクションで、マリー・アントワネット・スタイルを大胆に生まれ変わらせます。超ミニのパニエドレスやロングブーツ、パステルカラーの巨大ウィッグを着けたモデルたちがランウェイを闊歩。デザイナーのジェレミー・スコットは王妃にまつわる言葉を引いて、「CAKE! CAKE! CAKE! LET THEM EAT MOSCHINO!」と、写真右手の2点をふくむ「ケーキドレス」をインスタグラムに投稿しました。このドレス、なんとシリコン製。ケーキを着るのも楽じゃない?!

左右は、トワル・ド・ジュイのプリント地による、アンドレア・グロッシのアンサンブル(2019年ポリモーダ卒業制作)とヴィヴィアン・ウエストウッドのパニエドレス(1996年春夏コレクション)。中央、フリルのトレーンとティアードスカートが印象的なイヴニングドレスは、アーデムのコレクション(2022年春夏)。作品を高所に並べたロンドン展のスペクタクルな演出とは趣向を変えて、横浜ではデザインのディテールに迫れる展示を予定しています。

ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)の展示風景
© Victoria and Albert Museum, London

映画『マリー・アントワネット』(ソフィア・コッポラ監督、2006年)より
Photo: Courtesy of I WANT CANDY LLC. and Zoetrope Corp.

ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)の展示風景
© Victoria and Albert Museum, London

ソフィア・コッポラ脚本・監督、キルスティン・ダンスト主演の映画『マリー・アントワネット』。ピンヒールのパンプス、ポップミュージック、色とりどりのマカロンなど、18世紀の宮廷に「現代」を織り込んだ構成が話題になりました。第79回アカデミー賞でミレーナ・カノネロが衣裳デザイン賞を獲得、その栄えあるドレスも出展されます(右写真)。左から「ケーキを食べればいいじゃない」「礼拝堂」「庭園」のコスチューム。

マリー・アントワネット・スタイル
Marie Antoinette Style

<開催概要>

会期:2026年8月1日(土) – 11月23日(月・祝)
会場: 横浜美術館(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1)
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日 ※8月13日、9月24日、11月19日は開館
主催:横浜美術館、ヴィクトリア&アルバート博物館、読売新聞社、日本テレビ放送網
特別協賛:キヤノン
協賛:DNP大日本印刷
後援:ブリティッシュ・カウンシル
公式サイト:https://www.marie2026.jp
公式 X:https://x.com/mariestyle2026
公式 Instagram:https://www.instagram.com/mariestyle2026