10 2024

料理をすると 幸福度が増す!?

|男子厨房に入ろう|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

パンツェッタ・ジローラモさんの「料理」GOOD LIFE
料理をすると幸福度が増す!?
|男子厨房に入ろう|

posted by 日経REVIVE

2024年9月29日

自分も、一緒に食べる人も
料理は幸せの媒介ツール

男たるもの炊事をせずに仕事に精を出すべきとの意味合いで使われていた男子厨房に入らずというフレーズ。
令和の今は、入りたいけど入りづらい……というのが新シニア世代の本音かもしれません。
さあ、勇気を出して厨房に立ちましょう。
料理をするって楽しいですよ!

NAVIGATOR

パンツェッタ・ジローラモ

1962年、イタリア生まれのタレント。1988年から日本在住で数多くのファッション誌に登場。2014年には「連続して最も多くファッション誌の表紙を飾った数(男性モデル)」という記録名でギネス世界記録に認定される。料理好きでも知られており、現在はお米をプロデュースしている。

撮影/吉澤健太 取材・文/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

料理は楽しい&おいしい!
幸せのシェア

料理好きとして知られ、料理本を出版するほどの腕前をお持ちのパンツェッタ・ジローラモさんと東京・神泉にある人気イタリアン「テアトロアッカ」の原シェフを訪ねました。キッチンで白ワインを片手にパスタの作り方を教わりながら、ジローラモさんに料理の魅力や楽しさを伺いました。

「僕がね、料理を始めたのは14歳ぐらいの時だったかな。友達と一緒にテレビでサッカーの試合を見るんだけど、おなかが空くじゃない? それで何か作ろうってことで、やっぱりそこはイタリアンだから簡単に作れるパスタなわけだけど、トマトベースか、ペペロンチーノかささっと作ってふるまっていたんです。友達がおいしいって食べてくれるのがとてもうれしかったのを覚えています」

特別に料理を習ったりしたことはなかったというジローラモさん。大人になって日本に来てからは、たくさんのお店を食べ歩き、自分の中に味のストックをためていったのだとか。

「そうそう。僕、食べるのが好きだからいろんなお店で食事をして舌を肥えさせてたの(笑)。あとは、小さい頃からお母さんが料理していたのを見ていて自然と料理の手順が身についていたんです。だから僕は野菜を切るのとか全然上手じゃないの。レシピも感覚。分量とかきっちり量りません!」

料理をするのに大切なのは愛だといいます。

「そうよ! やっぱり愛でしょう。食材に対する愛もそうだけど、何より食べる人に向けた愛が大切。自分一人でも、家族や友達、恋人でも、料理を届ける相手に幸せをシェアするんです。それが料理の醍醐味だと思います。やっぱり食べることってハッピーでしょう?」


「素材の味わいを楽しみたいから、味付けや調理法は極力シンプルがいい。ただ、料理がシンプルであればあるほど、ちょっといいオイルを使うとか、ちょっといい塩を使うとかするのがおすすめ」

料理を難しく考えないで
自分の味覚とセンスを信じて
PANZETTA GIROLAMO

「やっぱりプロは違いますね! 材料の数も工程もすごいシンプルだけど、お客様に出す時に一番おいしい状態であるように計算している。ん~にんにくの香りがいい。食欲そそるね。絶妙なアルデンテ具合で、アサリのだしとトマトの酸味がマッチして最高においしい! プロとしてのテクニックももちろんだけど、シェフの愛が効いてる」

愛情も料理もシンプルな方が
より深く届き、伝わる

普段から野菜多めの食事を好み、料理も複雑なものより、シンプルなものが好きだというジローラモさん。それは自身の料理道にも通じています。

「僕ね、料理するのにこだわっているのは食材なんです。日本にはおいしい野菜がたくさんあるでしょう? 僕今、会津若松でお米を作っているんですけど、その仲間と先日会津若松に行ってバーベキューをしたんです。すると地元の方から立派なナスを頂いたり、また道の駅へ行ったら、たけのこを頂いたりして上質な食材が豊富にそろって。ナスは他の野菜とシンプルに煮てラタトゥイユにして、たけのこはたけのこご飯で頂きました。素材そのもののうまみが感じられてとてもおいしかったし、みんなでワイワイ料理するのもとても楽しい。こんなふうにいい食材があれば、調理もシンプルでいいから家族や一緒に食べる人を待たせないで済むしね! これって結構大事な気がします。愛情も料理もシンプルな方がより深く届くんじゃないかな」

レシピは感覚とセンスで。食材を見てパパッと調理するというジローラモさんはもはやシェフの域。そんなジローラモさんにこれから厨房に入ろうという男性へのおすすめを聞きました。

「サラダのようなとにかく簡単なものがおすすめだけど、それもハードルが高いなら、総菜をいくつか買ってきて食卓に並べることから始めてみてはどうかな? 料理をしたことがない人はおそらくスーパーやデリにもあまり行ったことがないんだと思うから。まずは食材調達からやってみるといいかもしれません。みなさん今までの人生で食べてきた味覚のストックが豊富にあるだろうし、好みも定まっているだろうからそれを呼び起こしつつ、センスを鍛えるイメージで。料理って素材と味の組み合わせですから。するとそのうち自分で作ってみたくなるはず」

クチナーレ エ ディヴェルデンテ!(料理は楽しいですよ!)


「幼い頃に食べていたものを食べたくなる時があるでしょう? 料理する時によくやるのが子どもの頃食べていた味の再現。味覚が研ぎ澄まされるし、記憶の味にたどりつけるととてもうれしいんです」

LET’S COOKING!
アサリとミニトマトのパスタ

〈 材料 〉1人分
パスタ 100g / 砂抜きしたアサリ 100g / ミニトマト 5,6個 / にんにく 1片 / イタリアンパセリ 適量 / 唐辛子・白ワイン お好みで / オリーブオイル 適量

  • STEP #1 材料を刻む
    ミニトマトは半分に、イタリアンパセリはみじん切りにする。にんにくは芽と薄皮を取り除き縦半分に切る。にんにくの香りを引き出すために包丁の腹で押し潰す。
  • STEP #2 火にかける
    フライパンに潰したにんにくと唐辛子を入れ、オリーブオイルを適量入れ、熱したらアサリを投入し白ワインを少し入れほんのり蒸し焼きに。ついでトマトとパセリを入れて火にかける。
  • STEP #3 アサリを取り出す
    アサリの口が開いてきたら一旦アサリをフライパンから取り出し殻と身に分ける。トマトとパセリとアサリのだしが出たフライパンは熱し、余計なアルコールを飛ばす。
  • STEP #4 ゆでた麺とあえる
    アルデンテにゆでた麺をフライパンに入れ、軽くあえたら殻を外したアサリの身を戻す。麺のゆで汁を少し加えて中火であえる。器に盛り付けオリーブオイルをまわしかけて完成。

What's GOOD LIFE for you?
時に自由に、奔放に

  • 「みな子どもの時期があって大人になるわけだけど、いつの間にか子どもの頃の遊び心ややんちゃな部分を抑え込んでしまうと思うんです。時々その気持ちを解放して奔放になってみる。そんな人生が楽しいよね」

この記事は、2024年9月29日発行の日経REVIVE10月号に掲載された内容です。

取材裏話

10月号「料理」パンツェッタ・ジローラモさん

賑やかなお店が立ち並ぶ神泉。窓も装飾もない白い建物が今回の取材先、TEATROACCA(テアトロアッカ)です。看板も控えめなこのお店、入口を入ってすぐ、現代作家さんのアート作品が迎えてくれました。一瞬どきりとするその作品を眺めつつ店内に入ると最奥にあるオープンカウンターの向こうにシェフ。このカウンター席を予約すると目の前で調理を眺めることができます。
また入口近くに設置されている本格的なピザ窯も圧巻。メニューが無くコース料理のみですが、コースには4種類のピザも含まれるということでみなさんお腹一杯になって帰られるのだとか。いったいどんなお料理が楽しめるんだろうと食いしん坊ならではの想像が膨らみます。

NAVIGATORのジローラモさんとシェフの掛け合いも軽快で楽しく、笑いが絶えない取材でした。今回の取材ではハマグリのペペロンチーノを作っていただきましたが、絶品。(ひとくちお裾分けいただきました、ごちそうさまです)

渋谷の喧騒の真ん中に、大人が集う素敵なお店をご紹介いただきました。