2 2025

花がまとう癒やしの オーラが五感に響く

|花のある暮らし|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

前田有紀さんの「花と植物」GOOD LIFE
花がまとう癒やしのオーラが五感に響く
|花のある暮らし|

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2025年1月26日

自分らしさを実感できる
花と植物のある暮らし

「花をめでたり植物に触れている時間は癒やしであり、本来の自分に戻れる大切な時間です」
そう教えてくれたのは、フローリストの前田有紀さん。
花や植物のある毎日がどれだけ豊かなものなのか、その魅力を伺いました。あなたの日常に、花や植物はありますか?

NAVIGATOR

前田有紀

まえだ・ゆき1981年、横浜市生まれのフローリスト。慶應義塾大学卒業後、2003年にテレビ朝日に入社しアナウンサーとして活躍。2013年に退社し、生花業界へ転職。現在はフローリストとして数多くのイベントや店舗装飾を手掛ける。2021年には東京・神宮前にフラワーショップ「NUR flower」をオープン。

撮影/nae.Jay 取材・文/澤村 恵 ヘアメイク/荻原恵美(HAIR&MAKE ATELIER KAUNALOA) 
スタイリング/徳永千夏 アートディレクション/本多康規(Cumu) 

花や植物は心を
ニュートラルにしてくれる
存在です

アナウンサーからフローリストへと全くの異業種への転身が話題となった前田さん。幼少期から花や自然に強い憧れを持っていたといいます。

「私の人生で最初に花に触れたのは幼少期。母が玄関に花を飾っていてそれを見るのが好きでした。母はフリージアという小ぶりできゃしゃな花が好きで、旬の時期になるとよく飾っていたのですが、玄関いっぱいに広がる香りを一緒にかいだりした思い出があります。実家が街中にあったというのと、小学生の頃から電車で都内に通学していたので、花や植物に触れる機会が少なかったんですよね。そんなこともあって、自然に対してものすごく憧れを抱いていたのを覚えています」

その後大学を卒業し、テレビ局に入社。アナウンサーという不規則かつ多忙な日々を過ごす中、ふと花や植物を求めている自分に気付いたのだとか。

「幼少期に感じていた、花があるのとないのとでは気持ちが全然違うというのを、数輪でも感じられる花や植物は偉大だなと再確認したんです。自宅と会社の往復の毎日の中で、家に少しでも花や植物があるだけで活力が湧いてくるんですよね。また、取材の合間に立ち寄った公園で自然を感じることが本当に気持ちのリセットになり、癒やしになっていたんです。花や植物に触れているときが自分自身一番いい状態であることに気付き、フローリストになることを決めました」

テレビ局を退社後、前田さんは花き業を学ぶため、単身英国へ留学。そこでいくつもの感動を味わうことに。

「東京では満員の地下鉄に乗って通勤していて、〝いつか緑の道を歩いて通勤してみたい〞なんて思っていたんです。留学の後半ではコッツウォルズというエリアにあるスードリー城の広大な庭でインターンとして働いていたんですが、通勤路がまさに憧れていた緑の道で。というかもっとワイルドで、牧草をかき分けて、羊たちがいっぱいいる牧場を通り抜けて仕事場に通っていました。自分の思い描いていた理想が本当に実現したことに、ものすごく感動しました。あのときの景色はこれからもずっと覚えていると思います」

留学から戻り、都内の生花店で修業を積み、独立。2021年には東京・神宮前にフラワーショップを開店。

「私自身、花や植物など自然に触れることで癒やされて、前を向けたという実感があるので、一輪から気軽に買っていただけるような雰囲気づくりや仕入れを意識しています。花を飾るのはもちろん、自分自身で選ぶというかけがえのない時間を楽しんでほしいという思いもあります」

そんな前田さんにとって花や植物のある暮らしの魅力とはなんでしょうか。

「花や植物って人間とは違う時間軸を持っていると思うんです。ゆっくり咲いて、ゆっくり枯れていく。そういう人間とは異なる時間軸に触れることは、せわしない日々の中でとても貴重なことだし、一種のメディテーションにもなると思うんです」

花が持つ緩やかな時間軸に触れることは
本来の自分に戻る大切で尊い時間です

  • 選ぶのが楽しくなるような鮮やかなディスプレー。「花束を作るときに主役を決めないというのがNURのおすすめ。これ好き!という気持ちに素直になって選んでみてください」


「今は様々なことで多様性がキーワードになっていると思うのですが、花や植物にもこの流れは来ていて。どんな花をどう選ぶかは本当に自由です。自分が心地いいと感じる選択をしてほしいです」

花も緑も多様性の時代へ
できることはまだまだある

フローリストとして11年目を迎える前田さんが今、見据えている未来は?

「生花を通じてたくさんの夢をかなえられた10年間でした。最近はスローフラワーといって無農薬で花を栽培する農家も増えてきているので、これからは、花の選択肢を増やしていくというのが使命の一つだと考えています。
そしてもう一つ、木を植えることで土中環境が良くなるような庭造りを広めていけたらと考えていて、今造園会社で修業中なんです。土中環境を整えてなおかつ良い木を植えたら生物の居場所になり、多様性にもつながり、水もきれいになるはずなんです。そういった豊かな庭がどんどん広がっていったらと願っていますし、私も携わることができたらと思っています」


「花を暮らしに取り入れるようになってから良かったことが、四季を感じられるようになったことです。小さな変化に気付ける自分でいられるってとても幸せで心地いい状態だと思っています」

Q.1 花の高さはどれぐらいにするとバランスがいい?
花の高さは花瓶の2.5倍まで。段差をつけて生けると◎
一番背の高い花を花瓶のおよそ2.5倍までにとどめておくといいです。異なる高さの花で段差をつけるとバランスよくまとまります。

  • Q.2 複数の花を生けるとバラバラになって不格好なのですが…
    花瓶の先端が少しすぼまっているものを選ぶと花止まりがいい
    間口が広いとバラバラになりやすいので、写真の花瓶のように少しすぼまっているものを選ぶと花がしなだれることなく美しく飾れます。

Q.3 水はどれぐらい入れるのが花にとっていいの?
水は花瓶半分ぐらいが基本。花によっては浅めがいいことも
バラなど茎が堅いものは花瓶半分ぐらいまでたっぷり水を入れて。ガーベラなど茎が柔らかめのものは浅水にしてこまめに水を入れ替えて。

  • Q.4 複数の花を生けるとバラバラになって不格好なのですが…
    間口に手が入り洗えるサイズ感が万能
    どんな花や植物にもマッチし扱いやすいのが円筒型の花瓶。洗いやすく常にきれいな水を入れられると花の長持ちにもつながります。

What's GOOD LIFE for you?
自然とつながる

  • 「自分単体で過ごしているとなかなか幸せって見つけにくいと思うんです。私の場合は花や植物を見たり触れたりしているときが幸せで自分らしいと思えます。
    自然が幸せの媒介役になってくれているのかも」

花と植物のある暮らし
プラスワンの楽しみ方

花と植物に触れる日々の魅力をたくさん教えていただきましたが、違う側面での楽しみ方もある、と前田さん。

「インテリアとして花瓶を飾るのも楽しいのでおすすめです。絵やオブジェを飾る感覚で、棚やテーブルに花瓶を置いてみる。花があればより華やかになりますし、花がなくても花瓶がオブジェ代わりになり、空間にリズムが生まれると思うんです。飾りやすい花瓶は円筒型とお話ししましたが、インテリアとして考えたときはもっと自由でOK。一輪挿しもかわいいですし、個性的な形や絵柄のものもたくさんあります。花を飾るのに足踏みされている方は、インテリアの一つとしてお好きな花瓶から選ぶのもいいかもしれませんね!」

さて、花瓶探しに出かけませんか。

NUR フラワーストアには大小絵柄も様々な花瓶をラインアップ。「ビンテージの1点ものも味わいがあっておすすめです」と前田さん。

この記事は、2025年1月26日発行の日経REVIVE2月号に掲載された内容です。

取材裏話

1月号「花と植物」前田有紀さん

会社勤めをしてから「花のない暮らし」を続けており、花といえば退職記念に贈る(カスミソウ中心)、お墓に供える(菊が中心)くらいのお付き合い。前田さんのお店Nurは店内ディスプレイからセンスの塊そのものです。ひと昔前はお花、お茶、着付けは花嫁修業の代表的なお稽古でした。中でもお花は華道と呼び、各流派の師匠に学ぶ生け花のイメージがあったのですが、時代ともに自分のセンスでカジュアルに楽しむ流れになってきていることを実感しました。ゆったりと流れる植物時間を取り入れたいものです。