芸術と文化が日常に溶け込む味わい深い街
|高円寺|阿佐ヶ谷|荻窪|
カバー特集
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美食家・角野卓造さんと
地元でおいしいもの探し
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2021年7月25日
愛する中央線沿線の地元で
行きつけの“おいしい”を再訪
文字通り東京の中央を横切る形で走るJR中央線。
オフィス街、文化の街、サブカルの聖地など、個性的な街が集まり、住みたい、住みやすい沿線として知られています。
人生のほとんどを中央線沿線で過ごし、現在も荻窪在住の俳優、角野卓造さんに街の魅力を聞きました。
荻窪在住歴39年です
NAVIGATOR
角野卓造
かどの・たくぞう俳優。1948年、東京生まれ。学習院大学卒業後、文学座附属演劇研究所入所。舞台をはじめTV、映画、ラジオ出演など幅広く活躍。2008年には紫綬褒章受章。 美食家としても知られ8月に「続・予約一名、角野卓造でございます。(京都編)」を京阪神エルマガジン社から出版。
撮影/吉澤健太 編集・取材/澤村 恵 ヘアメーク/ISINO アートディレクション/本多康(Cumu)
都会すぎない
ゆるりとしたムードが
中央線の魅力
東京駅と高尾駅を結ぶJR中央線。ターミナル駅である東京、3大副都心のひとつ新宿などの巨大な街もあれば商店街が多く点在し、人々の暮らしに寄り添う街もあり、どの駅も個性豊か。そんな中央線が持つ独特の雰囲気に魅せられ、今も荻窪で暮らしている角野卓造さん。
「僕ね、東京で生まれたんだけど、一時おやじの仕事の関係で大阪で暮らしていたんです。中学に上がるタイミングでまたおやじの仕事の縁で東京に戻ってきたんだけど、荻窪から1年、祖母が住んでいた四ツ谷から1年、そしておやじが初めて東京で家を持った武蔵小金井から1年、中学校に通ったんです。それから28歳まで武蔵小金井の実家で暮らしていました。ようやく飯が食えそうだ、家賃払えそうだってなって一人暮らしを始めたのが阿佐ケ谷。阿佐ケ谷ロイヤルマンションって全然ロイヤルじゃないんだけどさ(笑)。今で言う2DKかな。その後、奥さんと結婚して子供が生まれるまで6年ぐらい住んでたかな。34 歳のとき、荻窪に家を建ててね。それからずっとよ。 39 年住んでますよ」
中央線沿線から離れないのはなぜで しょうか。
「なんででしょうね(笑)。ほかを知らないというのもあるかもしれないけれど、僕ね、小さなころから鉄道が大好きで。今も仕事もプライベートも移動は電車なんだけど、中央線の駅ってどの駅も個性豊かじゃない。下町っぽい雰囲気もあれば文学・芸術が薫る街もあったりね。ちなみに荻窪は昔、別荘地だったからね。東の荻窪、西の鎌倉って言ったかな。その名残か今でも大きな家屋が残っていて、高円寺、阿 佐ケ谷と比べても落ち着いた雰囲気です。高円寺は若者文化が色濃く、阿佐ケ谷は昔から住宅地って感じでまた雰囲気が違う。こんなふうにさまざまな要素が交ざり合っていて面白いんですよ。その空気感が電車に乗っていても感じられて。中央線ならではの温度感っていうのかな。それが好きなんです」
あちこちでかけなくていい
おいしいものは地元にある
美食家としても知られる角野さん。地方公演のほか、映画やドラマの撮影で日本全国を巡りたくさんのおいしいものに出合ってきたとか。
「僕はね、なんでもいただくしなんでも食べたい。つまり食いしん坊なんです(笑)。今まで日本全国いろいろな場所を回らせてもらったけど、昔はネットもガイドブックもないからおいしいお店の情報は全部先輩からの口伝え。ソバだったらどこどこ、中華だったらどこどこ…みたいな感じでね。本当にたくさんのおいしいお店にお邪魔しましたよ。たくさん巡った中で改めて1人で再訪したいと思って、今は仕事の関係もありますが、毎月京都に行 っています。東京にいるときも昔は六本木、赤坂、麻布十番などの港区に飲みや食べに 出かけていった時期もあっ たけど、もうね最近は地元で十分。というかここら辺が落ち着くんですよね。おいしい食事もお酒も楽しめますから。京都は程よい緊張感でお客として行くところ、地元はふらりと立ち寄れるところですかね」
今回訪れたお店は全て角野さんの推薦。
「コロナもあってどの店もご無沙汰でしたが、相変わらずの味と雰囲気でうれしいですね。ヴィオロンはそれこそ阿佐ケ谷に住んでいた 40 年ほど前に2、3度伺ったことがあって。オーディオが好きなこともあって、どんな音を鳴らしてらっしゃるのかな、なんて興味が湧いて。久々に伺いましたが落ち着く空間ですね。隣のタイ料理も本当においしくて。当時まだタイ料理屋さんって珍しくて、というか専門店第 1号なんじゃない?っていう感じで。皆電車に乗って食べに行ってましたよ。荻窪のフレンチはね、なんとタクシーの運転手さんから教えてもらったんです。味はもちろん、コースだけでなくオードブルだけやタパス(小皿料理)なんかも出してくれるから1人でもふらりと立ち寄れて。最近はすっかり足が遠のいてしまっている高円寺ですが、 町中の七面鳥は玉袋筋太郎さんの番組で紹介されているのを見て、むむ、これは食べてみたいと食指が動いてね。名物のオムライスがこれまたうまいの。どの店も個性があって雰囲気は違えど、気取ってないのが心地いいんです。やっぱり中央線沿線はいいなぁとつくづ く思います」
新宿から快速で2駅目
古着屋の多い若者の街 高円寺
ボリューム満点のオムライスにはキャベツの千切りと中華スープ、漬物がついてなんと650円(税込み)。「久々に食べたけど、やっぱりうまい」と角野さん。久方ぶりの再訪にご満悦でした。
多くの文士が愛した
落ち着きのある街 阿佐ヶ谷
著名人も訪れるというヴィオロン。作家、五木寛之さんの生原稿が飾られていたり、アート作品やたくさんのレコードが置かれていたりして、それらを見にくるお客さんも。いつ訪れてもくつろげる安心感も魅力。
平成元年のオープンからメニューの品数も味も変えていないというこだわり。いつ来ても変わらないおいしさを提供したいというシェフの思いがあたたかい。グリーンカレー1600円(税込み)/ピッキーヌ
隠れた名店が多い
大人の美食街 荻窪
「コースだけでなく、小皿料理もお出ししています。タパスとワイン1杯など、気軽に立ち寄っていただけるフレンチを目指しています」とオ ーナーの薗部さん。オードブル盛り合わせ・2人分 3785円(税込み)
この記事は、2021年7月25日発行の日経REVIVE8月号に掲載された内容です。
取材裏話
8月号「高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪」角野卓造さん
角野さんはグルメで有名ですが、とても健康に気を使われているそうです。朝食は納豆や豆腐、野菜中心のメニューが定番で、人間ドックは毎年受診されている、と教えていただきました。そんな角野さんのお気に入り立ち寄りスポットは、荻窪タウンセブンの地下と新宿伊勢丹の地下だとか。また地方ロケ・公演では、「ジャズ日本列島」に載っているジャズ喫茶探訪を楽しまれているそうで、「一人になれる貴重な時間」とおっしゃっていました。
あこがれは、「杉並区南荻窪の一戸建てにいつか住みたい」。
やはり中央線です。
記事内で紹介している場所
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店舗情報
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中華料理 七面鳥
老舗の町中華
食べるべきは絶品オムライス昭和34年創業。コの字形のカウンターがある店内はノスタルジックな雰囲気。中華ながら名物はオムライス。やさしい味わいのケチャップライスに半熟の卵が合わさって1度食べると忘れられない味。時間ぎりぎりに行くと売り切れの場合もあるので注意。東京都杉並区高円寺南4-4-15
[TEL]03-3311-5027 [営]11時30分〜 14時30分、17時30分〜19時、全てラストオーダー [休]土曜 -
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名曲喫茶 ヴィオロン
クラシックを堪能できる
昔懐かしい名曲喫茶音楽の仕事に携わっていたオーナーが音を楽しんでもらうためウィーンのコンサートホール、ムジクフェラインの25分の1サイズで劇場を再現したこだわりの名曲喫茶。自作のスピーカーから流れるクラシックとコーヒーで至高のひとときを。東京都杉並区阿佐谷北2-9-5
[TEL]03-3336-6414 [営]12〜20時 全 てラストオーダー [休]火曜 -
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ピッキーヌ
創業時から変わらない
感動する本場タイの味タイの宮廷料理人一族の生まれで、名曲喫茶ヴィオロンのオーナーの奥さまが「日本人が感動するタイ料理を」とメニュー開発に3年かけたというタイ料理店。スパイシーながらコクとまろやかさが共存したグリーンカレーはお店の看板メニュー。東京都杉並区阿佐谷北2-9-5
[TEL]03-3336-6414 [営]11〜15時、 17〜20時 ラストオーダーは各30分前 [休]火曜 -
店舗情報
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ポワン・ドゥ・デパー
コースもタパスも楽しめる
カウンターフレンチ27年前に阿佐ケ谷でオープンし六本木に移転後、荻窪の地で再オープンしたカウンター10席のフレンチ。クラシックなフレンチから日本酒にも合いそうなタパス、デザートまで寡黙なシェフが腕をふるう。アットホームな雰囲気で家族連れでも訪れやすい。東京都杉並区天沼3-12-6
[TEL]03-6915-1660 [営]12〜15時、17時 30分〜20時 ラストオーダーは各30分前 [休]月曜、火曜 -
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竹中書店
荻窪の地で60年
珍しい本を扱う古書店学術書を専門に扱う創業から100年を超える老舗古書店。経済、歴史、美術、法律、哲学、建築など、扱うジャンルも幅広い。店内の棚にはびっしり本が並んでおり圧巻。店前の平台にはお得なコーナーも。じっくりゆっくり、これという1冊を探してみるのもいい。東京都杉並区荻窪5-21-12
[TEL]03- 3391-2135 [営]10時30分〜19時30分 [休]火曜