10 2021

日常からアートを感じて人生をもっと豊かに

アート特集

カバー特集

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石丸幹二さんと体感
日常を彩るアートのちから

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2021年9月26日

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん

自分の中のこだわりに気づく
それがアートを楽しむ第一歩

俳優、歌手、サックス奏者と多くの才能を持つ石丸幹二さんと芸術の秋を堪能しようと、東京都現代美術館を訪れました。
日本を代表する現代美術家の1人である横尾忠則さんの「GENKYO 横尾忠則」展を観覧しながら、アートの魅力やその持つちから、楽しみ方について聞きました。

アートの中に生きています

NAVIGATOR

石丸幹二

いしまる・かんじ1965年愛媛県生まれ。東京芸術大学音楽部生学科在学中に劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」ラウル・シャニュイ子爵役でデビュー。17年間看板俳優として活躍し退団。その後は舞台、ドラマ、司会、音楽と活躍の幅を広げる。2017年からテレビ朝日系のクラシック音楽番組「題名のない音楽会」6代目司会者を務める。

撮影/長野陽一 編集・取材/澤村 恵 ヘアメーク/中島康平 アートディレクション/本多康(Cumu)

東京の東側、下町風情が残る街並みとおしゃれなカフェが共存し、感度の高い若者から近年支持を集める清澄白河。このエリアのオアシスとして愛される木場公園内にあるのが現代アートを堪能できる東京都現代美術館です。

「美術館へは行きますが、こちらへは初めてお邪魔しました。直線が少なく曲線とのバランスが絶妙な建物ですね。なんだろう、自由にいられる空間ですね。気持ちがいいなあ」
アートというと非日常的なものというイメージを持つ人も少なくないですが、石丸さんはその逆で、日常にあるといいます。

「僕はね、アートの中に生きている感覚があるんです。どういうことかというと、家具や絵画など見えるものはもちろんのこと、流れる音楽もそう。日々、目や耳にして触れて感じるものすべてがアートだと思うんです。だから僕の場合、仕事も含め生活している中でアートが止まる瞬間というのがないんですよ。特別な作家の絵や作品じゃなくても、置物や椅子など気に入ったものに囲まれているのが幸せです。その時々で気分も感じ方も変わりますから。例えばオブジェでなんかこの角度嫌だなと思ったら置き方を変えてみたり、思いつくまま他の作品に入れ替えてみたりしていますよ。大切にしているのはその時の自分が幸せな気分になるかどうかをしっかりキャッチすること。自分のシグナルに繊細に反応することはアートを楽しむことにもつながるんじゃないかな。例えばスーパーで売られている食品のパッケージを見て色使いが好きだなとか、デパ地下で珍しい容器に入った商品を見て不思議な形だなとか、面白いと感じている自分に気づくこと。意識をちょっと向けることでもうアートとは触れていると思うんですよね。今の時代、身の回りにアートはあふれていますから。気づくことが楽しむ第一歩だと思うんです」

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん5

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん2

  • 日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん3《二刀流》2018年 作家蔵(横尾忠則現代美術館寄託)
    幼い頃から二刀流の宮本武蔵が好きだという横尾さんが描く、現代の二刀流、メジャーリーガーの大谷翔平選手。投手と打者、2人の大谷選手がくるくる回転するコミカルな作品。
  • 80歳を超えてもなお生み出し続ける作品の数々に衝撃を受けたと石丸さん。「巻物がトイレットペーパーだったり、ほうきが掃除機だったり、自由な発想力に刺激を受けます」

    日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん3

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん7
日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん6
《滝のインスタレーション》 (部分)1999-2021年 作家蔵
制作の材料として集めた1万3000枚もの滝の絵はがき。大量の絵はがきに神秘的なものを感じた横尾さんは供養としてインスタレーションを制作。「横尾さんの体内に入り込んでしまったような感覚!衝撃的です」

80歳まで現役で! 石丸さん
人生後半をどうアートする?

もともとグラフィックデザイナーだった横尾忠則さん。絵画に転向したのは40代半ば。40年余りの時がたった現在も85歳という年齢をものともせず精力的に作品を生み出しています。そんな横尾さんの生き方と重なる部分もある石丸さん。

「僕にとってのターニングポイントは、サックスの演奏から声楽へ転向した22歳の時と、17年間在籍した劇団四季を辞めた42歳の時。どちらも大きな変化ですが、いずれも新しい世界へ飛び込む決断をしたからこそ今につながっているなと感じます。新しいことを始めるのって分からないことだらけなので苦しいんですけど、その苦しさを楽しく感じられるようポジティブスイッチを入れてやってきました。人生100年時代といわれていますが、56歳になった今、フルに自分の感覚を研ぎ澄ませてできるのってあと20年ぐらいだと思うんです。今のまま突っ走れる10年、少し様子を見ながらの10年かなって。だからこれからの20年は充実した生き方をしたいなって強く思います。80歳から先は……定年ってことで(笑)。そこは定めたくないけれど、やっぱり誰かのために歌い、言葉を伝え続けていたいです。人生最後にできるのはやっぱりそれかなあ」

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん11
  • 日経REVIVE 2021年10月号カバー特集9
    愛猫タマへのレクイエムとして90点以上描かれた作品も展示。「他の作品とは違うエネルギーや愛情を感じますね。描くことでタマへの気持ちが刻まれていくでしょうし、愛も深まりますよね。タマは愛されていたんですね」
  • 日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん8

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん10
左:《血の涙》1983年 右:《男の死あるいは三島由紀夫とR.ワーグナーの肖像》1983年
ともに横尾忠則現代美術館蔵

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん14

  • 日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 東京都現代美術館ミュージアムショップ
  • 日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん 13

美術館内には中庭を眺めながらゆったり過ごせる開放感あるカフェ「二階のサンドイッチ」、現代アートの関連書籍やアーティスト・クリエーターによるグッズが購入できるミュージアムショップ「NADiff contemporary」も。

石丸幹二さん主演ミュージカル「蜘蛛女のキス」

日経REVIVE 2021年10月号カバー特集 石丸幹二さん主演ミュージカル「蜘蛛女のキス」

1990年代にミュージカル化され、多数の賞を獲得した人気作が気鋭の演出家・日澤雄介の手によって待望の上演。獄中を舞台に繰り広げられる人間ドラマを叙情的でメロディアスな楽曲とともに堪能して。
東京公演:11月26日~12月12日 東京芸術劇場 プレイハウス
[TEL]03-3490-4949(チケットセンター、11~18時・土日祝は休み)

この記事は、2021年9月26日発行の日経REVIVE10月号に掲載された内容です。

取材裏話

10月号「アート特集」石丸幹二さん

東京都現代美術館での横尾忠則展は、展示の数に圧倒されました。原色使いのポップな作品、猫のタマちゃん、Y字路、滝の絵葉書の部屋……膨大な横尾作品に囲まれた石丸さんは、まさにアート特集にぴったりなオーラを醸し出していました。インタビューでは80歳を超えてカムバックした「アンリ・サルヴァドーレ」というフランスの歌手を尊敬し目指している、とお話しされていました。気になった方は聴いてみてはいかがでしょうか?

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