12 2021

誇り高き老舗が集う
クラシカルな街

|銀座5〜8丁目|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

テリー伊藤さんと
クラシックな銀座探し

posted by 日経REVIVE

2021年11月28日

日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん

品格とプライドが息づく
銀座の街でクラシックに原点回帰

「銀座は故郷(ふるさと)みたいなものだよ。ほっとする場所」
そう語る演出家のテリー伊藤さんと銀座5~8丁目をお散歩。
年々その姿が変わる銀座の中でも変わらずにあり続ける「粋なクラシック」をテリーさんナビゲートでお届けします。
古き良きは新しい。銀座散歩、スタートです。

銀座はほっとする場所です

NAVIGATOR

テリー伊藤

てりー・いとう演出家、テレビプロデューサー。1949 年東京都中央区生まれ。大学卒業後テレビ制作会社に入社。数々のバラエティー番組の制作に携わる。1985 年に独立後はヒット番組を手がけつつ、コメンテーターや映画監督、CM演出、店舗プロデュース、執筆業など多岐にわたり活躍。

撮影/吉澤健太 編集・取材/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

銀座はほっとできる場所
クラシカルな街並み、
このままでいてほしいね

とある秋晴れの日、銀座6丁目に三つぞろえのスーツを着たロマンスグレーの紳士が。銀座まで歩いて10分の隣町、築地出身のテリー伊藤さんです。

「銀座の取材だって聞いたからおしゃれしていこうと思ってね。帽子をやめたら俺、こんなにグレーヘアだったんだって気付いて。ならばグレーで合わせようとこのスーツにしました」

まもなく72歳を迎えるテリーさんですが、銀座歴は実に65年以上。幼い頃から慣れ親しんできたという銀座の街の思い出を聞きました。

「築地出身で銀座はすぐ隣。だから本当にしょっちゅう遊びに来ていましたよ。デパートの屋上でやってるイベントやおもちゃ売り場へおふくろに連れていってもらったり、小学校に上がったら友達同士で遊びに出かけたりね。今はもうあまり見かけなくなったけど、当時の銀座には回転扉がいっぱいあって。クラシカルだよね。だけど子供のときはそこで遊んでよく怒られてましたね(笑)。生まれ育った築地は、映画『ALWAYS三丁目の夕日』の世界で、いわゆる下町。おもちゃっていっても10円とか20円とかのでさ。だけど銀座のデパートにあるのってもう全然違うわけ。ブリキのおもちゃにしろ、ロボットにしろ、すごいんだよ。感動したよね。だから銀座は夢の国みたいだったね」

日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん-銀座の街で

幼少期のテリーさんの目に映る銀座は夢の国。青年期になるとまた違う銀座の景色が広がります。

「僕が15、16歳ぐらいの頃かな。みゆき族がはやって。アイビールックに身を包むのが最先端でした。その頃学生といえば白の開襟シャツが一般的だったからアイビールックはちょっとした不良扱い(苦笑)。みゆき通り歩いて家に帰ろうとしただけなのに、何度か補導されたりして。『あ、おまえ丸武(生家)の息子じゃねえか』なんて言われて。色気付き始める年ごろでもあったから、ファッション雑誌読んで、めげずにアイビールックしてましたよ。で、女の子に声かけたりしてね。若いよな、青春ですね。でもさ、若いからお金ないじゃない(笑)。そこでよく行っていたのが画廊。銀座って今も昔も画廊がたくさんあるでしょう。画廊って時間を潰せるんですよ。いい絵も見られるしね。だからデートは画廊に行ってから、今はもうないんだけど、聖地といわれていた喫茶カリオカやエスペロでお茶をするっていうのが定番コース。思い返してみると昔の銀座には鼻息荒い若者がいっぱいいた。女の子も服装で見分けがついたし。着物を着ている人は商売の人だから声かけちゃダメ。ローファーは学生だからOKとか(笑)。今でいうギャルと着物を着たお姉さんが共存している面白い街でした」

日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん-資生堂パーラー銀座本店レストランで

  • 日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 資生堂パーラー銀座本店レストランのビーフカレーライス
  • SINCE 1928 銀座8丁目 資生堂パーラー銀座本店レストラン「カレーって肩肘張らずに食べられる。女の子とデートのときとかもリラックスできて失敗しなくていいじゃない?(笑)何より資生堂パーラーのカレーはおいしいんだよね。食器もすてき。空間とサービスも一流。そう思うと3000円も高く感じないよね」とテリーさん。ビーフカレーライス3000円(税込み・サービス料別)。
  • 日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん- レストラン個室で1928年にイタリアから運ばれたステンドグラスのうち3枚がレストランの個室に使われている。「100年ほど前のものでしょう? ハイカラだよね~本当に」
  • 日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん-銀座の街で「グレーの建物が多いなか、このレンガを思わせるオレンジ色の外観はしゃれているよね。ヨーロッパの雰囲気もあってさ」とテリーさん。

大人になって訪れる銀座で
クラシカルの良さを再確認

鼻息荒い若者で盛り上がっていたという銀座の街。その姿も今は鳴りを潜めていますが、銀座にとってはその方がいいのかもしれない、とテリーさん。

「銀座に行くのってひとつの晴れ舞台みたいなもので。昔は若者が血気盛んに集まっていたけど、今は渋谷、青山、表参道ってさまざまな街が発展して若者が集まる場所も分散されたじゃない。だから銀座に若者は減ったけど、それでいいのかも。今日お邪魔したような老舗のオーナーたちがプライドを持ってやってるんだよね。そのプライドやある意味での敷居の高さというのが、銀座の街の品格をつくっていると思うんですよ。だからなるべく街は便利に進化しないでほしい。銀座の個性がなくなってしまうから。これからもクラシカルで上品な街であってほしいと願っています。そんな思いもあって、大人になってから銀座に来るときに心がけていることが。普段はスエットとか、カジュアルな格好をしているんだけど、今日みたいに三つぞろえのスーツにネクタイっていうクラシカルな格好が逆にいいかなって思っているんです。高齢者だからこそできるスタイルかなと。スーツにステッキを持って英国紳士気分でクラシカルな銀座を散歩。なじみのレストランや喫茶店で過ごすのは1人もいいけど、やっぱり女の子とデートがいいかな」(笑)

  • 日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん-ステッキを選ぶ
  • SINCE1882 銀座6丁目 銀座タカゲン銀座タカゲンのステッキ

日経REVIVE 2021年12月号カバー特集 テリー伊藤さん-憧れのお店タカゲンで
「タカゲンさんは憧れのお店。今日は買う気で来ました。楽しみです」とテリーさん。お目当ては名探偵ポワロが作中で持っているスワンのステッキでしたが、残念ながら売り切れ中。「これもすごいかわいいよね」とこの日は持ち手が犬モチーフのステッキをお買い上げ。

僕、甘いものが大好きなの
だから1人でも喫茶店にはよく行きます

  • 銀座ウエスト本店 カスタードシュークリーム一番人気だというカスタードシュークリーム。甘さ控えめで上品な味わい。ケーキセットは飲み物の金額+330 円(税込み)
  • SINCE1947 銀座7丁目 銀座ウエスト本店銀座ウエスト本店

銀座ウエスト本店 生菓子
目にも鮮やかな生菓子はさっぱりしたバタークリームが特徴。このほか、クッキーなどのドライ菓子にもファン多数。

この記事は、2021年11月28日発行の日経REVIVE12月号に掲載された内容です。

取材裏話

12月号「銀座5〜8丁目」テリー伊藤さん

テリーさんがおっしゃっていた大人の楽しみ、パイプ編。船乗りになっている自分、旅の途中の自分、ひとりでコーヒーを飲んでいる自分を想像しながらパイプをくゆらす時間が最高なのだとか。幼馴染には銀座のビルオーナーもいらっしゃり、撮影途中にふらっと「あいつどうしているのか?」と飛び込みでビル内の事務所を訪ねたりしていました。当然、事務員はびっくりでしたが。
エンディングノートは作らない、旅の途中で最期を迎える、のが当面のテリーさんの夢です。

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