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日常を豊かな時間に変えるひととき

|茶を喫する|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

ルー大柴さんの「茶道」GOOD LIFE
茶を喫する

posted by 日経REVIVE

2022年12月11日

心を整え、人とつながる
今、改めて知りたい茶道の魅力

日本に古くから根付く喫茶文化。
その魅力について改めて学び深めるため茶人、大柴宗徹ことルー大柴さんに取材。
茶道を始めて16年の中で感じた魅力や茶道に出合って変わったこと、さらに第2のGOOD LIFEについて聞きました。

NAVIGATOR

ルー大柴

るー・おおしば1954年、東京都新宿区生まれのお笑いタレント、俳優、茶人。モデルや舞台俳優を中心に活動をスタート。 出演したテレビCMの「トゥギャザーしようぜ」というキャッチコピーが話題を呼び一躍人気に。以降、バラエティー番組やドラマの俳優など多岐にわたり活躍。

撮影/NAE.JAY 編集・取材/澤村 恵(編) アートディレクション/本多康規(Cumu)

ルー大柴さんが茶道を始めたのは52歳のとき。きっかけはマネジャーさんからの勧めがあったからだとか。

「何か芸事をってことで茶道を勧められましてね。今まで姉がたてたお茶を飲んだことはあったけれど、それぐらいなもんでね。茶道についてはもちろん無知だし、まさか自分が習うことになろうとは思ってもみなかったです。でもやってみようとマネジャーと2人で、ご紹介いただいた東京・神楽坂にある遠州流の門をたたいたんです」

未知の世界への挑戦は怖くなかったですか?

「最初はね、正直合わないかなとか思ってたんですよ。でも、3デイズ(日)坊主は避けたい。とりあえずストーン(石)の上にも3イヤーズ(年)っていうじゃないですか。だから3年は頑張ってみようって。当時は結構仕事も忙しかったんだけど、時間をつくってお稽古に通いました。茶道はお作法はもちろん、器や茶器についてなど覚えることがいっぱいあるんだけど、やっぱり積み重ねなんだよね。不思議なもので3年ぐらいたったら楽しいというか、茶をたてる時間が喜びになりました」

ルーさんは茶道の魅力をどんなところに感じていますか?

「僕にとって茶道の魅力は2つあって。ひとつはコミュニケーションツールであるところ。茶人として気持ちを込めてたてたお茶を客人がおいしいと喜んでくれる。ああ、お茶をたててよかったと思う瞬間です。多くの言葉を交わさずとも客人とお茶を介して心を通わせることができる。もうひとつは心が整う時間であるということ。僕、テレビだと〝動〞の部分がイメージの大半を占めると思うんだけど、もちろん、〝静〞の部分もあるわけですよね。お茶をたてる時間、お点前を通して心が整えられる感覚があるんです。純粋に
なっていくというか。長い人生の中でこういう時間があってもいいよね。茶道を始めて改めて出合えた感覚です」

お点前を通して心がどんどん純粋に
そして穏やかに整っていくんです


インタビューを終え、お点前を披露いただく場面になるとムードが一変。穏やかながら凛(りん)とした空気に。「お点前に入るときはやっぱりスイッチが入りますよね。心を入れておもてなしするわけですから」とルーさん。

  • 茶会の時期やテーマ、お客様をイメージし、どんな茶菓子を用意するかも亭主側のもてなしのひとつ。「遠州流御用達の源太萬永堂にお願いして新年を意識した紅白の茶菓子を作ってもらいました。ともに成長していくイメージを添えて相生(あいおい)と名付けました」

体が動く限り何かを得ていく
そんな人生を送りたい

日本に根付く喫茶文化の中でも現代人にとってハードルが高く縁遠い印象がある茶道ですが、もっとイージー(気軽)に触れてほしいとルーさん。

「あえてティー(茶)道と言わせてもらうけれど、お茶をたてること自体はすぐできるようになるんですよ。作法や所作など格式ももちろん大切ではあるけれども、もっと気軽なお茶の飲み方でもいいと思うんです。野点もいいもんですよ。僕もロケ先に野点のセットを持っていったりするんだけど、器も素焼きのもので、茶菓子もチョコだったりして。ささっといれて出すんだけど、やっぱりスタッフみんな喜んでくれるんですよ。茶道がうんぬんじゃなくて単純にお茶ってほっとするじゃないですか。ルー流ですけどね。こんなふうに日々のライフ(生活)にもっとお茶を取り入れてほしい。もちろん、遠州流をはじめとした茶道のお教室で稽古を始めてもらいたいですけどね」

52歳で茶道を始め、現在68歳。茶人としてはもちろん、芸能活動も精力的に行うルーさん。第2の人生をどう思い描いていますか?

「僕ね、座右の銘というか、自分で思いついて大事にしている″恥かけ、汗かけ、涙しろ〞っていう言葉があって。これね、恥をかくことを恐れず、汗をかいて一生懸命働いたり行動したりしていい涙を流そうってことなんだけど、こういう人生を送りたいなと思っているわけ。僕は52歳で茶道を始めたけれど、いくつになっても遅いなんてことは絶対ないわけよ。ボディー(体)がムーブ(動く)する限り、何かをゲットしてライフ(人生)の糧にできたらいいよね。それがティー(茶)道なんてどうですか? すてきじゃないかな」


「茶人としてお茶をたてるときは、自分と向き合い心が落ち着き整っていく感覚があるんだけど、お茶をいただくとやっぱり無条件にほっとするよね。ああ、おいしいって思う時間を持てるのっていい」

What's GOOD LIFE for you?
Going My 道(Way)

  • 「自分自身で決めてきたライフ(人生)だと思うんだけど、自分ひとりでやってきたってことじゃなくて、たくさんの人の支えがあって今があると思っています。その上で自分で決めたライフ(人生)。最高に幸せだよ」

この記事は、2022年12月11日発行の日経REVIVE1月号に掲載された内容です。

取材裏話

1月号「茶を喫する」ルー大柴さん

ルーさんの言葉で印象的なのは、茶道は自分の中の「静」を見つめ心を整える時間。忙しい仕事の「動」の部分とのバランスをとる大事なひと時、との言葉。ビジネスパーソンにも響く言葉ではないかと思います。撮影当日は、カジュアルスーツでお越しいただいたのも、もっとイージーに茶道に触れてほしい、との思いの表れです。撮影場所は大久保にある茶話益田屋「正芳庵」さん。表通りはエスニックですが、障子を閉め切り、ルーさんがお茶を点てる所作が始まると、静寂の中に茶筅の音が心地よい空間に様変わりです。