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白石美帆さんの「器」GOOD LIFE
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2024年5月26日
毎日の暮らしと心が豊かになる
味わい深い作家ものの器
毎日の食卓に登場する器。
なんてことない1枚をとっておきの1枚に変えてみませんか?
量産品とは違い、一つとして同じものがないのが魅力だという作家ものの器。その楽しみ方を俳優の白石美帆さんに伺いました。
NAVIGATOR
白石美帆
しらいし・みほ1978年茨城県生まれの俳優。1998年、スポーツ番組「スーパーサッカー」のアシスタントとしてデビュー。同番組で8 年間アシスタントを務める。2002年に映画「白い船」で銀幕デビュー。以降数多くの映画、テレビドラマで活躍。現在テレビ朝日系ドラマ「ミス・ターゲット」で主人公の母親役を熱演。プライベートでは2016年に結婚。2児の母として子育てに奮闘中。
撮影/七咲友梨 編集・文/澤村 恵 ヘアメーク/越智めぐみ スタイリスト/富田育子 アートディレクション/本多康規(Cumu)
自分らしさを取り戻せる、癒しです
関東一の歴史を誇る笠間焼が有名な茨城県出身の白石美帆さん。幼い頃から器には何か引かれるものがあったといいます。
「私の母は仕事をしていて、夕飯にお総菜が並ぶこともありました。そのまま食べてもいいのに、私は自分の好きな器に移し替えて出していました。こっちの器に盛り付けた方がきれいだよ、という感じで。記憶はおぼろげですが、当時まだ小学校低学年ぐらいだったと思います。幼いながらに食卓や器へのこだわりがあったんです」
器と一口に言っても、量産品や作家もの、窯元のものなど種類はさまざまです。白石さんが生まれて初めて作家ものの器を手にしたのはなんと小学生のときだとか。
「故郷、茨城県で年に1度行われている笠間の陶炎祭(ひまつり)に父がよく連れていってくれました。確か小学生高学年だったかな。陶炎祭で見つけた器を購入したのですが、それが作家さんの器との出合いでした。一期一会の巡り合わせを感じられてとてもうれしかったことを覚えています」
その後大人になって訪れた旅先で忘れられない出合いを経験します。
「東北地方に旅行に出かけたとき、滞在した旅館で使われていた器がとってもすてきで。それを女将(おかみ)さんに伝えたら、この近所に窯元があるのよとご紹介いただき、作家さんから直接購入させてもらったんです。作り手の方から買うという経験は初めてで喜びが大きかったです。というのも、その土地に住まわれている方が、その土地の土や水、空気を織り交ぜながら、その手で一枚一枚作り上げるものってこうも味わいが違うのかと衝撃だったんです。
その土地の風土や作り手のぬくもりを自宅でも感じられるって特別な感覚。思いが伝わるからこちらもどんどん愛着が湧いていきます。なんてことない料理を盛り付けてもサマになるし、洗うのも不思議と苦ではないし、洗い終わったあとのぬれている姿もすてきだし、キッチンに置いてあるだけでもたたずまいが美しい。こんなふうにただ料理を盛るだけではなく、何十倍も楽しめるのが作家ものの器の魅力だと思います。同じように見えても二つとして同じものはない、唯一無二感にロマンを感じるのです」
日常を忘れて旅をした気分にもなれるとか。
「その土地、その土地で作家さんが違えば使う土も水も異なるわけですから。いろんな作家さんの器に触れることはまるで旅しているような感覚。そしてそれは私にとって癒やしであり、自分に戻れる時間なんです」
土っぽさを感じられる器が、近頃人気再燃。「少し荒っぽく、土っぽいものって温かみがあって好きです」と白石さん。
松村英治さん深皿(左)6600円、大沼道行さんオーバル皿(右)5500円(ともに税込み)。
「全国各地にいらっしゃる作家さんがそれぞれの土地の土や水を使い、魂を込めながら一枚一枚焼かれているんですよね。それぞれ異なる魅力を放つ器たちにパワーと癒やしをもらっています」
作家ものの器、何から始めよう?と迷われている方には飯碗がおすすめだと店主の柳田さん。「毎日使うから愛着も湧きますね。持ったときのフィット感がいいです」と白石さん。土井善男さんの飯碗4400円(税込み)。
より自由により心地よく
自分にフォーカスした人生を
作家ものの器の魅力に年々ハマっているという白石さん。
「以前、陶芸をしたときに〝自分の軸はブレちゃいけない〞と教わったのですが、なんだか人生に通じるものがあるなとしみじみ思いました。年齢を重ねるたびにどんどん器に魅了されていくのは、作家さんの生きざまみたいなものが見えるからなのかなと。器を通して人生哲学を学んでいる感じ。それがいつしか癒やしとなり自分に戻れる場所になっているのかもしれません」
現在45歳。俳優業をしながらお子さん2人を育てる白石さん。これからの人生をどう思い描いていますか?
「幼い2人に向き合っていると、子どもたちは日々成長していくのに私は退化してるんじゃないかって比べてしまうことがあって。でもそうじゃない。もっと自分の心にフォーカスしようと意識を転換するように。40代半ばにしてやっと私は私でいいんだと思えるようになりました。自分が心地よいなと感じられる時間、こんなことがしたいと思える時間を積み重ねていくことが、豊かな人生につながるのではと思っています。だからもっと自由に軽やかに毎日を過ごしていきたいです。大好きな器のパワーを感じながら」
器には人生が詰まっています
だから温かく味わい深く美しい
「好きな色やテイストがありますが、お店で選ぶときは不思議とこれだ!という直感が働きます。あれこれ難しいことは考えず、すてきだなと心が動いたことを大切にしています」
- きょう気になる1枚と白石さんが手にとったのは、杉原万理江さんの平中鉢(写真左)5170円(税込み)。「シンプルな白の器も好きでとても引かれました。お花のような柔らかなフォルムがなんともかわいらしく上品です」
What's GOOD LIFE for you?
私らしく生きる
- 「器選びと同様で、あらゆるセオリーにとらわれることなく、好きなものを選び、合わせることができる自分でありたいです。自分が自分らしくいられる人生こそが、一番幸せなんじゃないかと思っています」
この記事は、2024年5月26日発行の日経REVIVE6月号に掲載された内容です。
取材裏話
6月号「器」白石美帆さん
取材に訪れた「うつわ千鳥」さんは、実際に白石さんが器を購入されたことがあるお店です。作家もの、と言っても絵画や彫刻とは異なり「器」なので、日常に接することができる一番身近なアートとも言えます。大量生産の食器ではなく“うつわ”でいただく。風情のある食事になりそうです。なお訪問した「うつわ千鳥」店主の柳田さんは動画「うつわ屋のまかないごはん」をネットにアップしていますので、料理と器の組み合わせの参考にしてみては?