5 2022

海、山、湖ありの豊かな自然 都心から近い地方都市

|小田原|箱根|湯河原|

カバー特集

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おいしいのその先へ
大人の心を満たす食旅

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2022年4月24日

日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 @auberge AU MIRADOR 勝俣シェフ 1

フレンチの巨匠が見据える
地方創生の未来予想図

都心から車で1時間ほどの小田原・箱根・湯河原。
豊かな自然や美しい景観だけでなく、おいしいもの探しが楽しいエリアでもあります。
1986年に日本で初めてオーベルジュを箱根に開き現在もオーナーシェフとして日々進化を続けるフレンチの巨匠、勝又登さんに箱根の魅力を聞きました。

撮影/内田紘倫 編集・取材/澤村 恵 アートディレクション/本多康規(Cumu)

世がバブル景気に沸き始めた1986年に、日本で初の宿泊施設付きのフランス料理店=オーベルジュを箱根にオープンしたシェフの勝又登さん。フランスでの料理修業から帰国後、東京で何店舗も経営するほどのスターシェフが人気絶頂期に店をたたみ、オーベルジュを開いた理由は?

「料理に限らずどんな仕事もそうですが、時代の流れに左右されるもの。日本に帰国してから13年間忙しくやってたんですが、料理人生の転換期かなと思ったんです。ただフランス料理を提供するのではなく、現地フランスの空気感を一緒に伝えるのも我々料理屋の大きな役目かなと。おしゃれしておいしいものを食べるのが都会だけだった時代から、リゾートや自然の中でおしゃれしておいしいものを食べ、心のケアをする時代に。そんな場所が日本にもあるべき。それがすなわちオーベルジュだったんです」

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箱根の地を選んだ理由は?

「生まれ育ったのが静岡県の富士市というところなんですが、空気感が似ていたというのもあったかな。あとはやはり都心からのアクセスの良さ。海も山も畑もあってエネルギーに満ち、恵まれた土地ですよね」

しかし、最初から順風満帆ではなかったと勝又さん。

「最高の料理は最高の食材探しからだと思っているのですが、この食材の開拓が大変でした。根菜類が有名で大根などはものすごくおいしいんだけど、畑に行ったからって分けてくれるわけでもなく……。そこで地元の人が集まるマルシェのような場所に行って食材を買い込んで料理を始めたんです。このマルシェでの出会いをきっかけに農家や生産者との信頼関係が築け、少しずつ輪が広がり料理を起点としたコミュニティーが出来上がったんです」

  • 日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 @auberge AU MIRADOR 勝俣シェフ 5
  • 料理の仕上げをする勝又シェフ。「オーナーシェフは職人ではなくアーティスト。時代の流れや変化をキャッチし料理はもちろん、あらゆる方面にアンテナを張り柔軟でないといけません。若手のスタッフとも感覚を共有することをとても大事にしています」

時代を読み解きながら進化
勝又登が見つめるこれから

時代に先駆け箱根にオーベルジュを開いて36年。常に新しいことを仕掛け走り続ける勝又さん。

「フランス料理って生きるための食ではないんですよ。では何のためかと考えると、おなかを満たすためではなく、リラクセーションであったり、心のケアだったりなんですよね。変な話、うちにはおなかがすいている人は来ない。そんな人の目を大きくさせるのが僕のミッションなわけです」

お客様の期待に応え続けることにプレッシャーはありませんか?

「老舗は古いものを守るだけでなく、いつも新しいことを仕掛け進化するもの。例えば
30年前にはやった料理をずっと出し続けていてはお客様の期待は超えられません。常に時代を読み解きながら新しいことにチャレンジし、仕掛けていかないと。僕の中で理想や希望がなくなってしまったら、自分から出てくるものも古臭くなる気がするので柔軟に向き合っていきたいですね」

昭和バブルから平成、令和と時を経て、この先をどう見据えていますか?

「時代はガラリと変わり、地方だから意味があるという場面がこれからどんどん増えてくると思うんです。僕は地方の食文化がもっと育つといいなと考えているので、料理を通して箱根という土地の魅力を日本のみならず世界に向けて発信していきたいです。それが僕の使命です」

日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 @auberge AU MIRADOR

その土地の持つ素晴らしさを
料理を通して発信し続けたい

箱根 革新的な料理と出合える街

日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 @auberge AU MIRADOR アスパラガスとバショウイカ
アスパラガスとバショウイカ
トンネル栽培されたアスパラガスに薫製したバショウイカをおろしたものに、発酵させたレモンとキャビアを混ぜたクリームを添えた
一皿。アスパラガスの甘みとレモンの酸味、イカの芳醇(ほうじゅん)な香りが絶妙。
(オーベルジュ オー・ミラドー)

小田原 ものづくりのプライドが宿る街

日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 小田原 籠淸

  • 日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 小田原 籠淸 鳳凰2本入り
  • 1本ずつ手付けされる高級板付き蒲鉾は1日200本のみの生産。
    生魚を原料としており、風味豊かで手付けならではのしなやかさと弾力感が魅力。板付き蒲鉾「鳳凰 2本入」8748円(税込み)。
    (小田原 籠淸)

湯河原 ぬくもりあふれるおいしさに出合える街

日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 餃子ショップ

  • 日経REVIVE 2022年5月号カバー 小田原|箱根|湯河原 特集 餃子ショップ 坦々やきそば
  • 指定のソースを使うことが坦々やきそばの条件。元祖である餃子ショップは、ピリ辛ソースが麺に絡み食欲をそそる味わい。サクラエビのアクセントが抜群。坦々やきそば650円(税込み)
    (餃子ショップ)

この記事は、2022年4月24日発行の日経REVIVE5月号に掲載された内容です。

取材裏話

5月号「小田原・箱根・湯河原」@auberge AU MIRADOR

取材は3月下旬。卒業旅行のグループや家族連れで箱根湯本駅周辺は賑わいを見せていました。麓はちょうど桜が咲き始めた頃でしたが、箱根の山を登るにつれて、雪が所々に残り、また梢についた雪があたかも桜のように見え、日本画のような風景を楽しみました。
「オーミラドーは部屋が狭い、テレビがない」などネットのレビューに書かれているようですが、勝又シェフは「うちは料理旅館ですから」とのスタンスで料理を提供しています。        
なお紙面ではふれられなかったのですが、朝食も絶品。温泉卵のキャビア乗せ、甲殻類のフランなどがいただけます。

記事内で紹介している場所

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