3 2023

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|合羽橋で調理道具探し|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

天野ひろゆきさんの「合羽橋」GOOD LIFE
合羽橋で調理道具探し

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2023年2月26日

おいしいって幸せなこと
料理って幸せがつきないんです

浅草と上野の中間に位置する合羽橋(かっぱばし)は、調理道具や食器などがプロユースから一般向けまで幅広くそろう問屋街。
芸能界きっての料理上手で知られる天野ひろゆきさんと合羽橋の老舗を訪れて調理道具や器を吟味。
料理を始めたきっかけやその魅力について聞きました。

NAVIGATOR

天野ひろゆき

あまの・ひろゆき1970年、愛知県生まれのお笑いタレント。1991年にお笑いコンビ「キャイ~ン」を結成し活動を開始。バラエティーやラジオ、ドラマへの出演など活躍の場を広げる。4月21~30日に関根勤が座長をつとめる「カンコンキンシアター34クドい!」に出演予定。

衣装協力:SMART CLOTHING STORE
撮影/吉澤健太 編集・文/澤村 恵 ヘアメーク/岩井マミ スタイリング/繁田美千穂
アートディレクション/本多康規(Cumu)

50歳からの料理のすすめ
相棒は使いやすい包丁とフライパン

ユーチューブで料理動画を配信したり、レシピ本をいくつも出版するなど料理好き、料理上手で知られる天野さん。料理を始めたのは16歳のとき。洋食屋さんでのアルバイトがきっかけだったとか。

「自立心が強かったみたいで、自分のお金であれこれしたくてバイトを始めたんだけど、最初はねホールスタッフだったんですよ。ただ僕、お客さんと話すのが好きで、ついでにこれはあんまりおいしくない、とか余計なこと言うもんだから(笑)。おまえは厨房だって言われて。そのお店はマスター、セカンド的な人、そして僕という感じだったので、早い段階から仕込みや料理のあれこれを教えてもらいました」

喫茶店と洋食屋が一緒になったようなその店は、朝から晩までフル回転で大忙し。

「そういうバタバタとせわしない雰囲気も好きでしたね。その店は和洋中なんでもある店で。だから下準備は本当に大変でした。毎日が実地訓練というか、やりながら覚えて少しずつ上達していく感じでしたね。2年間ほど働かせてもらいましたが、料理はもちろん、包丁の使い方やフライパンのあおり方など、基礎から覚えることができました。感謝しています」

特段、料理に興味があったわけではなかったという天野さんが料理を楽しいと思えるようになったのもアルバイトでのこんな経験からでした。

「調理にも慣れてきて、いつものごとくフライパンふるって作るじゃないですか。例えばピラフとしましょう。マスターが作ったものは1粒残らずお皿がきれいになって戻ってくるんだけど、僕のはちょっと残されていたりすることもあって。それがちょっと悔しかったのかな。もっとおいしいのを作りたい、残さず食べてもらいたいという気持ちが気付いたら楽しいに変わっていた感じです。以降一人暮らしをしてからも基本は自炊。食べたいものを作って食べていましたね。もっとおいしくできるかも。これの繰り返しで。好きだから続けられたんだろうな」

  • 「僕ねキッチンに立たない日はないかも。というのも料理するって歯磨きとかと同じなんですよ。自然に毎日の生活に組み込まれていることなんです。ちなみに冷蔵庫の中は携帯電話より見てます」(笑)

天野さんにとって料理ってどんなものですか?

「僕にとってはものすごく自然なことなんですよ。家に帰ってきて手を洗ってうがいをするとか、歯を磨くのと同じくらい。だから面倒くさいな、とか思ったことないんですよね。人に振る舞うのも好きで、芸能界最弱といわれる天野会ってのがあって、仲間にいろいろ作るんだけど、おいしい、おいしいって喜んでくれるのってやっぱりうれしいものです。おいしいって幸せなことですよね」

料理も生き方もシンプルに
一拍おける余裕を持ちたい

  • 「もちろんパンも好きで食べるんだけど、9対1ぐらいの割合で断然米派。本当、白米っておいしいですよね。だから料理を始めるならまずはおいしいごはんを炊こう。それが最高のごちそうだから」

新シニア世代の中には料理は妻頼り、なんて人も少なくない。50歳からの料理のすすめを掲げ、天野さんに何から始めたらいいのか聞いてみました。

「まずは米を炊こう。白米に勝るごちそうはないです。おいしいごはんが炊けたらそうだな、卵かけごはんなんてどうですか。簡単すぎると思ったでしょう?男性にありがちなのが、いきなりスパイスからカレー作ろうとしたりするけれど、あれはものすごく危険。いきなりうまくはできないし、スパイスが絶対余ってそのままになっちゃう。ぜひシンプルで簡単なものから始めてほしい。うまい卵かけごはんができたら次はおかず作ってみるか、とどんどん派生していくので。同じく調理道具
もプロユースではなく、取り扱いやすさで選ぶのがいいです」

料理歴36年の天野さんですが、食への飽くなき探究はまだまだ続きます。

「僕、本当に食べるのも作るのも好きなんです。それだけは変わらない。年齢を重ねてコレステロールとか、気になることは増えてきたけど、それでもこれからも好きなもの作って食べていたいですね。シンプルな願いです」

合羽橋にはすばらしい道具がたくさん
どの店も見ているだけでとても楽しい

釜浅商店
「包丁は三徳包丁とペティナイフがあればこと足りますよ」と天野さん。壁面に並ぶ包丁をじっくり吟味。

包丁売場でいくつか見せてもらう天野さん。「これはすごい切れ味良さそう。刺し身を引く専用の包丁だって。すーっと身を傷つけずに切れるんですね。しかし刃渡りが長い。やっぱり熟練の人が使うものだ。僕には怖くて」

ユニオン
「コーヒーにこだわりはないんだけど、こんなふうにミルでコーヒー豆をひくのもいいですね。キャンプにも良さそう」

器も大好きでお店や工房を見て回ります
こんな料理を盛り付けたいなと想像しながら


和の器 田窯
真剣な表情で器を吟味する天野さん。「直径20センチぐらいの平皿は汎用性があって便利。おかずを盛り付けてもいいし、パスタも映えそう」。伝統的な絵柄やモダンなデザインまで豊富。

  • 2階へ続く階段の壁面には茶わんがずらり。「白米好きとしてはお茶わんをチェックしておかないと。素朴な色みであじがある器が好きですね」

What's GOOD LIFE for you?
あした何するんだっけ?

  • 「やることがないのも困りものですが、切羽詰まっていると判断を間違えることもある。だから、一拍おける余裕という意味で、あした何するんだっけ? と言えるぐらいが僕にはちょうどよく心地いいです」

この記事は、2023年2月26日発行の日経REVIVE3月号に掲載された内容です。

取材裏話

3月号「合羽橋で調理道具探し」天野ひろゆきさん

上京後、安アパート暮らしでも食べるものにはこだわり、パイ包み焼きなど、住まいには釣り合わない料理も作っていたとか。先般さる有名なフレンチレストランでシェフに招かれ厨房に入ると、オール電化になっていました。なるほど、フランチには弱火でじっくりの料理が多いので合点がいきます。撮影で伺った釜浅商店の包丁売り場にはフレンチのシェフと思しき方々もいらっしゃり、外国人の店員さんとやり取りしていました。浅草が近いこともあり訪日客も多く、思いのほかインターナショナルな街でした。

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