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昭和天皇と植物編

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2022年01月30日

「雑草という名の植物はない」と語った昭和天皇

意外と知られていないことだが、昭和天皇は生物学者として世界的に高い評価を得ていた。研究の対象はヒドロゾアと粘菌。どちらも少し変わった生物だ。ヒドロゾアは主に海にすむ生物で、固着体(ポリプ)と、浮遊体(クラゲ)の2つの形態を世代交代する性質を持つ。粘菌は「菌」ではなく、移動する動物的性質と植物的性質を併せ持つ。どちらの生物も植物なのか動物なのか、単純に分類できない、不思議な特性を持っている。

昭和天皇は生物分類学をテーマとして、葉山御用邸の前の相模湾の豊富な生物を研究した。新種の発見も多く、100種類を優に超えるという。そして9編の専門論文執筆と20冊以上の生物学の書籍にも関わるなど、生物分類学に大きな足跡を残した。

昭和天皇は植物学者としての顔もお持ちだった。毎年のように静養した那須御用邸では、自生する植物を観察、分類し、「那須の植物」など3冊の著書を執筆された。「雑草という名の植物はない」という昭和天皇のお言葉は、「雑草」と言った侍従に向けておっしゃったといわれているが、名もなき生物に終生目を向けた、昭和天皇のお人柄が感じられる。

病床でも校正された
著書「皇居の植物」

昭和天皇は「皇居の植物」という著書も著されている。広大な面積を持つ皇居には多様な植物が自生しており、かつて吹上御苑は人の手が入った立派な庭園だったが、「いつもきれいに刈り込んだ庭園よりも、むしろ野草の生える庭がいい」という昭和天皇のご希望で、自然園に戻された。「皇居の植物」には1470種もの植物が記載されているが、刊行されたのは昭和天皇の崩御(昭和64年1月7日)の後、平成元年11月のことだった。昭和天皇はその病床でも「皇居の植物」の校正をされたという。現在の上皇陛下はハゼの研究、天皇陛下は水運史の研究、秋篠宮殿下はナマズや鶏の研究をするなど、昭和天皇以来の学者としての伝統は、今も受け継がれている。

標本を観察する昭和天皇。皇居には「生物学研究所」があり、昭和天皇はご公務の合間にここで研究に没頭された。

参考文献:「天皇家と生物学」(朝日新聞出版)、「皇居の植物」(保育社)

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