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コラム

この街の今、昔

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今こそ振り返りたい、あの頃のカマクラ
この街の今、昔

進化する東慶寺編

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2022年02月27日

不幸な妻たちを夫から守る寺だった

東慶寺は1285年の創建以来、女人救済の寺として明治に至るまで不幸な女性たちを救ってきた歴史を持つ。女性からは離婚できなかった封建時代に、「どうしても夫と別れたい」という妻が駆け込めば、離縁できる寺法(寺の法律)があった。たとえ駆け込む前に門前で夫に取り押さえられても、身につけたものを境内に投げ込めば、駆け込んだこととみなし、夫は即座に手を離さなければならなかった。離縁の理由のほとんどは、夫の不法だったという。

駆け込んだ妻は、ここで「足かけ3年24ヵ月」勤め上げれば、晴れて独身に戻って寺を出ることができた。寺を出る頃にはお歯黒(歯を黒く染めて既婚の印とした)もはげて歯も白くなり、見た目も独身女性になった。

縁切りの寺法を600年間引き継いできたが、1871年(明治4年)に廃仏毀釈の影響により縁切りの寺法は廃止に。その後1902年(明治35年)には尼寺としての歴史も幕を閉じることとなった。

かつては男子禁制の寺だったが、戦後には花の寺として多くの参拝客が訪れるように。時代とともにその在り方は変わっている。

大地も寺院も本来の姿へ
東慶寺が見つめる今と未来

約800年の歴史を誇る東慶寺だが、今もなお寺院のあるべき姿を考え、さまざまな働きかけをしている。

そのうちの一つに「大地の再生」がある。矢野智徳氏指導のもと、分断された水脈・地脈をつなぎ直し、その土地の自然と人間の共存を目指す環境再生施工だ。広大な境内地に手を入れ始め、現在の庭は、大地が息を吹き返したよ生き生きとし、あるべき自然の姿を見せ始めている。人間本位の「見せる為の庭」から、寺院や神社にあるべき気の整った境内地を目指している。

また、本来のお参りの姿を取り戻す為、拝観料も廃止。本堂内部は開放し、靴を脱いで静かに座ってご本尊を拝めるようにし、寺院がただの観光名所ではなく、心のよりどころとなるよう努めている。

東慶寺「大地の再生」

お参りの際は、手を合わせた後、四季折々の自然の変化に着目してみて欲しい。大地の再生は現在も継続中。大地の再生講座開催日には一般参加も可能だとか。ぜひその目で、その肌で体感してみては。

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