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フェルメールと世紀の贋作事件編
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2022年03月27日
メトロポリタン美術館には
5点ものフェルメール作が
メトロポリタン美術館の収蔵作品の特徴は、幅広いジャンルと時代をカバーしていることで、現在では洋の東西を問わず先史時代から現代まで、世界各地の考古遺物や美術品を150万点余りも収蔵している。
今回の展覧会はヨーロッパ絵画部門から65点が出展されているが、その中にフェルメールの「信仰の寓ぐう意い 」も含まれている。フェルメールは17世紀のオランダを代表する巨匠で、現存する作品点数が極めて少ないことでも知られている。現在フェルメール作とされているのはたったの三十数点といわれている。メトロポリタン美術館にはそのうち5点が収蔵されているが、フェルメールの絵画収蔵数としては世界で最も多い。
ナチスのゲーリングも
偽フェルメール作品を購入
ファン・メーヘレンはフェルメールと同じオランダの画家で、フェルメールの贋作者(偽物を描く画家)としてその名を歴史に残すことになった。メーヘレンが最初に手がけた偽フェルメールは、キリストを描いた「エマオの食事」と呼ばれる作品で、当時(1937年)54万ギルダー(日本円でおよそ3400万円)もの価格が付くほど、ある意味“傑作”であった。
メーヘレンが贋作者として知られたのは、ナチス協力者として法廷に立たされたことからだった。戦後間もない1945年、メーヘレンはフェルメール作品を、戦時中ナチス・ドイツの高官に売却したとして罪に問われた。その法廷で、売ったフェルメール作品は自分で描いたものだと告白。法廷でフェルメール風の作品を描いてみせるなど、自分が贋作者であることを証明した。偽物をつかまされたナチス高官の中には、国家元帥だったヘルマン・ゲーリングもいたことから、一転「ナチスを欺いた英雄」と評されることになった。
その裁判の中で、“傑作”「エマオの食事」も贋作であることが判明。作品を購入したボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館は、今もファン・メーヘレン作として、計4点の“フェルメール”をコレクションに加えている。
法廷でフェルメール風の作品を描いてみせるファン・メーヘレン。メーヘレンは判決の後、ほどなくして心臓発作でこの世を去った。58歳だった。
参考文献:「メトロポリタン美術館展 展覧会ホームページ」、「メトロポリタン美術館 公式ウェブサイト」、「ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館 公式ウェブサイト」