6 2023

アートに触れて心を整える時間を

|ギャラリー巡りのすすめ|

カバー特集

posted by 日経REVIVE

板垣李光人さんの「アート」GOOD LIFE
アートに触れて 心を整える時間を
|ギャラリー巡りのすすめ|

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2023年5月28日

時代も世代も関係なし!
一対一の感動があるアート

ギャラリーに足を運び、アートを鑑賞する。
時代も世代も関係なく、アートに触れる時間は心を豊かにするはずです。今月はアート好きでテート美術館展のアンバサダーを務める板垣李光人さんをゲストに迎え、ギャラリー巡りの魅力やZ世代から見た新シニア世代の印象を聞きました。

NAVIGATOR

板垣李光人

いたがき・りひと2002年生まれの俳優。10歳から俳優としての活動を始める。テレビドラマ、舞台、映画と幅広く活躍。NHK大河ドラマ「どうする家康」では、井伊直政役を熱演中。7月から始まるテート美術館展ではアンバサダー、音声ガイドを務める。

撮影/オノデラカズオ 編集・文/澤村 恵 ヘアメーク/KATO(TRON management)
スタイリング/伊藤省吾 アートディレクション/本多康規(Cumu)

ギャラリー巡りでマインドフルネス

イラストを描くのが趣味だという”アート肌”の板垣さんと、スパイラルガーデンで開催していた「OKETA COLLECTION: TIME MIXED〜 室町時代から現代、そして未来へ 〜」に出かけました。普段からアートとの関わりはありますか?

「絵画などはないですが、自宅には置物っていうんですかね。ちょっとしたものですが、実はけっこう集めていて日々、めでています。トイレ、キッチンの棚、テレビ台にも何個かあります。
渋めの土っぽい焼き物もあれば、かわいいテイストのものも。目にするたびに癒やされています。あと、時間があればギャラリーや美術館にふらりと出かけるのが好き。アートには普段から触れている方だと思います」

企画展や気になる展覧会があればチェックして足を運ぶという板垣さん。中でもお気に入りの場所は?。

「国立西洋美術館が好きなんです。建物もそうですけど、門が好きで。空間全体がとても心地いいんですよね。特に日が暮れて暗くなり始めた時間帯がいい雰囲気で、おすすめです」

  • 「ギャラリーで作品を鑑賞している時間は無になる時間。空っぽという意味ではなく、考えるのではなく、感じることを大切にしています。構えることなく、気負うことなくニュートラルの無です」

ギャラリーを訪れ、作品を鑑賞する時間は、板垣さんにとってどんな時間でしょうか?

「何かを考えながら見るとかではなくて、〝作品と僕〞というシンプルでフラットな空間であり時間ですかね。見方によっては〝無〞の時間ともいえるかもしれません。無とはいっても、作品と対峙したときに、何が生まれるのかというのは大事にしています。かといって、インプットするぞ、と気負うわけでもなく」

ニュートラルで軽やかな思考が垣間見える板垣さん。ギャラリー巡りの魅力って何でしょうか?

「絵画でもオブジェでもギャラリーに足を運ぶのはリアルを見たいからです。僕らが生まれるはるか昔の時代の作品とか、その時代の空気をまとって時空を超えて今、僕の目の前に存在している。それを感じたときの感動はやっぱりすごいです。それってリアルに作品と向き合わないと得られないものだと思います。それこそがギャラリー巡りの魅力なんじゃないでしょうか。アートの知識はなくてもいいと思うんです。あ、海の絵だ、花の絵だとかでも」

作品と僕。その間にある
“無”から生まれる“何か”を大事にしたい

  • 「今はオンラインで画集が公開されていたりして、気軽に作品に触れることができますが、リアルでしか得られない感動があるのです。ギャラリーに足を運ぶのは、この感動を味わいたいからです」

「絵を描くのが好きなのもあって、絵画を見るときは何の画材を使っているんだろう? なんて気になって見てしまうこともあります」と板垣さん。「OKETA COLLECTION: TIME MIXED」で気になった作品の前で。

休みができるとどのギャラリーに行こうかな、と考えるという板垣さん。出かけた先で気になった作品やアーティストに出合ったらすぐにスマホで検索。その俊敏さはZ世代ならでは。

追えないし、追わない
理想は抜け感のある50代

板垣さんに新シニア世代はどう映っていますか?

「お仕事でご一緒した先輩方が浮かびましたが、とにかく余裕があってカッコいいなと。なんていうんですかね、たたずまいからして余裕があって。でもどこか抜け感もあったりしておちゃめな一面もあるんです」

新シニア世代がカッコよく映っていることに安堵しつつ、Z世代が見つめるこの先の未来について聞いてみました。21歳の板垣さんはこれからの人生をどう考えているのでしょうか?

「生きていればいい、かなと。僕自身が続かないタイプっていうのもあるのですが、何かに向かって、目標を! みたいなのが全くないんです。何かをやるタイミングっていつか絶対に来るからそれを待っているという感じですかね。
だから何かを追うこともできないし、追わないって感じ。僕にとって必要なものはそこにあるだろうし、人生の歩みを進めていく中で見つけられると思っているので」

気負わず、飾らず、ニュートラルに未来を見つめている板垣さん。その姿はまさにギャラリーでの〝作品と僕〞の距離感に通ずるものがあります。そんなZ世代の感覚は、新シニア世代にとって目からうろこの部分も多いのではないでしょうか。

最後に、板垣さんが感じるテート美術館展の見どころ、魅力を伺いました。

「テート美術館展のテーマは『光』。
光って電気や星空など物理的なものもあれば、目に見えないものも含まれますよね。さらに光の感じ方って本当に人それぞれ。人の数だけ光は存在していると思うんです。そんな抽象的な光を可視化しているのが今回の展覧会。テーマの設定が面白いですよね。どんな作品が並び空間をつくり上げていくのか僕も楽しみにしています」

What's GOOD LIFE for you?
この身一つで生きていく

  • 「年齢を重ねていく中で物理的にも精神的にもいろいろ手放して身軽な状態でありたいですね。荷物が重いと疲れちゃうので。身軽でいられれば先輩方のような余裕が出てカッコよくなれるのかな」

RECOMMENDED EXHIBITION

  • テート美術館展 光
    ─ターナー、印象派から現代へ

    光をテーマに絵画、写真、立体作品など
    約120点を展示

英国を代表するテート美術館が持つ、膨大なコレクションから光をテーマに、18世紀末から現代までのおよそ200年間に創作された作品を厳選。中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを経て日本で開催される世界巡回展。ラファエル前派のジョン・エヴァレット・ミレイや抽象主義の代表的な画家、マーク・ロスコなど、日本会場のみに展示される作品も。

ジョン・ブレット 《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》 1871年 Photo:Tate


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この記事は、2023年5月28日発行の日経REVIVE6月号に掲載された内容です。

取材裏話

6月号「アート」板垣李光人さん

取材当日は雨模様でしたが、板垣さんの魅力あふれる雰囲気の良い取材になりました。
取材場所となったスパイラルガーデンは、レストランや美術鑑賞で利用された方もいらっしゃるのでは?実は、地方でもアート鑑賞を楽しめるようにと屋外のアートイベントを企画・運営していることはご存じでしょうか。
2023年4月14日(金)〜 2024年2月29日(木)で開催中のあたらしい芸術祭「道後アート2023」。2023年7月からは、「クラフト」をテーマに道後温泉地区の旅館やホテルのロビー空間と商店街の店舗などの一角を開催地とするクラフトミュージアムも始まります。
お近くの方も、普段できない体験をしてみたいという方も、少し足を延ばしてあたらしい芸術祭を体験してみられてはいかがでしょうか。
イベント詳細:https://dogoonsenart.com/